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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第59話 サイバーファミリー 中編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「は、はは……は、早く部屋に戻ってこれを試してみないと……」



 帰宅後、男性が大事そうに持っていた『サイバーファミリー』を見ながら独り言ちていた時、リビングから一人の少女が出てくると、少女は男性を一瞥してから顔をしかめた。


「うわ……帰ってきてた」

「な、なんだよ……帰ってきてわ、悪いかよ……」

「またそんな気持ち悪い喋り方してるし……見た目も喋り方も最悪、最近は小さい女の子にも声をかけてるって聞くし、こんなのが私の兄なんて最悪すぎ。少しはスポーツやってみたり見た目をサッパリさせてみたりすればいいのに」

「う、うるさいな……と、とりあえず部屋に戻ってお前達とは会わないようにするから、それでも、問題はないだろ」

「……そんなの当然でしょ。今だって早くいなくなってほしいって思ってるんだから」

「わ、わかったよ……いなくなれば良いんだろ、いなくなれば……!」


 男性が『サイバーファミリー』を抱えながら足早に去っていくと、少女はその姿をどこか哀しそうに見つめ、ため息をついてからリビングへと戻った。

そして男性は、自室に入って鍵をかけると、待ちきれない様子で『サイバーファミリー』を頭に装着した。


「こ、これでいい……この『サイバーファミリー』を被れば仮想現実の中で俺にとって理想の家族が作れるって言ってたし、あんな現実なんかよりもずっと良い家族と暮らしてやるんだ……!」


 男性が呟いていると、『サイバーファミリー』は仄かに白い光を放ち、それと同時に男性の視界も白い光に包まれた。そして光が消えると、現在いる部屋と同じような部屋が見え、男性は辺りをキョロキョロと見回し始めた。


「ここは……いつもの俺の部屋、か? け、けど……なんだか少し前の部屋に似てるような……」


 不思議そうにしていると、部屋のドアがトントンとノックされ、ガチャリという音を立てて開くと、そこには可愛らしい笑みを浮かべた幼い少女が立っていた。


「お兄ちゃん、今お時間大丈夫だった……?」

「あ……ああ、大丈夫だけど……」

「よかったぁ……お父さん達、お兄ちゃんは勉強中なんだから邪魔しないようにって言うから、少し不安だったの。勉強の邪魔はしたくないけど……その、お兄ちゃんと遊びたかったから……」

「そ、そうか……け、けど今は休憩してたし、遊んだり話したりするくらいは平気だぞ?」

「うん、ありがとう。そうだ……今、お母さんがおやつ作ってくれてるみたいだし、一緒に食べに行こうよ。お母さん、お兄ちゃんが頑張ってるからってお兄ちゃんの好きな物を作ってくれてるみたいだよ」

「そっか。そ、それじゃあ行こうか」

「うん!」


 仮想現実内で妹に手を引かれながら男性は立ち上がると、どこか懐かしそうな表情で微笑み、そのままゆっくりと歩き始めた。


「これが俺の理想の家族……実際には立ち上がってないのに、本当に立ってるような感じだし、妹の手の感触もハッキリしてる。へ、へへ……俺、ずっとこのままでも良いかもしれない」


 自分の手を仮想現実の妹の手に絡めながら独り言ちると、男性はニタニタと笑いながら仮想現実内のリビングへ向かって歩いていった。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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