第60話 ジーニアスミサンガ 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
よく晴れ空に雲一つない昼頃、授業を受けていた少年は教室に響く単調なチョークの音と黒板や教科書に並ぶ文字の羅列に眠気を感じていた。
「ふあ……やっぱり授業中って眠くなるな。早く部活で身体を動かしたいな……」
そんな事を考えていた時、教師は黒板に書かれた問題を指しながら一人の生徒を当てた。その生徒はゆっくりと立ち上がってから黒板の前に立つと、手に持ったチョークで迷う事なく解答を書き、それを見た教師は満足そうに頷く。
「正解だ。お前、行方不明になる前と今とでだいぶ変わったな。何か心境の変化でもあったのか?」
「あはは、そんなところです。いなかった分の遅れは取り戻さないといけなかったし、不思議と色々な事に精力的に取り組みたいって考えられるようになったので、彼女や新しく出来た友達と一緒に頑張る事に決めたんですよ」
「うん、良い事だな。それじゃあ席に戻って良いぞ」
「はい」
生徒は微笑みながら答えると、そのまま席へと戻っていき、教師が再び話し始める中で少年はその生徒に視線を向けた。
「……アイツ、先生が言うように行方不明になる前から考えたら本当に変わったな。前は勉強なんてあまり得意じゃなくて、授業中もうとうとしたり早く終わらないかってそわそわしたりしてたのに、今じゃ真面目にノートも取って成績だってクラスでトップになった。
でも、今日からは俺だって変わるんだ。昨日貰った『ジーニアスミサンガ』の力を使って……」
そう言うと、少年は利き足の足首につけられた『ジーニアスミサンガ』に視線を向ける。
「話によると、この『ジーニアスミサンガ』をつけている状態で何か思い付きたい事や解決したい事を思い浮かべたらその解決策やヒントを教えてくれるらしいし、俺だって『ジーニアスミサンガ』の力で成績をトップクラスにまで上げられるはずだ」
『ジーニアスミサンガ』を見ながら呟いていた時、教師から当てられ、少年は返事をしてから黒板の前に立った。しかし、目の前の問題は少年には少し難しく、少年は一瞬怯んだ後に問題を見ながら解答が浮かぶように願った。
すると、少年の頭の中に落ち着いた男性の声が響き、少年は驚きながらもその声に従って黒板に解答を書くと、教師は再び満足そうに頷いた。
「正解だ。少し難しい問題だったんだが……よく勉強してるみたいだな」
「あ……はい、一応は……」
「良い事だ。よし、席に戻って良いぞ」
「はい」
返事をしてから少年が席に着くと、クラスメート達は少し驚いた様子で少年に視線を向けていたが、その視線を浴びながら少年はどこか真剣な表情を浮かべていた。
「……まだだ。これだけじゃ俺はアイツ以上にはなれない。もっと、もっと上を目指さないと……!」
少年が目に妖しい輝きを宿しながら呟く中、一人の生徒がその姿を心配そうに見つめていた。
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それでは、また次回。




