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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第64話 幸呼笛 前編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「ふぅ……今日も学校疲れたなぁ」


 空がオレンジ色に染まった夕方頃、一人の少女が通学路をゆっくり歩いていた。


「でも、通えるだけありがたいし、私も毎日勉強頑張らないと。ウチは他の家よりお金もないし、私が勉強を頑張って、大人になってお父さんとお母さんにもっと良い生活をさせてあげるんだ。そのためにも今日も家に帰ったら予習復習をしないと……」


 少女が覚悟を決めたような表情で呟いていたその時だった。


「ねえ、そこの君。ちょっと良いかな?」

「え……?」


 突然背後から聞こえてきた声に立ち止まり、少女がゆっくりと振り返ると、そこにはにこにこと笑うセーラー服姿の少女と紫色のパーカーに若草色のスカート姿の少女が立っていた。


「えっと……お姉ちゃん達は……?」

「私は道具と人間の橋渡し役で、この子はその助手ちゃんだよ。ところで、なんだか真剣な様子だったけど、何かあったの?」

「あ、うん……私のお家、他の家よりもあまりお金がないから、私がもっと勉強して大人になったらお父さんとお母さんに良い生活をさせてあげたいの。だから、もっと勉強を頑張らないとなって……」

「そうだったんだ。すごく良い事だよね、お姉ちゃん」

「うん、そうだね。だから、そんな貴女に手を貸したいっていう子がいるみたいだけど……妹ちゃん、出してあげてくれるかな?」

「うん、お姉ちゃん」


『繋ぎ手』がバッグを降ろした後、助手の少女はバッグの中に手を入れ、中から数個のダイヤモンドがはめられた一本の青い横笛を取り出した。


「それは……笛?」

「そう。この子は『幸呼笛(こうこてき)』っていう名前で、この子を吹く事で吹いた人の目の前に青い鳥が現れるの。その青い鳥にこういう物が欲しいとかこういう人に会いたいって言うと、そこまで連れていってくれるんだ」

「青い鳥……そういえば、外国の作家さんの話の中にそんな感じのがあったような……」

「あるね。あれは結局、自分達の幸せはすぐ近くにあって、心の持ちようなんだよっていう話だったけど、この子の場合は実際に青い鳥が幸せに導いてくれる感じかな。という事で、そんながんばり屋な貴女にこれをプレゼントします。大切にしてあげてね」

「え……でも、良いの? そんなにすごい物ならお金が必要なんじゃ……」

「大丈夫。この子は店頭に並べられなかったり試作品だから渡しても良いって御師匠様に言われたりしてる子だから、遠慮なく貰っちゃってよ」

「そういう事なら……えっと、ありがとうございます」

「どういたしまして」


 少女に対して『繋ぎ手』が微笑むと、助手の少女は『繋ぎ手』を見ながら首を傾げた。


「ところで、この子には何か注意点ってあるの?」

「これといってはないかな。でも、個人的に注意というか忘れないでほしいのは、その青い鳥のお話の事かな」

「さっきのお話……だよね?」

「そう。幸せは身近なところにあるって事。それは忘れないようにしてね?」

「……うん、もちろん。私もなんだか忘れちゃいけないって思えるから」

「うん。それじゃあ私達はそろそろ帰るよ。その子の事、大切にしてあげてね」

「うん。お姉ちゃん達も気をつけて帰ってね」

「ありがとう。それじゃあまたね」


 そして『繋ぎ手』達が去っていくと、少女は手の中にある『幸呼笛』に視線を向けた。


「青い鳥を呼べる笛……今はこれといって欲しい物も会いたい人もいないけど、その時が来たらお世話になろうかな。『幸呼笛』さん、これからよろしくね」


 そう言いながら少女が『幸呼笛』を撫でると、『幸呼笛』は夕日を反射してキラリと輝いた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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