第56話 トレジャーパズル 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……ふぅ、さっぱりしたぁ……」
満月が星空の中に浮かび、辺りが静まり返った夜、髪をほんのり湿らせ、肩にタオルを掛けた寝巻き姿の少女は自室へ入ると、机の上に置かれた物に視線を向けた。
「……そうだ、せっかくだからやってみようかな。たしか名前は『トレジャーパズル』で、全部真っ白なピースをしっかりとはめられると、パズルに私が欲しい物が描かれて、翌日にはそれが手に入るんだったよね。
欲しい物かぁ……この前、最新コスメのセットの懸賞に応募したけど、それが届いたら良いかな。まあ、欲しい物は自分では選べないみたいだし、まずはパズルをやってみよう」
ワクワクした様子で少女は机に近づくと、ピースが入った袋を持って枠の横にバラバラと置いた。そして、はめやすそうな部分から一つずつはめていったが、ヒントとなる絵が無い事から、徐々に少女の表情も険しくなっていった。
「……全部真っ白なピースだと本当に難しいんだね。ピースの数自体はそんなに多くないけど、形が似てるピースが多いから、結構難しいなぁ……」
しかし、少女は諦めずにピースを次々とはめていき、遂に最後のピースを手に取ると、満足感と達成感を味わいながらピースをはめ込んだ。
すると、『トレジャーパズル』は仄かに白い光を放ち、それに少女が驚いている内にパズルには徐々に絵が浮かび上がっていった。
「これ、なんだろう……パッと見た感じはコスメみたいに見えるけど、もしかして本当に応募した懸賞のコスメセットが当たるのかな……?」
首を傾げながら浮かび上がった絵を見ていたその時、少女の携帯電話がブルブルと震えだし、少女は不思議に思いながら携帯電話を手に取ると、携帯電話を操作した。すると、そこには少女にとって驚くべき事が表示されていた。
「うそ……コスメセットが本当に当たってる! それも届くのは明日って……!」
その瞬間、少女はハッとすると、出来上がったばかりの『トレジャーパズル』に視線を向けた。浮かび上がっていた絵はゆっくり消え始めていたが、うっすらと化粧品の絵が浮かび上がっており、少女は『トレジャーパズル』の絵と携帯の画面を落ち着かない様子で交互に見比べた。
「夢……じゃないよね。ただパズルを填めてただけなのに、コスメが手に入るなんてこのパズルは本当にすごいものなのかも」
そう言いながら再び『トレジャーパズル』に視線を向けると、はめ込まれていたピースはいつの間にか枠の外に散らばっており、それを見た少女は唾をゴクリと飲み込んでから再びパズルピースを手に取ろうとした。
しかし、手が触れた瞬間にハッとすると、ピースから手を離し、小さく息をついた。
「そうだ……日に二回やろうとすると、大変な事になるって言われてるんだった。とりあえずもう少し欲しいのは我慢して、今はコスメが届くのを楽しみに待とう。はあ……楽しみだなぁ」
楽しそうな様子で少女は呟き、翌日の自身の姿を思い浮かべながら鼻唄を歌い始めた。
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それでは、また次回。




