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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第49話 ラブレンズ 後編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「はあっ、はあっ……!」


 辺りが静けさに包まれ、街灯やネオンの光以外に光のない夜の街を少年は恐怖と焦りに満ちた顔で走っていた。その後ろからは怒りを露にした男性達が走ってきており、少年は時折背後を振り返りながら息を切らして走り続けた。


「や、ヤバい……! 逃げないとマジで殺される!」

「待ちやがれー!」

「止まらねぇとぶっ殺すぞ、オラ!」

「はあっ、はあっ……どうせ止まっても殺されるんだろ!? くそっ……親父の愛人を寝取ったりアホな女に手を出したりして楽しんでたら、まさかいつの間にかヤクザの女に手を出してたなんて……! は、早く逃げないと……!」


 少年は恐怖で真っ青になりながらも薄暗い路地を見つけると、サッと路地へと入って身を隠し、ヤクザの男性達が少年を探しながら大声をあげる中、少年は息を潜めながらヤクザの男性達の様子を窺った。


「はあ、はあ……くそっ、どうしてこんな目に遭わないといけないんだよ。こんな事なら『ラブレンズ』なんて使わなきゃ──」


 その時、少年は目に違和感を覚え、手で目を覆った。


「な、なんだ……目が急に霞み始め──い、痛っ!? い、痛い……目、目が急に押し潰されてるみたいに……いた、い……!!」


 少年は目を抑えながら痛みで倒れこみ、体をくの字に曲げたりのたうちまわったりしている内に少年の目は徐々に圧迫されていき、その内に目からは血が流れ始めた。


「い、痛い……お、お願いだから止めて、くれ……」


 痛みで声が涙混じりになり、血と涙が混ざり合った液体が少年の目から流れ続ける事で更に少年が痛みを感じていたその時、少年の目は『ラブレンズ』によって水っぽい音を立てながら潰され、その痛みとショックで少年は大きな悲鳴をあげた。

その後、悲鳴を聞き付けたヤクザの男性達が路地に駆けつけると、そこには仰向けに倒れながら口から泡を吹く両目の潰れた少年の姿があり、その惨さに男性達が息を飲む中で路地の外ではケースに入った『ラブレンズ』と保存と洗浄用のボトルを持った『繋ぎ手』と助手の少女の姿があった。


「……なんとなくわかってたけど、彼はやっぱりダメだったね」

「うん、そうだね。それにしても、『ラブレンズ』の注意点を守らないと目を潰されちゃうんだね」

「そうだよ。『恋は盲目』なんて言葉はあるけど、彼の場合は他人の恋を利用して自分の欲求を満たそうとしたせいで盲目になったわけだね」

「たしかにね。ところで……『ラブレンズ』を渡した日にそういう事をするなら理想の相手がいるって言ってたけど、それってもしかしてお兄ちゃん?」

「……さあ、どうだろうね。少なくともお兄さんの事は好きだし、お兄さんとだったら良い時間を過ごせるとは思うけど、この話の続きは妹ちゃんがもう少し大きくなってからかな」

「……うん、わかった。それじゃあ帰ろっか、お姉ちゃん」

「うん」


『繋ぎ手』が頷きながら答えた後、路地の様子を見た野次馬の声やシャッター音が響く中で二人は夜の闇の中へと静かに消えていった。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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