第50話 ドリームメイカー 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……ふふ、いざ思い出してみると、中々懐かしいね。マスター、あの時のボクは借りてきた猫のようじゃなかったかな?」
「そうだね。でも、今はすっかり落ち着いて道具の事や出会った人の事まで楽しそうに話してくれてるようになったし、私としてはホッとしているよ」
「そう。まあでも、あの日にマスターと出会えたのは本当に幸運だったよ。あの日は本当に気分転換に歩いていただけだったようだしね」
「ああ。いつもなら仕事の事があるからすぐに寝るんだけど、あの日はどうにも眠れなかったから、少し外をブラついてみようと思ってたんだよ」
「その結果、ボクと出会った。なんだか不思議な縁を感じるね」
「私もそう思うよ。そしてとりあえず一日だけと言っていたのが一日また一日と延びていって今に至る。それまでに自分は『繋ぎ手』さんとは違う存在として生きると決めて君は一人称も変えて、自分の事を『救い手』と呼ぶ事にしたわけだけど、そういえばどうしてそう呼ぶ事にしたのかまだ聞いた事がなかったね」
喫茶店の店主の言葉を聞き、『救い手』はクスリと笑う。
「簡単な話だよ。あの日、ボクはマスターに出会って美味しいご飯や寝るところを与えられた事で心から救われた。だから、ボクも同じように誰かを救いたいと思ったんだよ。もちろん、ただ救うんじゃなくそれ相応の試練を与えた上だし、ボクがあの子の姿でこうして生まれた理由ももしかしたらわかるかもしれないと感じたしね」
「そうか……後、まだ『ドリームメイカー』がどのような道具かちゃんとは聞いた事がなかったけど、もしかしてあれでコーヒーを淹れると何か起きるのかな?」
「そんなところだよ。彼の力を借りてコーヒーを淹れる際、飲んだ人にどんな夢を見てもらいたいか念じると、その日の夜にその通りの夢を見る事が出来るんだ」
「なるほどね」
「そして、彼には注意点は一切ない。強いて言うなら、彼は綺麗好きだからその日の最後にはちゃんとメンテナンスをしてあげるくらいさ」
「そうか……だけど、私はやっぱり『ドリームメイカー』の力を借りようとは思わないな。その力は素晴らしいし、きっとこの店も繁盛するだろうけど、私は自分の腕でしっかりとお客さんに喜んでほしいし、今の雰囲気やのんびりとした時間が好きなんだ。
繁盛してしまったら今よりも忙しくなってしまうし、もしかしたら態度の悪いお客さんや何かネタを仕入れようとして情報誌の記者なんかが来て、それを嫌ってこれまで来てくれていた人が来なくなってしまうかもしれない。
だったら、私は必要以上に繁盛なんてしなくていい。私はここを色々な人の憩いの場として提供しているつもりだからね」
「……なるほど。それならそれでも良いと思う。ボクもそうだけど、あの子もここの事は好きなようだし、そんな彼女を哀しませるのは本意じゃないからね」
『救い手』が優しく微笑むと、喫茶店の店主は安心したような笑みを浮かべながら頷く。
「君がそう考えてくれているのは嬉しいよ。さて、そろそろまたお客さんも来そうだし、また働き始めようか」
「そうだね。あ、そうだ……ねえ、マスター」
「うん、何かな?」
「居候してるボクが言うのもあれだけど、新しい住人が増えても良いかな?」
「住人……まあ、別に私は構わないけど、誰か君のような子でもいるのかな?」
「いや、まだいないよ。でも……」
喫茶店の店主の問いかけに『救い手』はニヤリと笑う。
「ボクにもそろそろ助手が欲しくなったんだよ」
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それでは、また次回。




