第62話 レインボーキャンディー 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
よく晴れた日の朝、少女は朝日を浴びて目を覚ますと、ゆっくりと目を開けてから少し憂鬱そうにため息をつく。
「はあ……朝か。とりあえず早く学校に行く準備しないと……」
独り言ちる少女の表情は暗かったが、ふと勉強机に目を向けると、その上に置かれた様々な色の飴が入ったガラスの瓶が視界に入り、少女の表情は少々明るくなった。
「……そうだ、私には新しい助っ人がいるんだ。たしか名前は『レインボーキャンディー』で、なめる事でその色に応じた感情を一日だけ好きなように昂らせる事が出来るんだったよね。
一応、『レインボーキャンディー』と一緒に貰った味と感情の対応表は寝る前に読んだけど、最初から全部の味を一度にっていうのは怖いし、今日のところは基本的な喜怒哀楽くらいにしておこう」
そう言うと、少女はベッドから出て机へと近づき、瓶の蓋を静かに開けてから黄色と赤色、青色と橙色の四色の飴を取り出し、それぞれを口に含んでコロコロと口の中で転がした。
「……うん、美味しい。それぞれが主張しあうんじゃなく、なんだかお互いに引き立てあってる感じがして、こうしてなめてるだけでもほっとする感じがする。
それにしても、橙色のオレンジ味はわかるけど、青色は青リンゴ味なんだなぁ。まあ、青い食べ物って聞いてもピンと来るのはあまり無いし、美味しいから気にしないでおこう」
そして飴をなめ終えると、少女の体は黄色と赤色、青色と橙色の光をそれぞれまとい、それが消えると同時に部屋のドアが軽くノックされた。
「もう朝だけど、起きてるの?」
「お母さんだ。うん、起きてるよ」
「それなら良かったわ。今日の朝ごはんはあなたの好きな物ばかりだから、早くリビングに来なさいね」
「えっ、ほんと!? わーい、すぐ行くね!」
心の底から沸き上がってきた喜びの感情に少女が驚いていると、ドアの向こうにいる母親も驚いた様子を見せていたが、すぐにクスクスと笑い始めた。
「そこまで喜んでもらえるとは思ってなかったわ。とにかく早く来なさいよ? もたもたしてると、学校に遅れちゃうわ」
「うん、わかった」
少女が返事をして、母親がドアから離れていくと、少女は驚きながら自分の体を見ていたが、次第にその表情は嬉しそうな物へと変わった。
「す、すごい……! 本当に喜びの感情がスッと出てきた! 今は試せないけど、これなら残りの三つもいつも以上に出していけるはず。よし……今日の部活動で色々試してみよう!」
少女は満面の笑みで言うと、とても楽しそうな様子でドアへと近づき、ドアノブを捻ってゆっくりドアを開けた後、晴れ晴れとした気持ちのままでリビングへと向かった。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




