第57話 映身書 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
青空が広がり、太陽が眩しい程に輝く朝、少女は静かに目を開けると、体を上に伸ばしてから面倒臭そうな表情を浮かべた。
「はあ……今日も学校行かなきゃないか。でも、やっぱりめんどくさいなぁ」
少女がベッドから出ずにため息をついていたその時だった。
「ほら、早く起きなさーい! 早く起きないと遅刻するし、今日だって先に行ってもらう事になっちゃうわよー!」
「……別に行きたくないし、頼んだ覚えもないんだけど。はいはい、今行くって!」
少女は少し怒った様子で答えた後、ふと何かを思いついた様子で机の上に視線を向け、ベッドから出て机へと近づいた。
「そうだ……これ使って今日はサボっちゃおう。この『映身書』があれば私の分身が作れるって言ってたし、とりあえず一日くらいは良いよね」
そう言って『映身書』を開くと、少女は書かれている文言を唱えた。
「『ルゲササ、ヲイザンソ、ニンシンブ、ハシタワ』」
すると、『映身書』は白い光を放ち、それに少女が驚いている内にその隣には同じ姿をした人物が姿を現していた。
「……すごい、本当に分身が出来ちゃった。ねえ、貴女は私の分身なんだよね?」
「そうだよ。私は『映身書』の力で生まれた貴女の分身。注意点は『救い手』から聞いてるよね?」
「注意点……ああ、聞いてるよ。貴女にお願い事をしてる間は、貴女が私として認識されるとかその間しか貴女がいられないとかそういうのだよね?」
「そう。それで、私がいる間、貴女は透明人間みたいな感じで誰からも視認されないし声も聞こえなくなるの。物に触れたりは出来るけど、誰かと一緒に遊ぶみたいな事は出来ないからね」
「そっか……まあ、それくらい仕方ないか。それじゃあ早速お願いなんだけど……私の代わりに学校に行って来て?」
「学校に行ってくれば良いんだね? うん、わかった。でも、本当に行かなくて良いの?」
「うん、学校はつまらないし、幼馴染みの男子がいっつも私の事を口煩く注意してくるから正直行きたくない気持ちしかないんだよね」
少女の言葉を聞き、分身の少女は静かに頷く。
「……そっか。それじゃあ私は貴女の代わりに学校に行ってくるね。朝ごはんはどうする?」
「あー……まだ良いや、代わりに食べちゃって良いよ」
「わかった。それじゃあまた後でね」
「うん、また後でー」
分身の少女が部屋を出ていくと、少女は再びベッドに戻り、寝転がりながら欠伸をした。
「ふあ……これでよし。まあ、分身が行ってる間は暇だけど、物には触れられるみたいだから、適当に過ごせば良いか。とりあえずもう一眠りしようっと」
そう言って少女は目を閉じると、すやすやと寝息を立て始めた。閉まっていたドアがゆっくりと開き、その隙間からニヤリと笑う分身の少女が見ている事も知らぬまま。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




