第5話 ウェザーマップ 中編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
「……よし、これで今日も準備完了だな」
雲一つ無い快晴の空が広がる朝、スーツ姿の男性は自室に置かれた姿見に映る自分の姿に満足げな様子で頷く。そして、机の傍に置かれた通勤用の鞄を持とうとしたその時、机の上に広げられた一枚の紙が目に入ってきた。
「これ……たしか『ウェザーマップ』っていう名前だったよな。話によると、自分の周囲の天気をリアルタイムで観測したり予測出来たりするらしいけど……たしかにこのアパートの名前や天気の表示、道やその名前まで色々な物が表示されているな。
えーと……この辺りは今は晴れで、見える範囲には雨雲は無さそうだな。けど、ちょっと気になるところだし、今日一日の天気を見てみたいな。
『ウェザーマップ』、今から今日の夜8時くらいまでの天気を教えてくれるか?」
男性が『ウェザーマップ』に声をかけると、『ウェザーマップ』は一度白紙に戻り、すぐに現在時刻から男性が指定した時間までの天気をゆっくり表示し始めた。
「これはすごいな……ただの紙みたいなのに、まるでタブレット機器の画面を見てるかのように綺麗に映し出されていくな。えっと……うん、今日のところは見える範囲に雨雲どころか雲自体無いみたいだし、傘は持っていかなくてよさそうだな。ありがとう、『ウェザーマップ』」
男性がお礼を述べる中、『ウェザーマップ』は指定された時間までの天気を映し終えると、再び現在時刻の天気を映し始めた。
「……それにしても、良い買い物をしたな。色々な時間の天気もしっかりとわかるし、紙だから持ち歩きにも困らない。
まあ、濡らしたらヘソを曲げるってあの子は言ってたけど、うっかり何か溢したり濡れた手で触ったりしなければ問題は無さそうだから、その辺も気を付ければいいな」
そう独り言ちながら微笑んだ後、男性は『ウェザーマップ』に手を置くと、表面を優しく撫で始めた。
「あの店の子は燃えたり破れたりしないとは言ってたけど、仕事だけじゃなく、プライベートでも世話にはなりそうだし、いつまでも大切にしたいな。
『ウェザーマップ』、改めてこれからよろしくな」
撫でながら言う言葉に『ウェザーマップ』が返事をする事は無かったが、男性は満足げに頷いた後、『ウェザーマップ』をくるくると丸め、輪ゴムで軽く留めた後に鞄の中へと入れた。
そして、鞄を持って玄関へと向かうと、とても晴れやかな表情で玄関のドアを開けながら外へと出ていった。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。