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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第53話 トラベルトレイン 後編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「……よし、残りの時間も頑張るか」


 よく晴れたある日の午後、スーツ姿の男性は旅行代理店のカウンターに座りながら独り言ちた。その表情はとてもやる気に満ちた晴れやかな物であり、その様子を見た同僚の男性は少し驚いたように話しかけた。


「なんだか最近元気になったようだけど、何かあったのか? 少し前まですごく疲れた感じで元気もなかったから心配してたけど……」

「ああ、少し気分を変えられる方法があってな。それのお陰だよ」

「そうか……まあ、気分転換でもしなきゃやってられないよな。相手はいないけど、俺もここに来るお客みたいに誰かと旅行にでも行きたいもんだ」

「俺だって相手はいないさ。ただ、気分転換はやっぱり大事だなと感じたよ。そうじゃなきゃ生ける屍みたいになってたろうしな」

「違いないな」


 同僚の男性が笑いながら言い、同じように男性も笑っていたその時、店のドアがゆっくりと開き、金髪碧眼の女性が入ってくると、店員達のみならず店内にいた客すらも一斉に女性に視線を向けた。


「うわ……すっげぇ美人。なあなあ、どうしてウチに来てくれたんだろうな?」

「さあな……って、あれ……?」

「ん、どうした?」

「いや……気のせいだと思うけど、どこかであの人を見た事があるような……」


 男性が不思議そうに首を傾げていた時、金髪のポニーテールの女性は店内を見回し、男性の姿に気づいた瞬間に嬉しそうに微笑みながら近づいてきた。


「また会えたわね、不思議な旅人さん?」

「……あっ、もしかしてあの時の……!」

「え……ま、マジで知り合いなのか!?」

「あ、うん……さっき言った気分転換の関係でな。けど、どうしてここに? 貴女の住んでるところってここよりもずっと遠いところなんじゃ……?」

「まあね。でも、こことあそこを行き来する手段があったから、それを利用したのよ。まあ、この世界にいるかはわからなかったけど、貴方から聞いた話と既にこっちに来た事がある人達からの話を併せたら大分一致していたから、期待していたら本当に会えてすごく嬉しいわ」


 金髪の女性が嬉しそうに言い、男性が気恥ずかしさと同僚の男性達からの嫉妬の視線に気まずさを感じていた時、女性は軽く周囲を見回してからクスリと笑った。


「それじゃあこれ以上お仕事の邪魔しても仕方ないからとりあえず失礼するわね」

「え……と、とりあえずって……?」

「この近くに私達みたいなのが集まる集会所みたいなとこがあるみたいだからそこへ行ってるわ。だから、仕事が終わったら後でそこまで来てちょうだい。貴方にお世話になったお礼もしたいし」

「あ……は、はい。わかりました……」

「ええ、それじゃあ楽しみに待ってるわね」


 そう言って金髪の女性が店を後にし、男性が他の男性社員から女性について問い詰められる中、店の外では『繋ぎ手』と助手の少年が安心したような表情を浮かべていた。


「どうやらあのお兄さんは『トラベルトレイン』とうまくやれてるようだね」

「だな。けど、他の世界の人なんて来るんだな……もしかしてそれも神様の仕業か?」

「半分正解かな。前に神様が他の世界に勇者として人を送ったって言ったでしょ? その彼や送り先にいた魔王達が協力して作り出した世界を渡るための魔法があって、今ではそれを利用した移動用のポータルがあるみたいだよ」

「なるほどな……だから、集会所みたいなとこがあるってあの人が言ってたのか」

「うん。因みに、その勇者君や魔王さんもそこには行く事があるようだし、ウチのお店にも何回か来てるから本当にいつか会える日が来るかもしれないね」

「そっか、それは楽しみだな。さてと、それじゃあ俺達はそろそろ帰るか。とりあえずこの辺りに『繋ぎ手』の偽者や俺達のコピーはいないみたいだしな」

「うん」


『繋ぎ手』が頷いた後、二人は雲一つない青空の下を並びながらゆっくりと歩き始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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