第51話 アロマピアス 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
様々な店の看板のネオンの光が目を刺激し、客引きや酔っ払った人々の声が多く聞こえる夜の繁華街。その中を女性が一人で歩いていると、道行く人々、特に男性達は女性の姿に視線を向け、中には頬を軽く染めたり女性の体をなめ回すように見ながら息を荒くしている者もおり、その周囲からの視線に女性は得意そうな笑みを浮かべる。
「……ああ、良いわ。男達から向けられる暗い欲望と期待のこもった視線、女達からの羨望と嫉妬が入り交じった視線の中を歩くのは本当に気持ちが良い。
この『アロマピアス』の力で体から出る香りがその辺の奴らを引き付けて魅了し、私のこの自慢のスタイルで更に虜にする。ふふ、完璧すぎて笑いが止まらないわね」
女性は楽しそうに笑い、そのまま歩いていくと、向けられる視線は更に多くなり、女性に声をかけようか迷ったり何かを考えながら舌舐りをする男性の姿もちらほら見られ、女性は更に得意げな笑みを浮かべる。
そして歩き続ける事数分、目の前に一人のスーツ姿の男性が現れた。まだ若いその男性は顔立ちが整っており、着ているスーツやつけている腕時計が高級品であった事から、若くして財を成した事は明らかだったが、男性の視線は女性の胸部やスラッとした足にばかり向けられており、その遠慮のない視線にも女性は嫌な顔一つせずむしろ勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「あら、どうかしたのかしら? 何も無いのなら私はこのまま失礼するけれど……」
「……いえ、用事ならあります。貴女さえよろしければ僕と楽しい夜を過ごしてくれませんか? 自慢ではないですが、金には余裕がありますし、雰囲気の良いバーや静かに二人きりで過ごせるような場所も知っていますよ」
「……へえ、中々熱を上げてくれてるじゃない。けど、その程度じゃねぇ……」
「もちろん、貴女の事を満足させられるように頑張りますよ。僕の知ってる場所にお連れした時も夜が深まった後も、ね」
男性は微笑みながら言っていたが、その視線は変わらず胸元や足などに注がれており、その微笑みが徐々に期待をしたような物に変わり、吐く息も心なしか荒くなってくると、女性は余裕そうな笑みを浮かべた。
そして、何かを思い付いたようにニヤリと笑うと、男性にスッと近づき、頬を軽く触れあわせながらその耳元で囁き始めた。
「……ねえ、貴方って裏の仕事の知り合いっている?」
「裏の仕事……ええ、いますよ。色々証拠隠滅が必要な時には頼んでいる知り合いが」
「だったら、私のお願いを聞いてもらいたいの。そしたら、とりあえず今夜は私を好きにしても良いわ。その後は……まあ、貴方の働き次第ね」
「……わかりました。それで、お願いというのは?」
男性が問い掛けた後、女性は目に憎しみと恨みを宿し、楽しそうな笑みを浮かべながら静かに話し始めた。
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それでは、また次回。




