第52話 スリープフラッフ 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
満天の星空に青白い月が輝き、街中が静まり返ったある日の夜、自室で机に向かいながら真剣に勉強をしていた少年だったが、その目はとろんとし始め、口からは欠伸が出ていた。
「ふあぁ……やっぱり眠いな。けど、明日は大事なテストがあるわけだし、もう少し勉強しとかなあと……」
少年はやる気に満ちた様子で再び勉強を始めたが、疲労による眠気は少年を襲い、少年の目蓋は開閉を繰り返し、今にも眠ってしまいそうになっていた。
「……いけないいけない、また眠るところだった。でも、眠たいのはどうにかしないといけないよな……」
眠気でまともに考えがまとまらない中で少年は打開策を考える。そして考える事数分、あるアイデアを思いつくと、少年は机の上に置かれた『スリープフラッフ』を手にした。
「……よし、『スリープフラッフ』で眠気を飛ばそう。その分、またしばらくは眠たくなくなるけど……まあ、勉強してる内にまた眠たくなるだろうし、その心配なんてどこにも──」
微笑みながら少年が独り言ちていたその時だった。
「へ、へ……へくしゅ!」
少年は突然くしゃみをし、その飛沫は『スリープフラッフ』へとかかった。
「う……少し体が冷えたかな。さて、それじゃあそろそろ──って、なんだか濡れて……」
『スリープフラッフ』の表面がほんのり濡れている事に気づいたその瞬間、『スリープフラッフ』から無数の光の綿毛が現れ、ふわりと浮き上がった。
浮き上がった綿毛は驚く少年の体に次々と入っていき、全て入り終えると、少年は突如強い眠気に襲われた。
「え、なんで……ま、まさか……さっきの、くしゃみで……『スリープフラッフ』に唾、が……」
少年はそのまま目を閉じると、ゆっくりと机に倒れこみ、その衝撃で手から『スリープフラッフ』が落ちた。そして、少年が眠り続ける中、部屋には赤い渦が現れ、その中からは『救い手』とコピーの妹が姿を現した。
「……ちょっと可哀想だけど、こうなったのは仕方ないかもしれないね」
「……そうだね。でも、くしゃみで飛んだ唾でも『スリープフラッフ』は許さないんだね」
「うん、この子は綺麗好きだからね。『スリープフラッフ』に唾が飛ぶと、飛ばした相手にこれまで自分の中に蓄積された眠気の綿毛を全部飛ばして眠らせてしまう。
眠る時間は蓄積された眠気の量によるけど……この分だと日に何度も蓄積させていたみたいだし、もしかしたら何年も眠り続ける事になるかもね。
高めた悪意と邪念にも負けないという珍しいパターンだったから助けてあげたいところだけど……『スリープフラッフ』の怒りで発生した眠気の綿毛で眠った相手はその時が来るまで絶対に起きないし、無理に起こそうとしても意味はないから残念だけど毛布を掛けてあげるくらいしかやれる事はないかな」
「そっか……」
「さて、それじゃあ毛布を掛けたら撤収しようか。今のボク達には出来る事なんてそれくらいしかないからね」
「うん、わかった」
コピーの妹が頷いた後、『救い手』達は少年に毛布を掛けてから『スリープフラッフ』を回収し、再び出現させた赤い渦の中へと消えていった。
いかがでしたでしょうか。
今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。




