第47話 ジャスティスカード 前編
どうも、伊達幸綱です。それでは早速どうぞ。
「はあ……まったく、どうしたら良いだろうか……」
青空に浮かぶ雲が少しずつオレンジ色に染まり始めた夕方頃、スーツ姿の男性は表情を暗くしながら重い足取りで歩いていた。
「最近、学校の風紀が乱れているのは本当に嘆かわしい。隠れてタバコを吸う生徒に校内であるにも関わらず異性の体にみだりに触れる生徒、果ては生徒間での金銭のやり取りをした上での不純な交際もあると聞く。
こんな事では真面目に学校生活を行っている生徒にも影響が出て、学校全体が良くない方へと向かってしまう……はあ、何か良い方法は無いだろうか……」
男性が深くため息をついていたその時だった。
「そこのお兄さん、少し良いかな?」
「む……?」
背後から聞こえてきた声に立ち止まり、男性がゆっくりと振り返ると、そこには黒いパーカーのフードで顔を隠した人物がおり、そのただ者ではない雰囲気に男性は一瞬たじろいでから声をかけた。
「き、君は誰なんだ……?」
「ボクは恵まれない人の救済を行っている者さ。それで、なんだか落ち込んでいたようだけど、何か悩みでもあるのかな?」
「……まあ、見ず知らずの相手に話しても仕方ないのだが、ウチの学校の風紀が乱れている事に悩んでいたんだ。生徒指導をしている教員としてはどうにかしたいんだが、中々良案が思いつかなくてな……」
「なるほど……それなら、彼が適任かな」
『救い手』はクスリと笑ってから背負っていたリュックサックの中に手を入れ、真ん中に『J』と刻印された金色のカードを取り出した。
「なんだそのカードは……?」
「彼の名前は『ジャスティスカード』、名前の通り、正義を司るカードで、悪事を行った相手の前でこのカードを出せば、その相手はどんなに小さな悪事でも正直に話してしまうという力を持っているんだ」
「そのカードにそんな力が……俄には信じられないが、そんな嘘をついて俺をからかおうとしているようには見えないしな……」
「それなら『ジャスティスカード』をあげるから、その力を体験してみたら良いんじゃないかな?」
そう言いながら『救い手』が『ジャスティスカード』を差し出すと、男性は驚いた様子を見せた。
「い、良いのか?」
「うん、良いよ。ただし、彼は悪事を嫌っているから、一度使った後はどんな悪事も出来なくなってしまう。それでも良いかな?」
「……構わない。元から悪事なんて行う気は無いからな」
「それならよし。それじゃあ彼はこれから貴方の物だ。大切にしてあげてくれ」
「あ、ああ」
『救い手』から『ジャスティスカード』を受けとり、男性が『ジャスティスカード』をまじまじと見ていると、その姿にクスクスと笑ってから『救い手』はクルリと体を背後に向けた。
「それじゃあボクはこれで。貴方の仕事がうまく行く事を祈っているよ」
「あ、ああ……ありがとう」
「どういたしまして」
そして、『救い手』がゆっくりと歩き去って行くと、男性は手の中にある『ジャスティスカード』に視線を落とした。
「……悪事を白日の元に晒すカード、か。その力がどの程度かわからないが、とりあえず話を信じて使ってみるしかないな」
少し不安げに独り言ちると、男性は『ジャスティスカード』を胸ポケットにしまい、そのまま自宅へ向けて歩いていった。
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それではまた次回。




