第65話 ハートシェイカー 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
空が徐々にオレンジ色に染まりだし、サラリーマンや学生達が帰宅するために街を歩く姿がチラホラ見え始めた頃、『繋ぎ手』は助手の兄妹と歩きながら体を上にグーっと伸ばした。
「んー、今日もたっくさん勉強したなぁ。お兄さん、今日の晩御飯はなに?」
「まだ考え中だ。だから、何かリクエストがあれば、買い物が終わるまでに言ってくれ。準備までに時間が多くかかる物じゃなかったら、リクエストに応えられるだろうからさ」
「はーい」
「うん、わかった」
『繋ぎ手』と助手の妹が返事をし、助手の兄が微笑みながら頷いていたその時、前方から歩いてくる人物の姿を見て、『繋ぎ手』は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「あ、あの人達は……!」
「ん……あの家族、知り合いか?」
「うん、お兄ちゃんが出掛けてた時に『幸呼笛』の子が訪ねてきて、その後に『ハートシェイカー』の力でなんとか家族が元通りになったって話をしたでしょ? その時の人達だよ」
「ああ、なるほどな」
助手の兄が納得顔で頷く中、歩いてきていた少女は三人の姿に気付くと、嬉しそうに手を振りながら近づき、両親もそれに続いて近づいてくる。
「お姉ちゃん達、こんばんは。えっと、隣にいるのは……」
「初めまして。俺は『繋ぎ手』の助手の一人でこの子の兄貴だ。店に来た時にはちょっと用事があっていなかったけどな」
「なるほど。彼女達には本当にお世話になったよ。この出会いがなかったら、今頃は家族がバラバラになって、こうして一緒に出掛ける事すら出来てなかったと思うからね」
「そうね……でも、もうあんな事は繰り返さないわ。宝くじで当たったお金は家族のために使って、この子との時間をしっかりと作るつもりだもの」
「ふふ、それが良いと思います。それじゃあ私達は晩御飯の買い物があるのでそろそろ失礼しますね」
その言葉に家族が頷き、一言ずつ挨拶を口にしてから仲良く去っていくと、苑姿を見ながら助手の兄はポツリと呟く。
「……注意点がない道具でも所有者が辛い思いをする事もあるんだな」
「うん、そうだね。どんな道具と縁があったとしても結局はその人が道具とどう関わるかだから。関わり方一つで良くも悪くもなるんだよ」
「関わり方一つ、かぁ……私も『アルケミーボトル』とはずっと仲良くしたいし、これからも無理を言わないようにしたりちゃんと洗ってあげたりしようかな」
「うん、それが良いよ」
『繋ぎ手』が微笑みながら言っていた時、助手の兄は表情を暗くしており、それを見た助手の妹は不思議そうに首を傾げる。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
「……いや、なんでもない。ほら、早く買い物済ませて帰るぞ。あまり遅くなると、オーナーも心配するからな」
「そうだね。それじゃあ行こうか、二人とも」
「ああ」
「うん!」
兄妹が返事をし、『繋ぎ手』と助手の妹が手を繋ぎながら歩く中、助手の兄はその様子に微笑んでから、再び表情を暗くした。
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それでは、また次回。




