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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第60話 ジーニアスミサンガ 後編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

 ある日の放課後、オレンジ色に染まった空に太陽が浮かび、その光に照らされながら一人の女子生徒が裏庭で人を待っていた。

その様子を木陰から少年が見ていたが、その目はどこか狂気を孕んでおり、手には小型のナイフが握られていた。


「……いた。そうだよ、アイツの彼女さえいなければ、アイツは何も手につかなくなって相対的に俺の成績が上がる。こんなの『ジーニアスミサンガ』がなくてもわかる話じゃないか……!」


 少年の声はどこか興奮気味であり、明らかに正気ではないのがハッキリと見てとれる程だった。そして、それに女子生徒が気づかない中、少年はナイフを手にしながらゆっくりと近づき、あと数歩というところでニタァと笑いながらナイフを振り上げたその時だった。


「そこまでだ」


 突然背後から伸びた手が少年の手首を掴み、それに驚いた少年が振り向くと、そこには一人の男子生徒の姿があった。

その表情はとても冷静だったが、目にはたしかな怒りが宿り、少年の手首を掴むゴツゴツとした手はそれを砕かんとする程に力が加わっていた。


「ぐっ……お、お前……ど、どうしてここに……!?」

「彼女と待ち合わせてるんだから当然だろ。怪我とかはしてないか?」

「はい、大丈夫ですよ、先輩。ゆっくりと近づいてきてるなとは思ったんですが、先輩が来てくれるって信じてたので怖くなかったです」

「ははっ、そうか。まあ、コイツの足止めのせいで少し時間はくったけど、この程度の足止めじゃ俺には通用しない。それより、どうしてこんな事をしてるんだ? こんな事をしたって意味はないだろ」

「意味だと……? あるに決まってるだろ! お前の彼女さえいなければ、俺はお前よりも良い成績を取れるんだ!」

「私さえいなければって……」

「そんなわけないだろ。たしかに彼女を喪ったらとても辛いししばらく悲しむと思うけど、そのままでいる事を望んでるとは思わないから、すぐにまた立ち上がってみせる」

「そうですよ、私の先輩を甘く見ないで下さい!」

「うるさい……うるさいうるさい! お前達さえいなければ……お前達さえいなければ──」


 その時、少年の利き足がうっすらと赤い光を放つと、つけていた『ジーニアスミサンガ』は外れ、ゆっくりと長くなりながらそのまま少年の頭へと巻き付いた。


「なっ……!?」

「ミサンガ……?」

「このミサンガ……まさか、あの店の道具か? いや、なんとなく気配が違う……おい、このミサンガをどこで手に入れたんだ?」

「そんな事、なんで答え──」


 少年が男子生徒に対しての嫌悪を示していた時、頭に巻き付いた『ジーニアスミサンガ』はゆっくりと少年の頭を締め付けていき、少年の頭はミシミシという音を立て始めた。


「がっ……ぐうぅ……!? あ、頭がっ……!!」

「せ、先輩……これって……!?」

「……たぶん、道具の注意点を無視してしまったんだ。とりあえずどうにか外さないと……」


 男子生徒は『ジーニアスミサンガ』を外そうとしたが、それよりも先に少年の頭からバキッという音が聞こえると、少年は白目を向きながら泡を吹いて膝をつき、『ジーニアスミサンガ』が外れると同時にそのまま俯せで倒れこんだ。


「……遅かったか」

「先輩……この人、もしかして……」

「……たぶん、まだ息はあるはずだ。とりあえずこのミサンガについては後で知り合いに聞く事にして、今は先生を呼んでこよう」

「わ、わかりました!」


 女子生徒が急いで職員室に向かう中、男子生徒は『ジーニアスミサンガ』を拾い上げると、倒れている少年を見下ろした。


「……人を傷つけようとして自分が傷つく事になったか。まったく……バカな事をしやがって……」


 呟く男子生徒の顔はとても哀しそうであり、女子生徒が教師達を連れてくるまでの間、男子生徒は少年を見つめ続けていた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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