第47話 ジャスティスカード 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「ふふ……良い感じだ。このままいけばこの学校は風紀の乱れのない素晴らしい物になり、俺がその実権を裏から握る事が出来るようになる……!」
人気もなく静まり返った夕暮れ時の校舎内を歩きながら男性教員は嬉しそうに独り言ち、その手には『ジャスティスカード』が大事そうに握られていた。
「しかし、本当に嘆かわしい事だな。生徒だけじゃなく、教員や校長、用務員も悪事に手を染めているだなんて。不貞行為に窃盗、器物破損に淫行と色々な物が明らかになったが、これからはそんな事は許さない。この『ジャスティスカード』さえあればどんな悪事も白日の元に晒されるんだからな」
男性教員がニヤリと笑いながら独り言ちていたその時、背後に赤い渦が現れ、その中から『救い手』がゆっくりと姿を現した。
「なにやら楽しそうだね」
「ん……ああ、君か。この『ジャスティスカード』と出会わせてくれた事は本当に感謝しているよ。これのお陰で生徒だけじゃなく教員達も悪事が明るみに出るのを恐れてまともな生活を送るようになった。これならこの学校ももっと良い物へ変わっていく──いや、俺がこの学校の実権を握って変えていくんだ……!」
「ふふ、大きな目標を持つのは良い事だよ。ただ、貴方は少々やりすぎてしまったようだけど」
「やりすぎた……それはどういう──」
男性教員が不思議そうに言ったその時、その体は小さな光の粒へと変わり始め、その光景に男性教員は恐怖に満ちた表情を浮かべた。
「な、なんなんだよこれは……!?」
「『ジャスティスカード』の注意点を破った罰だよ」
「注意点を……? そんなはずはない! 俺は悪事なんて──」
「たしかに貴方から見ればそうかもしれない。けど、貴方は他人の悪事を暴く際に少々手荒な真似をした上に悪事を働いた相手に対して脅すような事を言ったそうだね。それが『ジャスティスカード』から見れば暴行罪や脅迫罪にあたったようだ」
「そ、そんな……俺は、ただ風紀を守ろうとしただけなのに……!」
「……その姿勢は素晴らしかったよ。ただ、やり方がよくなかったね。まあ、貴方はこのまま光の粒になって消えていってしまうけど、来世がもしもあるならその時こそ本当に正しい行動が出来るように祈ってるよ」
その『救い手』の言葉に対して男性教員は驚いた表情を浮かべたが、それはすぐに救われたような物へと変わり、そのまま無数の光の粒となって消え、男性教員の衣服と共にカランという音を立てて落ちた『ジャスティスカード』を拾いながら『救い手』は男性教員がいたところへ視線を向けた。
「……気の毒だとは思うけど、これが道具達の意思でありやり方だからね」
『ああ。俺達は縁のある人間の手助けはするけど、少しでも外れた事をしたと思ったらしっかりとアウトにしてるからな』
『まあ、こればかりは仕方ないさ。『救い手』が言ったように来世があったらその時はうまくやれば良い。考え方や姿勢は間違ってないんだしな』
『そうですね。私達に出来るのはそうなるように祈る事だけですから』
「……うん、そうだね。それじゃあ帰ろうか」
その言葉に『コピーカメラ』達が答えた後、『救い手』は再び出現させた赤い渦の中へと静かに消えていった。
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それでは、また次回。




