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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第4話 縁切りバサミ 中編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「……ふぅ、これでこの仕事も終わりね」


昼過ぎ、目の前のパソコンを見ながら女性は疲れた様子で独り言ちた。そして、そのままキーボードを打ち、手掛けている仕事をこなした後、女性が深く息をつきながら椅子の背もたれに体重を預けていると、ふと別の机に向かいながら仕事をしている一人の男性が目に入ってきた。


「……あのハゲ部長め、本当に見てるだけで腹が立ってくるわ。見てるだけで人を不快にさせられるなんて一種の才能よね。さて……それじゃあ例のハサミの力でも試してみますか」


そう言うと、女性は机の上に置いていた『縁切りバサミ』を手に取り、部長の男性へ視線を戻した。すると、先程までは見えなかった白い糸のような物が自分と男性を繋いでいるのが目に入り、女性は驚いた様子を見せた。


「……これが縁の糸って奴か。これが繋がってるのを見るだけで更にムカムカしてきたわ。よし、さっさと切ってしまおう」


女性はハサミの刃を開きながら縁の糸の一番近い位置に近づけると、勢いよく刃を閉じた。すると、シャキンという小さな音が鳴ると同時に縁の糸は切れ、黒ずんでいきながら静かに消えていった。


「……なんだか怖い消え方をしていったけど、これでたぶん良いのよね……? ま、まあ……すぐに答えなんて出ないだろうし、とりあえず今は仕事に戻りましょうか」


縁の糸の消え方に女性は少々恐怖を感じたようだったが、すぐに気持ちを切り替えると、次の仕事へと取りかかった。そして翌日、女性が出社してみると、オフィスにいた数人が悲痛そうな表情を浮かべており、女性は同僚達の様子に疑問を覚えながら話しかけた。


「おはようございます。どうかしたんですか?」

「……ああ、おはよう」

「実は……部長が出勤途中に事故に遭って、病院に運ばれる前に亡くなったらしくて……」

「部長が……!?」

「はい……事故に遭ったのはどうやら見通しの良い交差点で、停車中の部長の車に居眠り運転のトラックが突っ込んできたようなんです……」

「部長……決して感じの良い人ではなかったけど、仕事には熱心だったし、なんだか寂しくなるな……」

「たしかにな……だが、いつまでも哀しんではいられないから、みんなはそれぞれの仕事の準備を始めてくれ」


男性社員のその言葉に全員が頷いた後、社員達はそれぞれの席へ向かって歩き始め、女性も自分の席へ着いた。しかし、その表情は悲痛そうな物ではなく、嬉しくて仕方ないという思いをどうにか堪えようとしている物だった。


「……あのハゲ、事故に遭って死んだのか……ふん、死んだのは日頃の行いが悪かったからよ。それにしても……あのハサミ、すごい力を持ってるようね。

あれさえあれば、私は嫌な奴との縁を切り続けられるし、もしかしたら今回みたいに勝手に死んでくれるかもしれない。ふふっ……さて、次に私との縁を切られるのは誰かしらね……」


女性の笑みはとても邪悪な物であったが、それに気づく者は誰もおらず、女性は何事もなかったかのように仕事の準備を始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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