第63話 ヒーリングスタチュー 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……あ、あれ……?」
目を瞑っていた男性が目を開けると、そこは大きな花畑の真ん中だった。その花畑には何種類もの花が一面に咲いており、少し離れたところには大きな木のある草原や澄みきった水の流れる小川などがあった。
「ここ……どこだ? たしか俺は、仕事の疲れを引きずったまま家に帰ってきて、夕飯と風呂を済ませてそのまま寝たはず──」
「……こちらにいらっしゃったんですね」
「え……?」
突然聞こえてきた澄んだ鈴の音のような声に驚きながら顔を向けると、そこには白いワンピースのような服装の長いブロンドヘアの女性が立っており、どこか安心したように微笑む女性の背からは純白の翼が生えていた。
「貴女は……って、もしかして天使……!?」
「その通りです。ここは『ヒーリングスタチュー』の力によってお連れした特殊な空間。私はこの空間で貴方に癒しを与えるために生まれた存在なのです」
「……あ、そういえば帰る途中にそんなのを貰ったんだったな。たしか『ヒーリングスタチュー』を部屋に置いておくと、夢の中に天使が現れて、その人の心身の傷や疲れを癒してくれるって……」
「はい。なので、私が貴方の前に現れたのです。お仕事で疲れを感じている貴方を癒し、明日からもまた頑張る事が出来るように」
天使がふわりと微笑むと、男性はその微笑みや細身の体、天使の纏う安心感を感じさせる程の雰囲気に思わずボーッとしてしまったが、すぐにハッとし、首を横に振って気持ちを切り替える。
「いかんいかん……えっと、それで癒すって具体的には何をしてくれるんですか?」
「そうですね……貴方が目覚めたいと思うまでこうしてお話をしたり抱き締めて差し上げたり、後は膝枕や歌を歌って差し上げたり、と色々な方法で貴方の心身を癒すのが私の使命といったところでしょうか。もっとも、この体を貴方に好き勝手に使って頂くというのは出来ませんけどね」
「好き勝手に……ああ、そういう事ですか。流石にそれは考えてないので大丈夫です。たしかに天使というだけあって、貴女は綺麗ですから、そういう事が出来たら幸せだろうなとは思いますけど、この夢の中でそういう事をしても虚しいだけですしね」
「ふふ……貴方はお優しくて誠実な方なのですね。因みに、ここが必要ないと感じる日がありましたら、眠る前に『ヒーリングスタチュー』にそう言って頂けたら普通に眠る事が出来ますので、その時にはそうしてくださいね」
「わかりました。あの……これからよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
天使が恭しく一礼をし、男性はその所作の綺麗さに見惚れていたが、すぐに自分も頭を下げ返すと、天使と共に花畑に座り込みながら楽しそうに話を始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




