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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第39話 ポジティブライター 中編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「ふぅ……ようやく昼休みか」


 青空に雲がちらほらと浮かぶ昼間、スーツ姿の男性は椅子に座りながら少し疲れたような声で独り言ちた。昼休みというタイミングだったからか男性がいるオフィス内には他に数人程度しかおらず、男性は周囲を見回してから再び息をついた。


「さて……俺もそろそろ飯を食うか。けど、この時間を利用して“コイツ”を試してみたいんだよな」


 そう言いながらスーツ姿の男性は『ポジティブライター』を取り出すと、指で弾いてキャップを開けた。


「この『ポジティブライター』は普通にライターとしても使えるけど、俺が自分や誰かの気持ちや感情、欲求に火を点けたいと思いながら実際に火を点けると、本当にそれに火が点くって話だったな。

ただ、昼休みまで使う機会も無かったし、俺はタバコを吸わないから使い道があまり無いよな。一応、オフィス内は火気厳禁じゃないから、使う事は出来るけど……」


 悩みながらスーツ姿の男性が『ポジティブライター』のキャップを開け閉めしていたその時だった。


「あれ……それってジッポライターですか?」

「え?」


 声がした方へスーツ姿の男性が顔を向けると、そこには短い茶髪の女性社員の姿があり、その顔を見た瞬間、男性の顔はほんのりと赤くなった。


「あ……ああ、そうなんだ。昨日、偶然手に入れたんだけど、タバコも吸わないからどんな風に使おうかと考えていたんだ」

「ふふっ、そうなんですね」

「それにしても……君もタバコを吸わないはずだけど、よくジッポライターだとわかったね」

「私の父がジッポライターを集めるのが趣味で、小さい頃からコレクションを自慢げに見せられていたんですが、その内に私もジッポライターが少しずつ好きになってしまって……」

「なるほど……そうだ、ちょっと火を点けてみようか? ここは火気厳禁じゃないし、軽く点けるくらいだから」

「あ、良いんですか? それじゃあお願いします」


 女性社員が嬉しそうな笑みを浮かべると、スーツ姿の男性は更に顔を赤くしながらコクリと頷き、再びキャップを開けた。そして、ある事を考えながらフリント・ホイールに指をかけてから勢いよく回転させると、小さな火が点ったが、男性はキャップを閉めてすぐに消火をした。


「はい、終わり……って、どうかした?」

「……え? い、いえ……なんでもないですよ……?」

「そう? 少し顔が赤いようだし、もし具合が悪いなら午後は早退しても良いと思うけど……」

「だ、大丈夫です……見せて頂きありがとうございました……」


 そう言うと、女性社員は先程とは違って顔を赤くしながらそそくさと去っていき、その姿をスーツ姿の男性はきょとんとしながら見ていたが、やがて手の中にある『ポジティブライター』に視線を向けた。


「……さっき、あの子の恋心に火を点けたいと思いながら使ったけど、もしかして本当に効果があったのか?

まあでも、その恋心は俺に対してとは限らないし、誰かとの恋を成就させたとしたら俺だけ損した形に……いや、その考えは止めよう。たとえ、俺に対してじゃなくてもそれならそれで応援しよう。こうして話せただけでもラッキーだったしな」


 スーツ姿の男性は頷きながら独り言ちると、『ポジティブライター』をポケットにしまい、昼食を取るためにバッグの中からハンカチに包まれた弁当箱と水筒を取り出し、いただきますと口にしてから昼食を食べ始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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