第40話 コピーカメラ 後編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
「……と、まあ私の中での『コピーカメラ』との思い出で一番印象に残ってるのはこの時かな」
笑みを浮かべながら『繋ぎ手』が話を終えると、助手の兄妹は揃ってふぅと息をつく。
「なるほどな。話を聞く限りだと、『コピーカメラ』はわりとお前に対して遠慮がない印象だよな。道具と人間というよりは、歳の近い異性の友達みたいな感じで」
「たしかにね。でも、私は『コピーカメラ』が少しお兄ちゃんみたいな道具なんだなって思ったよ」
「ん、俺か?」
「ああ、たしかにそうかも。話し方とか雰囲気は似てるし、性格も似てる感じがするから、お兄さんには少し甘えたくなるのかもね。
もちろん、お兄さんをあの子の代わりみたいに考えてはいないけど、お兄さんと話してるとあの子と話してる時の事を思い出して頼りたくなるんだと思う」
「そっか。まあ、そう言われて悪い気はしないな。それに、なんだか嬉しいしな」
「嬉しい?」
『繋ぎ手』が首を傾げると、兄は微笑みながら頷いた。
「ああ、それだけ『繋ぎ手』が俺に対して信頼してくれているという事にもなるし、俺達が頼んだからとはいえ、『繋ぎ手』が自分の過去について話してくれたのは本当に嬉しいんだ」
「そうだね。お姉ちゃんとは一緒にお店番をしたり道具と人間の橋渡し役として活動したりしてきたけど、まだまだお姉ちゃんの事について知らない事も多かったから、そういうのがわかるのは嬉しいかな」
「二人とも……」
「まあ、何でも話してもらおうとは思わないけど、こういう感じで何か話しても良いと思った時には話してくれると嬉しいよ。一緒に暮らしたり活動したりする上で『繋ぎ手』の事を知っておくのは大切だし、俺達ももっと『繋ぎ手』について知っておきたいからな」
「……うん、わかった。そんなにしょっちゅうは話せないと思うけど、話せる時には話すようにするね」
「ああ」
「うん!」
助手の兄妹が嬉しそうに答え、『繋ぎ手』がどこか安心したように微笑んでいると、兄は少し不思議そうな顔で首を傾げ始めた。
「そういえば……話を聞く限りだと、『コピーカメラ』は撮った物をコピー出来る物なんだよな?」
「うん、そうだよ。その力を使わずに普通のカメラとしても使えるけど、使った時にはそれ自体を完全にコピーして出現させる事が出来るすごい子なの。ただ……完全にコピーしちゃう分、人間や動物をコピーした場合は性格や考え方も同じになって、コピーした側が本物に成り代わろうとしちゃうんだ。だから、渡す事があったらそれが注意点になるね」
「成り代わる……『繋ぎ手』のそっくりさんは別にそういう目的は無さそうだし、『コピーカメラ』が関わってる可能性は少なそうだな。それに、『繋ぎ手』を放り出して誰かのところに行くとも考えづらいし……」
「だね。お姉ちゃんのそっくりさんや『コピーカメラ』の件はまだまだ謎だらけだよ」
「まあね。でも、二人が協力してくれるなら、たぶん大丈夫だよ。さて……それじゃあお話は一度ここまでにして、御師匠様が帰ってくるまでに掃除を終わらせちゃおうか」
「だな」
「はーい」
助手の兄妹が返事をしてから再び作業に移ると、『繋ぎ手』も自身の作業に移るべく店奥へ向けて歩き始めたが、その顔は先程までの笑顔ではなく、哀しさと寂しさ、辛さと苦しさが入り交じったような物だった。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




