幕間
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
現世から隔絶された空間に立つ世にも不思議な道具達を扱う道具店、『不可思議道具店』。その店先に集まった『繋ぎ手』と助手の兄妹は揃って頭を悩ませていた。
「……やっぱり見つからないね、もう一人の私とコピーの二人」
「ああ、探す相手が増えた分、まだ探しやすくなるかなと思ったんだけど、ちょっと考えが甘かったな」
「うん……何か手がかりでもあれば良いんだけどね」
兄妹が腕を組みながら考え、『繋ぎ手』が不安そうな表情を浮かべていたその時だった。
「……ほう、ここがお前さん達の店だったのか」
「え……?」
突然聞こえてきた声に『繋ぎ手』が驚き、兄妹と共にそちらへ視線を向けると、そこには『繋ぎ手』達にとって見覚えのある面々が立っていた。
「あ、おじさん達は……」
「久しぶりだね、こうして会うのは君が俺達のところに『リモートガン』を持ってきた時以来かな」
「そうですね……って、『アンサーミラー』の女の子に『デヴィネイションフラワー』のお兄さんまで揃って来てくれたんですね」
「うん! お姉ちゃん達のお陰で本当のお父さんと一緒に暮らせるようになったの。本当にありがとう!」
「俺もこうして新しい仕事や同僚が見つかって毎日が充実してるよ。まあ、今日来た目的はそんな話をする事じゃなくて、ちょっと見てもらいたいのがあるからなんだけどさ」
「見てもらいたい物……もしかしてそちらのお二人がつけている二色のチョーカーですか?」
兄の問いかけに女性は静かに頷く。
「うん。これは少し前にある喫茶店で出会った子から貰った物なんだけど、社長達が言うには貴方達が扱っている道具に似た物らしいの。だから、何か知らないかと思って今回は訪ねさせてもらったんだけど……」
「チョーカー……お姉ちゃん、もしかしてこの前の『ドレインドーム』の時と一緒なんじゃないかな?」
「うん、少なくともウチの子じゃないね。因みに、それをくれた人ってどんな人でしたか?」
「黒いパーカーのフードを目深に被っていて顔はわからないけど、背丈も声も貴女と同じ感じで、他にも貴方達二人にそっくりな子達も一緒にいたわ」
「……俺達にそっくりって事は……」
「うん、間違いないよね」
「……どうやらお前さん達にも何か事情があるみたいだな。差し支えなければ少し教えてくれないか?」
刀傷の男性の問いかけに頷くと、『繋ぎ手』はこれまでの出来事を話し、それが終わると男性達は納得顔で頷いた。
「そうか……そんな事になっていたのか」
「はい……そういえば、そのチョーカーはなんともありませんか?」
「ああ、つけたらもう外れないみたいだし、外そうとしたり他の誰かに恋心を抱いたりしたら揃って命を落とすようだけど、そうするつもりはないから平気だよ」
「そうですか……って、あれ……?」
「お姉ちゃん、どうかした?」
「……うん、ちょっとね。あの、少し待っててもらえますか?」
「それは良いが……また何か縁がある奴でもいたのか?」
「……そんなところです。それじゃあちょっと行って来ます」
そう言って『繋ぎ手』は店内へと入っていった。程なくして『繋ぎ手』が出てくると、その手には一丁の拳銃と指輪が一つ握られており、拳銃を見た刀傷の男性と人の良さそうな顔つきの男性は揃って顔をしかめた。
「それは『リモートガン』か……」
「はい。おじさん達にとってはあまり良い印象はないと思いますが、この子の方からおじさん達の役に立ちたいって言ってきたんです」
「役にって……それを撃つ度にソイツの大切な物が無くなるんだろ?」
「そうですけど、あれから少し改良してもらって、直接誰かを撃とうとする以外にも安全装置をつけても弾としてこめた物が戻るようになりましたし、この子自身が程よいところで一度止めた方がいいって教えてくれるようになったんです」
「あの時に比べたらたしかにだいぶ改良されたな……」
「はい。なので、おじさんさえよければまたこの子と一緒にいてあげて下さい。その改良を望んだのはこの子自身ですから」
『繋ぎ手』の言葉を聞いて男性は少し考えた後、微笑みながら『リモートガン』を手に取った。
「わかった。あの時は俺も未熟だったけど、今は守りたい物も出来たし、今度こそコイツと仲良く出来るはずだからな」
「ありがとうございます。それと……こっちの子はおじさんに」
「ん、俺か?」
「はい。この子は『レーダーリング』という名前で、この子を填めた状態で誰かが触れると、その人が今いる位置を教えてくれるようになるんです。因みに、注意点は特にありませんし、強いて言えば一日一回磨いてあげるくらいなので良かったらどうぞ」
「ほう、それは便利だな。くれるというならありがたくもらっておこう。感謝する」
「どういたしまして。皆さんも気をつけて下さいね。たぶん、直接関わってくる事はないと思いますけど、他に関わった人が原因で危険な目に遭うかもしれませんから」
『繋ぎ手』の言葉に男性は微笑みながら頷く。
「うん、ありがとう。それじゃあ俺達はそろそろ失礼するよ。また何かあったら教えに来るけど、君達も十分に気をつけてくれ」
「はい、わかりました」
「皆さん、また来てくださいね」
「うん!」
「今度はゆっくり来れるようにするよ」
「それじゃあ失礼します」
そして男性達が去っていくと、『繋ぎ手』はふぅと息をつき、その様子を見ながら兄は優しく微笑んだ。
「よかったな。前に関わった人とも何とか関係が悪くなってなくてさ」
「うん……それに『リモートガン』もあの人達の事は気にしてたから、これで安心出来たかな」
「そうだね。心強い味方も出来て本当によかったけど、話に出てきた喫茶店ってどこなんだろうね?」
「そういえば聞いてなかったな……」
「そうだったね。ただ、流石に私の行きつけのとこじゃないと思うし、向こうで道具を渡して歩く時には少し喫茶店にも注意してみようか」
「わかった」
「うん」
兄妹が頷きながら答え、店内に入っていった後、『繋ぎ手』も続いて入っていこうとしたが、入り口の前で足を止めると、哀しそうな顔でポツリと呟いた。
「……思う、というよりはあって欲しくない、だよね」
そして小さく息をついて気持ちを切り替えた後、『繋ぎ手』は兄妹に追い付くために中へと入り、入り口のドアを静かに閉めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




