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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第6話 招きウサギ 後編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「あははっ……本当に気持ちが良いなぁ……」


 星が瞬く夜空に青白い月が浮かぶある夜、メガネをかけた少年は自室で携帯電話の画面を見ながらニヤニヤと笑っていた。画面には少年が様々な少女と共に写った写真が表示されており、少年を見る少女達の顔はうっとりとしていた。


「この前まで彼女が出来ないなんて悩んでたのに、僕にメロメロな女の子がこんなに出来ちゃうなんてね。まあ、最初に声をかけてきた子とは一応付き合ってるけど、最近あの子と会うのは飽きてきたんだよなぁ……」


 そう言う少年の顔はどこか退屈そうであり、少年の心がその少女から離れているのは明らかだった。そして、携帯電話に保存されている写真をボーッと眺めていたその時、少年は何かを思い出したように声をあげた。


「そうだ……あの子はどうだろう。僕に『招きウサギ』をくれて、色々な話をしてくれたあの子。あれから会った事は無いし、連絡先も聞きそびれたけど、初対面の僕に『招きウサギ』をくれたり笑顔で話をしてくれたりしたのはきっと僕に好意があるからに違いない。

 そうじゃなかったら、あんな風に僕を見てこないだろうし、今思えば少し頬も赤かったような気がする。なんだ……そうなら早く言ってくれれば良かったのになぁ」


 先程まで退屈そうだった少年の顔はイヤらしさを感じさせる笑みへと変わると、少年は携帯電話を操作し始めた。そして数分後、携帯電話の操作を終えると、画面を見る事なくそのままベッドの上へと放り投げる。


「よし……別れ話おーわり。僕の時間が無駄になるし、あんな退屈な子とは別れるのが正解だよ。さーて、明日からあの子の事を探しに──」


 そう言いながら少年がふと『招きウサギ』に視線を向けたその時、少年は不思議そうに首を傾げる。


「……あれ? あのウサギ、あんなに“赤かった”かな……?」


 少年の視線の先にある『招きウサギ』は赤く染まっており、その光景に少年が疑問を感じていた次の瞬間、『招きウサギ』の目は赤く光り、それと同時に床には徐々に水が溜まり始めた。


「み、水……!? で、でも洪水とかならそもそもニュースになったりお母さん達が報せに来たりするはずだし……!」


 突然の出来事に少年が戸惑う内に水位はゆっくりと増えていき、慌てて少年はベッドの上に上がった。そして、ベッドの半分くらいまで水位が上がったその時、少年はいつの間にか水中に現れたモノの姿に思わず小さく悲鳴を上げた。


「ひっ……あ、あれはサメじゃないか! ま、まさか……彼女と別れて『招きウサギ』を怒らせたから……!?」


 少年は慌てて『招きウサギ』に視線を向けたが、そこには既に『招きウサギ』はなく、その事に少年が絶望していると、水中を泳いでいたサメ達は突然少年へ向かって泳ぎ始めた。


「く、来るな……来ないでくれぇ!」


 少年の顔が恐怖の色に染まる中、サメ達は一斉に飛び上がると、そのまま少年へと襲いかかった。そして、少年の悲鳴が辺りに響き渡る中、近くから少年の家を見上げていた橋渡し役の少女は哀しそうな表情で手の中にある『招きウサギ』を撫でた。


「……彼はダメだったみたいだね。この子は恋人を裏切る人に自分がサメに襲われる幻覚を見せる。もちろん、幻覚だから体は傷つかないし、襲われた後は幻覚は全て消えるけど、ついてしまった心の傷は中々消えないだろうし、誰にうつつを抜かしたかはわからないけど、恋人だった子に酷い仕打ちをした事で周囲からの評価もがた落ち。彼のこの先の人生はあまり良い物にはならないかもしれないね」


 少年の悲鳴によって家の中で騒ぎが起きる中、橋渡し役の少女は少年の家から視線を外すと、『招きウサギ』を手にしたまま暗い夜道を静かに歩いていった。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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