幕間
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
現世から隔絶された空間に建つ世にも不思議な道具を扱う道具店、『不可思議道具店』。その店内で二人の人物が持ち込んだ『ジーニアスミサンガ』を『繋ぎ手』や助手の兄妹が見守る中で『創り手』が静かに見つめていた。
「……なるほど、このミサンガの名前と力、注意点がわかったわ」
「流石ですね、『創り手』さん。それで、どういう道具だったんですか?」
「これは『ジーニアスミサンガ』という名前みたいで、簡単に説明するなら装着者の悩みや解決したい出来事の解決策やそれのヒントを教えてくれるけど、つけた状態で誰かを傷つけようとすると、つけていた箇所によって異なった罰を受けるようね。
利き手の手首なら首に巻き付いて絞め殺されて、反対の手首なら胸部に巻き付いて肋骨なんかを折られる。利き足の足首なら頭に巻き付いて頭蓋骨を折られながら脳が損傷して、反対の足首なら腰に巻き付いて腰骨を折られる、といった感じにね」
「巻き付いてたのはあの人の頭だったから、つけてたのは利き足の足首だったわけですね」
「そういう事になるね。それで、その男の子はどうなったの?」
『繋ぎ手』からの問いかけに少年は哀しそうに首を横に振る。
「……残念だけどな。一応、すぐに救急車で運ばれたけど、病院に着いた時にはもう……」
「そうか……」
「その人、よほどお兄さんに勝ちたかったんだね。高められた悪意と邪念に心を支配されてでも」
「そういう事になるな……まったく、本当にバカな事をしたよ、アイツは。家族や友達だけじゃなく、クラスメートや部活の仲間、アイツを好きだった奴まで泣かせたんだからな。向こうでもだいぶバカだと思えた奴はいたけど、今回のアイツも相当だったよ」
「向こう……そういえば、ウチに来た時に『繋ぎ手』が説明してくれたけど、神様に異世界に送られて勇者として活躍してたんだったか」
助手の兄の言葉に少年は頷きながら答える。
「ああ。突然の事だったから、なにがなんだかって感じで、俺を助けてくれた奴がいなかったら、今頃俺はここにはいなくてコイツだけじゃなく家族やこっちにいる友達も不安にさせ続けていた。実際、俺がいない間はずっと心配してくれてたようだし、俺があっちで出来た仲間達とこっちに戻ってきた時には泣かせちゃってたしな」
「先輩にはもう会えないんじゃないかって思ってましたからね。だから、今もこうして一緒にいられるのは本当に幸せです。先輩と一緒に冒険したり戦ったりしていた人達とも仲良くなれて、向こうでのカッコいいところも教えてもらえましたしね」
「なるほどな……」
「彼と向こうで出来た仲間、和解した魔王達の協力であちらとこちらを行き来する方法も出来て、『トラベルトレイン』のお兄さんの時にも話題にしてた向こうから来た人達の集会所も出来たわけだし、彼の功績は大したものだよ。
ところで、この『ジーニアスミサンガ』は預かってて良いかな? 流石に頼ろうとはしてないだろうけど、もし傍に置いておきたいならそれでも良いよ」
『繋ぎ手』からの問いかけに少年は首を横に振る。
「いや、ここにあった方が良いと思う。たしかに頼る気はないけど、俺が持ってる事で誰かが興味を持ってしまうよりはずっと良いからな」
「わかった。それじゃあ預かっておくわ。わざわざ来てくれてありがとうね」
「いえ、最近来れてなかったので理由はどうであれ久しぶりに顔を見られて良かったです。それじゃあ俺達はこれで失礼します」
「ああ、またな」
「お兄さん、お姉さん、またね」
「うん、またね」
少年達が入り口を開けて店を出ていった後、『繋ぎ手』は『ジーニアスミサンガ』を持ちながら眉を潜めた。
「今回のもだいぶ危ない道具だね……御師匠様が創る道具の中にもたしかに注意点を無視したら命を奪ったりそれぐらいの出来事に遭う物もあるけど、私の能力の具現体が配ってる道具は恐らくどれも注意点を無視したら持ち主に危害を加える物なんだと思う」
「たしかにウチの道具は注意点がない奴もあるからな。でも、『繋ぎ手』の偽物が道具を配ってる理由って何なんだ……?」
「それはわからないわ。でも、あなた達の場合はその子達に会ったら危害を加えられる可能性が高い。十分に気をつけてね」
『創り手』の言葉に三人が頷いた後、それぞれ別の行動をし始めたが、助手の兄だけは『繋ぎ手』の手の中にある『ジーニアスミサンガ』をジッと見つめていた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




