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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第53話 トラベルトレイン 中編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「……ん、あれ……?」


 眠っていた男性が目を覚ますと、そこは自宅ではなく、豪華な客車の中だった。客車の中はきらびやかな飾りなどで彩られ、男性が座っているシートも高級な素材を使って作られていた。


「俺、いつの間にここに……たしか家に帰って飯食べて、風呂に入って後はそのまま寝たはず……」


 まだ少しボーッとする頭で辺りをキョロキョロと見回していた時、前方の車両に繋がるドアが開き、人の良さそうな顔をした駅員の姿の男性が歩いてきた。

駅員姿の男性はそのまま男性の元へ歩いてくると、恭しく一礼をしてからにこりと笑って男性に話しかけた。


「本日は御乗車ありがとうございます。私はこの『トラベルトレイン』の車掌を務めているものです。どうぞよろしくお願いします」

「あ、こちらこそよろしくお願いします……えっと、『トラベルトレイン』ってたしか所有者や所有者が一緒に連れていきたい相手を夢の中で旅に連れていってくれるんですよね?」

「はい。本来であれば、お客様がお休みになる前に乗りたいと言って頂けたときのみこちらへお連れしているのですが、今回はお客様がこの『トラベルトレイン』を『繋ぎ手』様から頂いた初日でしたので、ご挨拶やご説明を兼ねてお連れしました」

「そうなんですね……そういえば、切符や乗るための代金って大丈夫なんですか?」

「はい。お客様から代金は頂いておりませんし、切符も御乗車頂いた際に既にお渡ししているのでポケットの中を見て頂いたらあるかと思います」

「ポケットの中──あ、本当にあった。でも、それで皆さんは良いんですか? あの子から聞いた話だと車内販売や何か退屈しのぎの物があるみたいですけど、代金を貰ってないならそういうのを用意するのは苦労するんじゃ……」

「ご心配には及びませんよ。私達にもスポンサーがおりまして、その方からの資金提供がありますし、食材も私達が育てている物を使用してお客様がいらっしゃらない時に用意をしていますから。

 それに、私達もこの『トラベルトレイン』の乗務員という形で生まれていますし、それが役目であり私達のやりたい事ですから、乗務員は皆楽しんで職務に励んでいますよ。時には意見の衝突はありますが、その際にはお互いにしっかりと話し合った上で解決していますしね」


 説明をする車掌の表情はとても穏やかであり、顔色や雰囲気から嘘をついているのではないと感じ、男性は安心したように息をつく。


「そうですか……なんだか思ったよりもここは良い職場なんですね」

「ありがとうございます。さて、本日はどちらまで行かれますか? 行きたい場所を指定して頂ければそこまで安全運転でお連れしてしますし、もしも特に無ければお客様が満足して目を覚まされるまでこのまま車内でおくつろぎして頂いても大丈夫ですよ」

「行きたいところ……」


 男性は頭の中に色々な場所を思い浮かべた。そして数分後、行きたい場所を決めてそれを伝えると、車掌は穏やかに微笑みながら恭しく一礼をする。


「畏まりました。それではご到着まで車内販売や私共の催し物を楽しみながらお待ちください。もしも到着までお休みになりたい時にはそのまま眠っていて頂いて大丈夫ですよ。到着の際には私がお客様に伝えに参りますので安心してお休みください」

「わかりました。えっと……これからよろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。私共一丸となってお客様にご満足頂けるように精一杯努めさせて頂きます」


 にこやかな笑みを浮かべる車掌に対して男性は微笑みながら頷き、車掌が別の車両まで歩いていった後、とてもリラックスしながらもこれからの出来事への期待で胸を膨らませていた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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