第56話 トレジャーパズル 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「ふぅ、今日も楽しかったなぁ……」
オレンジ色の空に徐々に星が見え始めた夕暮れ時、少女は自室のベッドの上に座りながら満足げな様子で独り言ちていた。
室内には大きなぬいぐるみや高級そうな化粧品、宝石が填まったアクセサリーや色鮮やかな衣服などがあり、それらを見回すと、少女は嬉しそうに微笑んでから机の上に置かれた『トレジャーパズル』に視線を向ける。
「ほんと、『トレジャーパズル』のおかげで毎日が楽しいよ。欲しかった物が毎日手に入って、友達が羨む程の彼氏だって出来たわけだし、もう『トレジャーパズル』がない生活なんて考えられない。
ただ、パズルピースの形が度々変わるのはちょっと困るけど……それを言ってもしょうがないか。さて、今日もやってしまおうかな」
楽しそうに言ってから少女はパズルピースを持つと、枠の中に慣れた手つきでピースをはめていった。そして、ワクワクした様子で最後のピースをはめ終えたその時、『トレジャーパズル』は仄かな光を放ち始めたが、その光はいつものような白ではなく、血のような赤色だった。
「えっ……な、なんでこんな色になってるの? 何か間違った事をした覚えはないのに……」
焦りを感じながら少女が疑問を口にしていたその時、少女は何かに気づいた様子で口に手を当てた。
「……そ、そういえば……寝る前に一回やった時にもう明日になっていた気がする。え……それじゃあ、そのせいで二回やったっていう判定になったの……!?」
少女の顔が恐怖で青白くなる中、『トレジャーパズル』は赤い光を放ちながら徐々に白かったピースに絵を浮かび上がらせ、ピースに黒いドクロが描かれた瞬間、ピースの一つ一つから青白い手が伸び、少女の腕を次々と掴み始めた。
「な、なにこれ……!?」
少女が驚きながら怯えた声を出す中、伸びた手はゆっくりと少女を『トレジャーパズル』へと引っ張っていき、少女の手はゆっくりとパズルへと引きずり込まれていった。
「い、いや……! だ、誰か……誰か助け──」
しかし、助けを求める声に答える者はなく、そのまま少女は引きずり込まれると、『トレジャーパズル』の光は弱くなると同時に絵も消えていき、完全に光と絵が消えた後、部屋には青い渦が出現し、その中から哀しそうな表情の『繋ぎ手』と助手の少年が現れた。
「……あの子はダメだったようだね」
「だな。けど、結構今回のは判定がシビアじゃないか?」
「うーん……この子は結構時間を大切にする子だからね。だから、翌日になったらすぐにそれを手に入れられるようにはしてくれたわけだし、そこに気づけなかったのはあの子の落ち度かな」
「そっか。それで、引きずり込まれていった後はどうなるんだ?」
「中に引きずり込まれていった後は意識を奪われて完全に『トレジャーパズル』の一部になるんだ。そして、他の人がまた注意点を無視したり破った時にはその人を引きずり込むようになるんだよ」
「なるほどな。さて、それじゃあ回収して帰るか」
「うん、そうだね」
『繋ぎ手』が頷きながら答えた後、二人は『トレジャーパズル』を回収し、再び出現させた青い渦の中へと消えていった。
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それでは、また次回。




