第48話 インビジブルクリーム 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……ふぅ、宿題終わりっと。思ったよりも苦戦しちゃったなぁ……」
夜、少女は自室で椅子に座ったまま独り言ちると、両腕を上げて体をグーっと伸ばした。そして、腕を下ろしていた時、ふと机の端に置かれた銀色の円柱形のケースが目に入り、それを静かに手に取った。
「……時間も出来たし、せっかくだから試してみようかな。たしかこれは『インビジブルクリーム』っていう名前で、素肌に塗る事で私の姿は誰にも見えなくなって興味や好意を持っている人以外には気配すらも感じ取れなくなるんだったよね。
だいぶすごい力ではあるけど、やっぱり使うためには一度裸にならないといけない事だけが抵抗あるかな。私がやりたい事をやるなら、裸で外を出歩く上に見えてないとはいえ、他の人がいるところをその状態で歩かないといけないわけだし……」
『インビジブルクリーム』を手に持ったままで少女はしばらく悩んだが、やがて覚悟を決めたような表情を浮かべると、蓋を開けて一度机の上に置いてからゆっくりと衣服を脱ぎ始めた。
そしてすべて脱ぎ終えると、恥ずかしさで少し顔を赤くしながら中のクリームを指で取り、薄く伸ばしながら体の至るところに塗り出した。
すると、塗ったところはゆっくりと透明になっていき、すべて塗り終える頃には少女の姿は跡形もなく消え、部屋に置かれた姿見を見た少女はその光景に驚いた様子を見せる。
「す、すごい……このクリームの力は本物だったんだ。それじゃあ次はこの状態で歩いてみようかな。ただ、この状態だと本当に誰にも見えなくなって、雨や涙でも簡単にクリームは取れるって言ってたし、その辺は気をつけないと……」
頷きながら独り言ちると、少女は部屋のドアを開けて廊下へと出た。見慣れたはずの廊下だったが、自身の状態が普通では無かったため、少女の心臓の鼓動はドクンドクンと速くなり、それを抑えるために大きく深呼吸をしてから少女は家の中を歩き始めた。
父親が寛いだ様子でテレビを観ているリビングや母親が夕食の片付けをしているキッチンを通り抜け、少女がいる事に二人が気づいていないのを確認すると、少女はそのまま玄関へと向かい、ドアノブを押し開けて外へと出た。
その瞬間、少女の心臓の鼓動は更に速くなり、一歩踏み出すだけでも緊張する中で吹いてきた風が素肌に直に伝わり、少女は自分が今全裸で外に出ている事を実感させられた。
「うわ……何も着ないで外に出るとこんなにドキドキするんだ。世の中にはこういうのが好きな人やコート一枚だけ羽織って相手に自分の体を見せてくる変質者がいるみたいだけど、私はそうはなれないな。こんなにドキドキしてたら心臓が幾つあっても足りないよ。
でも、とりあえず公園までは行ってみよう。本当に尾行するなら、それ以上に歩かないといけないわけだし、そのためにもこの状態で歩く事になれなきゃ……」
少女は胸に手を当てて心臓の鼓動を確認した後、覚悟を決めた様子でゆっくりと歩きだし、近所の公園へ向けて静まり返った夜道を歩いていった。
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それでは、また次回。




