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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第59話 サイバーファミリー 前編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「ふ、ふへへ……き、今日も良い物が見れたな……」


 空がオレンジ色に染まった夕方頃、メガネを掛けた猫背の男性が街を歩いていた。街行く人々男性の姿を見ると、どこか嫌そうな顔をしたりひそひそと話をしたりしており、男性はその様子を見て忌々しそうな表情を浮かべる。


「ふ、ふん……どいつもこいつもお、俺を腫れ物みたいにあ、扱いやがる……ウチの奴らだってそうだ。お、俺を出来損ないだ気持ち悪い奴だなんだって言ってわ、悪者扱いしかしないんだからな……あ、あんなのは家族じゃない。お、俺にはもっとふ、相応しい家族がひ、必要なんだ……!」


 男性がどこか辛そうな様子で独り言ちていたその時だった。


「そこのお兄さん、少し良いかな?」

「あ……?」


 背後から聞こえてきた声に立ち止まり、男性がゆっくりと振り向くと、そこには黒いパーカーのフードで顔を隠した人物と目深に被ったキャップで顔を隠した青いパーカーに薄い緑色のスカートの姿の人物であり、男性は二人の人物を見て一瞬驚いたものの、すぐに息を荒くし始めた。


「き、君達……女の子、だよね……も、もしかして……お、俺の事が好きでこ、声をかけて……!?」

「ううん、まったく。私はお兄ちゃんとお姉ちゃん、お世話になってるお店のマスター以外はどうでも良いので。というか、貴方みたいな人を好きになるとかありえないですから。寝言は寝てから言ってくださいね」

「な、なんだと……!」

「ふふ、ウチの子が失礼したね。ところで、お兄さんは何か悩みはないかな? ボクは恵まれない人を救う活動をしているんだけど、何か悩みがあるなら話を聞くよ?」

「悩み……し、強いて言うなら、理想の家族が欲しい。お、俺の家族なんていつも俺の事をじ、邪険にするだけなんだ。し、仕事がうまくいかなくて辞めてま、まだ次の仕事に就くだけのゆ、勇気が出なくて家にいるだけなのに……」

「そうか……それなら、彼女に助けてもらおうか」


 クスリと笑うと、『救い手』は背負っていたリュックサックからゴツゴツとした銀色のVRゴーグルを取り出した。


「ぶ、VRゴーグル……これが一体……?」

「これは『サイバーファミリー』という名前で、これをつけると自分にとって理想の家族が自動で出来上がり、つけている間はその人達との生活が出来るんだ」

「り、理想の家族……そ、それじゃあいつも優しくて料理の上手い母親や息子の趣味に関心があって話をしっかりと聞いてくれる父親、甘えん坊で元気いっぱいな妹も……!?」

「ああ、出来るよ。『サイバーファミリー』をつけている間は、触れた物の感触や食べ物の味はしっかりと感じるし、イヤホンなんかをつけなくても外からの音は全部シャットアウトされるから理想の家族からの声や生活音に集中出来る。言ってみれば、別世界に入り込んでいるような物だね」

「そ、そっか……」

「そしてこれは貴方にプレゼントするよ。大切にしてあげてくれ」


 そう言いながら『救い手』が『サイバーファミリー』を手渡そうとすると、男性は動揺した様子を見せた。


「え……い、良いのか?」

「うん、遠慮はいらないよ」

「そ、そうか……へ、へへ……これで俺にもり、理想の家族が……」

「そうだね。ただ、注意点があるんだ。『サイバーファミリー』をつけている間、決して仮想空間の家からは出ないようにしてくれ」

「仮想空間の家から……」

「ああ、そうだよ。もし、それを無視したら大変な事になるから、ちゃんと守ってくれ」


 フードの下で微笑みながらも『救い手』の目は笑っておらず、男性はその視線に恐怖を感じながら頷いた。


「わ、わかった……」

「ありがとう。それでは、ボク達はこれで失礼するよ。行こうか、妹ちゃん」

「うん」


『救い手』達が去っていくと、男性は手に持っている『サイバーファミリー』に視線を落とした。


「り、理想の家族が……て、手に入るんだ。あんな俺をバカにしたりき、汚い物を見るような目を向けてくる奴らとは違うり、理想の家族が……!」


 男性の目は狂気的な光を宿しており、男性は大事そうに『サイバーファミリー』を持つと、ふらふらと歩き去っていった。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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