第58話 フェイクマスク 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……さて、そろそろ行かないとだな」
雲一つない青空が広がり、輝く太陽が浮かぶ朝、自宅で朝食を食べ終えた男性は少し気が進まなそうな様子で独り言ちた。
「……この顔のせいで中々就活もうまく行かなく、なんとか書類審査が通っても次の面接で結局落とされ続けてきたからな。そろそろどうにかしないと……」
男性が暗い表情でため息をついていたその時、ふと何かを思い出したように立ち上がると、そのまま自室へと向かい、机の上に置かれていた小さな白いマスクを手に取る。
「……少しズルいけど、こいつの力を借りてみるか。たしか『フェイクマスク』という名前で、つけながらこういう顔になりたいって願う事でその顔になれるってあの子が言ってたしな。
けど、どういう顔が良い物かな……他人からの反応は良いだろうけど、別にアイドルとか俳優のようなイケメンになりたいわけじゃないし、かといって面白い顔でウケを狙いたいわけじゃないし……」
どのような顔にするか男性はしばらく悩んだ後、決めた顔を思い浮かべながら『フェイクマスク』をつけた。すると、『フェイクマスク』は男性の顔にピッチリと吸い付き、爪で剥がそうとしても剥がれない事を確認してから男性は部屋に置かれた姿見の前に立った。
「……よし、これで良いな。やっぱり他人からの受けのよさは少し欲しいし、その辺にいそうな程度のイケメンくらいなら大丈夫だろ。さて、それじゃあそろそろ職業安定所に行こうかな」
楽しそうな様子で独り言ちた後、男性は外出の準備を整え、戸締まりを確認してから家を出た。家を出てしばらくは周囲の人々からの反応を気にしていたが、いつものように怖がられたり警戒されたりする様子がなく、それどころか女性達は男性を見ながらそわそわしていた事から、次第に男性も気持ちが軽くなっていくのを感じていた。
「……良かった、どうやら『フェイクマスク』の効果はあったみたいだ。いつもなら子供にも泣かれたり不良に絡まれたりもしてたけど、そういう事が無い上に女性からの反応が良いみたいだし、『フェイクマスク』と出会えたのは本当に幸運だったな」
安心したように微笑みながら歩く事十数分、男性は職業安定所に着くと、その入り口の前で深呼吸をした。
「……ふう、着いたな。今回こそ良い仕事が見つかれば良いけど、それは俺の頑張り次第だよな。よし……とりあえず今日も良い仕事が見つかるように祈るとしようか」
希望に満ちた様子で微笑んだ後、男性は職業安定所のドアを押し開けながら中へと入っていった。
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それでは、また次回。




