表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
207/317

第66話 運廻扇 中編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

 ある晴れた日の朝、ベッドに寝ていた寝巻き姿の少女はゆっくりと目を開けると、起こした体をグーっと上に伸ばした。


「んっ……朝かぁ、今日こそ良い事があってほしいって思うけど、どうなるかなぁ……」


 少女は浮かない表情をしていたが、ふと何かを思い出したようにポンと両手を打ち鳴らすと、ベッドから出て勉強机へと近づいた。

机の上には参考書やノート、筆記用具などが置かれていたが、少女は端っこに置かれていた金色の小型の扇風機を手に取った。


「そうだ……私にはこれがあるんだった。これは『運廻扇』という名前で、スイッチを入れてからこれを誰かに向けると、その人にまとわりついた悪運を吹き飛ばして、その代わりに良い運を引き寄せてくれるって言ってたよね。

どこまで効果があるかとか私にそもそも効果があるかはわからないけど、とりあえず試すだけ試してみよう。えっと、スイッチは……あ、あった」


 少女が後ろのスイッチを入れると、『運廻扇』の羽は静かに回りだし、少女はその様子をボーッと眺めていたが、ふと自分の体に目をやると、驚いた様子で声を上げた。


「えっ……こ、このまとわりついてる黒いモヤモヤみたいなのってなに……? もしかして、これが悪運……?」


 体にまとわりつく悪運に恐怖を感じた後、少女は喉をゴクリと鳴らしてから『運廻扇』を自分へ向けた。すると、『運廻扇』から送られる風は次々と少女の悪運を吹き飛ばしていき、吹き飛ばされた悪運は静かに消えていった。


「……これで良いんだよね? でも、あんなのがまとわりついてたらたしかに嫌な事ばかり起こってもしょうがない気がする……」


 まとわりついていた悪運を思い出して少女が体を震わせていたその時、部屋のドアがノックされると、ドアを開けて母親が中へと入ってくる。


「あら、おはよう。なんだか顔色がいつもより良いようだけど、昨日はよく眠れたの?」

「え、いつも通りだったけど……そんなに顔色がよく見えるの?」

「ええ。ここ最近、顔色も少し青白かったような気がするし、ちょっと元気もなかったように見えてたから心配してたのよ」

「お母さん……」

「まあ、その様子なら大丈夫みたいね。それじゃあ朝ごはんはもう出来てるから、そろそろ起きてきなさいね」

「あ、うん」


 少女の返事を聞いて母親が部屋から出ていくと、少女は手に持った『運廻扇』を見ながら嬉しそうに微笑んだ。


「……早速効果は出てるみたい。もしかしたらここから色々な良い事が起きるかもしれないし、それを楽しみにしてみようかな。よし……それじゃあまずは朝ごはんを食べに行こうっと」


 弾んだ声で独り言ち、『運廻扇』を再び勉強机へと置いた後、少女は軽くなった足取りで歩き始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ