第55話 バインドチョーカー 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
雲一つない快晴の朝、スーツ姿の女性が勤めている会社の中に入ると、入り口には話をする四人の男女の姿があった。一人は眉間に刀傷がある紫色のスーツ姿の強面の男性でその隣には一輪の花を持った少し細身の真面目そうな顔つきの男性、その向かいには人の良さそうな雰囲気を漂わせた黒いスーツ姿の男性が立ち、その男性と手を繋いでいる小さな少女は安心したような表情を浮かべながら手鏡を大事そうに持っていた。
女性はその中にいる人の良さそうな雰囲気の男性を見て少し頬を赤くした後、スーツのポケットから青と赤の二色のチョーカーを取り出した。
「……この『バインドチョーカー』があればあの人と繋がりを持てるはず。あの子は男性に青色、女性に赤色をつけてもらえれば、その二人は運命に縛られたかのようになり、その内にお互いに惹かれていくって言ってた。
この方法が合っているわけないってなんとなくわかってるけど、それでも私はあの人と繋がりを持ちたい。そのためなら私は……」
そう呟く女性の目には妖しい輝きが宿っており、チョーカーを握る手は少しずつ強くなっていった。そして四人に近づくと、女性は声をかけながら頭を下げる。
「おはようございます」
「ん……ああ、おはようさん」
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございます、お姉さ──って、その手に持ってるのって……?」
「あ、これ? これはチョーカーっていう首につける物で、良い色だったからちょっと買っちゃったんだけど、流石に二色はいらなかったかなと思ってたの」
「へえ……たしかに色が綺麗ですね」
「たしかに……」
二人の男性が『バインドチョーカー』の色に関心を寄せる中、刀傷の男性だけはどこか警戒した様子で『バインドチョーカー』を見ており、その様子に少女は不思議そうな表情を浮かべた。
「ボスのおじさん、どうかしたの?」
「……いや、考えすぎだと思うから気にしなくて良い。それで、そのチョーカーはどうするんだ? 別に日によって付け替えても良いと思うんだが……」
「そうなんですけど、この青色の方を見てたら似合う人がいるなと思ったんです。という事で、よかったら貰ってくれませんか?」
そう言いながら女性が人の良さそうな雰囲気の男性に青色の『バインドチョーカー』を渡そうとすると、男性は驚いた様子を見せた。
「え、俺?」
「はい。チョーカーがというよりは青色の物が似合いそうだな思ったんです」
「たしかにお父さんって青色が好きだし、ネクタイも青いのが多い気がするね」
「言われてみれば俺を助けてくれた時も青色のネクタイを締めてた気がするな。せっかくだし、貰っても良いんじゃないか?」
「そうだな。それじゃあありがたく貰う事にするよ。どうもありがとう」
「いえいえ。それじゃあ私はそろそろ仕事を始めますね」
嬉しそうに言って女性が歩いていった後、その様子を見ていた刀傷の男性は心配そうな表情を浮かべた。
「……やはり気になるな」
「気になるって……あの人がですか?」
「それもあるんだが、そのチョーカーがどうにもな。チョーカーをプレゼントに贈るってどういう意味があるか知ってるか?」
「贈る意味……バレンタインやホワイトデーに贈るお菓子みたいにチョーカーにも贈る時の意味があるの?」
「そうだ。『そばにいたい』っていう恋愛的な意味もあるんだが、一般的に輪になっているアクセサリーは贈った相手を束縛や独占したいっていう意味に取られ、チョーカーはその意味が更に強くなるらしい」
「そうなんですね……」
青色の『バインドチョーカー』を見ながら男性が呟く中、刀傷の男性は三人を見回しながら真剣な表情を浮かべる。
「さっきも言ったように俺の考えすぎなのかもしれない。だが、俺達はこれまで不可思議な道具に関わってきて、それぞれ人生が大きく変わってきたのは間違いない。
だから、もしもそれをつけていて何か気になる事があったら、今度こそちゃんと報告しろ。『リモートガン』の時みたいに怠って最悪の事態を招きそうになっても仕方ないからな」
「わかりました」
「私もお父さんの様子をちゃんと見てみるよ。後、『アンサーミラー』にもそれっぽい仲間がいたか訊いてみるね」
「俺も何か注意深く見てみます。一緒に行動する事も多いので、『デヴィネイションフラワー』の力も役に立てるかもしれませんし」
「ああ、頼んだぞ」
刀傷の男性の言葉に三人は真剣な表情で頷いた後、四人は各々のやるべき事をするために動き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




