第45話 ボンドバンド 中編
どうも、伊達幸綱です。それでは早速どうぞ。
「……ふぅ、これで宿題も終わりだな」
辺りが静まり返り、外から聞こえる音も道路を走る車の走行音しか無くなった夜、机に向かって宿題に取り組んでいた少年は終了すると同時に一息つくと、両手を挙げて体を伸ばしながら気持ち良さそうな表情を浮かべた。
「ん……やっぱりこうして生きてるって良いもんだな。色々面倒な事はあるけど、それ以上に楽しい事はあるわけだし、病気が治ったのは本当に良かった。ただ……その代わりにアイツが死んだのだけはやっぱり納得出来ない。だから、それについてアイツには文句を言ってやらないとな」
そう言いながら少年は右腕につけたリストバンドに視線を向けた。
「……この『ボンドバンド』は腕につけた状態で握り込みながら俺に関係する相手に会いたいと願うと、その相手の魂をここに呼び出せるって言ってたよな。
前の俺なら一笑に付してるとこだけど、今なら『ボンドバンド』の力が本物だって信じられる。だから……頼む、もう一度アイツに会わせてくれ……!」
目を瞑りながら『ボンドバンド』を握り込み、少年が会いたい人物の顔を思い浮かべたその時だった。
「……あ、あれ……?」
「え……」
突然聞こえてきた困惑の声に少年が驚きながら目を開け、ゆっくり背後を振り返ると、そこには自分の姿を不思議そうに見る半透明の少女がおり、その姿に少年の目からは少しずつ涙が溢れ始めた。
「あ……会えた……本当に、会えた……!!」
「え……な、なんで私ここに……? だって私は自分の部屋で死んだはずじゃ……」
「……俺が呼び出したからだよ。この『ボンドバンド』の力でな」
「呼び出したって……それじゃあそのリストバンドはあの『ドレインドーム』みたいに不思議な力を持ってるって事?」
「ああ、そうだ。さて……それじゃあ早速文句を言わせてもらうか」
少年は一度ふぅと息をついた後、椅子から立ち上がってから少女の魂の目の前まで進んだ。
「お前、本当に何をしてんだよ! 俺を助けるために自分の命を失ったら意味ないだろ!?」
「だ、だって……」
「だってじゃねぇよ! 俺が助かったってお前がいなきゃ意味がないんだよ! それに俺が元気になったら、伝えたい事があるって言ったのに勝手に死んで……元気になったのにお前が死んだって聞いた時、俺は本当に辛かったんだからな!」
「……うん、それに関してはごめん。けど、もう『ドレインドーム』に頼るしかなかったし、私以外の誰かを犠牲にして君を助けるのも違うって思ったから……」
「まったく……それで、お前にあれをくれたのは誰なんだ? あの時は偶然見つけた店にあったって言ってたけど……」
少年の問いかけに少女の魂は申し訳なさそうな表情で答えた。
「……本当はお見舞いの帰りに出会った人から貰ったの。パーカーのフードで顔を隠してたけど、首からは黒いカメラを掛けてて、声や背丈から考えるなら私達と同い年くらいの女の子だと思う」
「なるほどな……けど、俺が偶然行けたあの店の人達とは違う気がする。たしかにあの店には同い年くらいの女子はいたけど、あのドームの事は本当に知らないみたいだったし」
「そっか……そういえば、さっき私を呼び出したって言ってたけど、私ってずっとこのままなのかな?」
「いや、十分程度しかいられなくて、それ以上引き留めると今度は俺が魂だけになるようだから、そろそろお別れみたいだな」
「……わかった」
「だから、その前に一つだけ伝えておくよ」
少年の真剣な様子に少女の魂が緊張したようにゴクリと唾を飲むと、少年は少女の顔をまっすぐに見ながら静かに口を開いた。
「お前の事、ずっと好きだった。初めて会ったあの日から、今日までずっとな」
「…………」
「だから、もう恋人同士にはなれなくてもそれだけは伝えておきたかったんだ。本当はお前から返事を聞いて両想いだったらこれまで以上に一緒にいたかったけどな」
「……うん、そうだね。私も君の事が好きだったから助けたかったの。君が死んじゃったら私にとって生きる希望が無くなってしまうから。でも、もう遅いよね……」
「たしかにな。でも、この『ボンドバンド』があればまたこうして会える。俺が大人になって誰かと恋に落ちて結婚して、子供が出来たり仕事で忙しかったりしても命日にはお前に会いたいんだ」
「……それ、未来の奥さんからしたら浮気になるんじゃない?」
「かもな。でも、その時にはちゃんと説明するさ。だから、その時まではまたさよならだ」
「うん、そうだね。それじゃあ……またね」
「……ああ、またな」
お互いに微笑みながら別れの言葉を口にした後、少女の魂は静かに消え、少年の顔は喜びから哀しみへと変わった。そして、室内にはしばらく少年の泣く声だけが響き渡った。
いかがでしたでしょうか。
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それではまた次回。




