第46話 エンゲージリボン 後編
どうも、伊達幸綱です。それでは早速どうぞ。
「ふふ……楽しみだなぁ」
よく晴れた昼頃、赤いリボンを髪に結んだ少女が楽しそうな様子で独り言ちると、隣を歩く少年は嬉しそうに微笑んだ。
「そう言ってもらえて嬉しいな。前々から家には招待したいと思っていたし、両親も兄さんも君には会ってみたいって言ってたからね」
「へえ、そうなんだ。恋人の家族から好印象を持たれてるのは彼女としては嬉しいな。まあ、会ってみたらもっと好きになってもらえると思うけどね」
「……ふふ、そうだね」
少女の言葉に少年が静かに笑いながら答え、その数分後に二人が少年の家に到着した後、少年はゆっくりと玄関のドアを開けた。
家の中はとても静まり返っており、他に誰かがいるようには思えないほどだったため、少女は不思議そうに首を傾げた。
「あれ……なんだか静かだね」
「……うん、ウチの家族はみんな物静かだからね」
「なるほど……」
「とりあえず、僕の部屋に行こうか。もしかしたらみんな自分の部屋にいるかもしれないから、後で集めた方が良いしね」
「あ、うん」
少女が答えた後、少年は少女を伴って家の中を歩き、少年の部屋へと入った。すると、部屋の壁にはあらゆるアングルから撮ったと思われる少女の写真が貼られており、その光景に少女が驚愕と恐怖が入り交じった表情を浮かべていると、その後ろで少年は不気味な笑みを浮かべた。
「どうかな、僕の部屋。気に入ってもらえたかな?」
「気に入るって……この写真はどうしたの? 明らかに出会ってから撮った物じゃないのもあるし……」
「そうだよ。あの日も言ったけど、僕は君に一目惚れをしていて、ずっと一緒に登校したり話したりしたいと思っていた。だから、こうしてその時を夢見ながら毎日を過ごしていたんだよ。君は僕にとって運命の人だと言えたからね」
「う、運命の人って……」
「だから、今日こうして家まで呼べたのは本当によかったよ。そして、これからはずっと一緒だよ」
「え……」
少年の言葉に少女が振り返ろうとしたその時、少女の首には電源が入ったスタンガンが押し当てられ、少女が目に涙を溜めながらその場に倒れこむと、少女の髪からは『エンゲージリボン』がほどけて落ち、少年はそれには気付かずに少女の唇に自身の唇を重ねた。
「ん……ふふ、寝ている顔も可愛くて唇も瑞々しくて柔らかい。これなら両親も兄さんも喜ぶはずだよ。もっとも、それぞれの部屋からリビングまで抱えてこないといけないけど、それくらいは苦でもないね。さて……それじゃあ対面と行こうか」
少年が少女の体を抱き抱え、そのまま部屋を後にすると、部屋の中には赤い渦が出現し、その中からは『救い手』が姿を現した。
「……思ったよりもすごい縁を結んでたみたいだね。まあ、『エンゲージリボン』に文句を言ってたわけじゃないし、助けてもよかったけど……」
『正直、関わらない方が良いだろうな。アイツ自身もヤバイが、自分に好意を持つ相手だからといって調子にのって起きた事だからこれ以上は良いだろ』
『ああ、とりあえず仲間だけ回収して撤収しよう』
『そうですね。可哀想だとは思いますが、私達に出来る事もあまりありませんから』
「……だね。さて、それじゃあ帰ろっか」
『救い手』の言葉に『コピーカメラ』達が答えた後、『救い手』は『エンゲージリボン』をポケットにしまってから赤い渦を出現させ、その中へ静かに消えていった。
いかがでしたでしょうか。
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それではまた次回。




