第6話 招きウサギ 中編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
「それじゃあ、行って来ます」
空が澄みきった日の朝、少年は玄関のドアを開けて外へ出ると、自身が通っている学校へ向けて歩き始めた。
「はあ……今日も憂鬱だなぁ。どうせ今日も特に変わった出会いもないまま終わるんだろうし、なんだか行きたくないよ……」
とぼとぼと通学路を歩きながら少年がため息をついていたその時、少年はふと昨日の出来事を思い出した。
「……そういえば、昨日出会った子、本当に可愛かったなぁ。僕みたいな奴にも気軽に話しかけてくれて、だいぶ話も盛り上げてくれて……ああいう子が一緒にいたら毎日が楽しいんだろうなぁ。
でも、あの子からもらったウサギの置物は本当に効果があるのかな……? たしか『招きウサギ』っていいう人との縁を招いてくれる物だって言ってたけど、本当に招いてくれるなら助かるけど、そんなにうまく行くわけが──」
少年が苦笑いを浮かべていたその時、横の道から突然一人の少女が現れ、それに驚いた少年はぶつからないように止まろうとしたが、それは間に合わず、少年と少女はドンとぶつかった。
「わっ!」
「きゃっ!」
ぶつかった衝撃で二人がその場に尻餅をつくと、少年は慌てながらすぐさま少女へと手を差しのべた。
「ご、ごめん……大丈夫だった?」
「あ……だ、大丈夫です。あ、あの……ぶつかってしまってすみませんでした。怪我、してないですか?」
「あ、うん……僕も大丈夫。ビックリはしたけど、怪我一つ無いから安心して」
「……よかった。私の不注意で知らない人を怪我させたら、本当に悔やんでも悔やみきれないですから」
「そんな事……僕だってすぐに止まれればよかったし、君にも怪我がないようだから、この件はこれで良い事にしよう。いつまでも引きずってても辛いだけだし……ね?」
「は、はい……」
「そ、それじゃあ僕はこれで……」
そう言いながら少年が立ち去ろうとしたその時、少女は少年の肩に手を掛け、それに対して少年が驚いていると、少女は少し緊張した様子でゆっくりと話し始めた。
「あ、あの……もし良かったら、このまま一緒に学校に行きませんか? 制服を見る限り、同じ学校みたいですし、こうして出会ったのも何かの縁ですから……」
「え……う、うん……それは、構わないけど……」
「……良かった。それじゃあ行きましょうか。このままここにいても遅刻しちゃいますし」
「そ、そうだね……」
緊張と驚きで少年の心臓はバクバクと鳴っていたが、想像もしていなかった出来事に喜びも感じており、少年は楽しそうに話す少女に対して相づちを打ちながら幸せでいっぱいな様子で学校へ向けて歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。