表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
116/317

第38話 クリーンタオル 前編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「あーあ、どうにかならないかなぁ……」


 周囲から活気に溢れた声が上がっている昼間、グラウンドで運動部の生徒達が熱心に練習に励む中、野球部の部室では一人の女子生徒が憂鬱そうにため息をついていた。


「……他の部員達は真面目に頑張ってるのに、彼だけはいつも不真面目だから、他の部員達だけじゃなく、別の運動部の生徒からも印象が悪いのは彼女としても野球部のマネージャーとしても本当に辛いよ。

それに、親がいない日に家に呼んでイチャイチャしようとしても、なんだか前よりも乱暴な感じになったし、街で悪そうな人達と一緒にいるところを見たっていう話も聞くし……はあ、せめて彼の考え方を変えられたら良いのになぁ」


 女子マネージャーが表情を暗くしながら俯いていたその時だった。


「こんにちは、精が出ますね」

「……え?」


 突然背後から聞こえてきた声に疑問を抱いた女子マネージャーが驚きながら振り返ると、そこにはセーラー服姿の少女と白いパーカーに水色のスカート姿の少女が立っていた。


「え……あ、貴女達は……?」

「私達は道具と人間の橋渡し役とその助手ちゃんだよ。ところで、なんだか辛そうだったけど何かあったの?」

「あ……まあ、少しね。実は私の彼が最近部活も真面目にやらない上に悪い人達と一緒にいるところを見たって言われるようにもなってて、彼女兼野球部のマネージャーとしてどうにかならないかなって思ってたの」

「なるほど……つまり、彼氏さんの考え方を変えたいってとこですね。お姉ちゃん、バッグの中を見せてくれる?」

「うん、もちろんだよ」


『繋ぎ手』が微笑みながら頷き、バッグを下ろすと、助手の少女はチャックを開けて中に手を入れ、その中から一枚の小さな白いタオルを取り出した。


「この子が一番相性が良いみたいだよ」

「それは……タオル?」

「この子は『クリーンタオル』っていう名前で、汗や汚れも拭き取れるんだけど、その人の中にある邪心や悪意も拭き取る事が出来るんだよ」

「邪心や悪意……それじゃあこれで拭いたら、悪い事を考えてる人も考えを改めるって事?」

「そうなるね。そして、この子は貴女にプレゼントするよ。大切にしてあげてね」


 そう言いながら『繋ぎ手』が『クリーンタオル』を手渡そうとすると、女子マネージャーは驚いた様子を見せた。


「え……でも、良いの?」

「うん。この子は店頭には並べられなかったり試作品だから持っていって良いって言われている子だからね」

「そっか……それじゃあこのタオルの力を借りてみようかな。どうもありがとう」

「どういたしまして」

「ところで、お姉ちゃん。この子には何か注意点ってあるの?」

「注意点……何か使っちゃいけない物があるの?」

「いや、普通に使う分には良いんだけど、何かを拭き取ったらすぐに洗ってあげないといけないの。そうじゃないと大変な事になるしね」

「使ったらすぐに洗う……うん、わかった。それくらいなら大丈夫だよ」


 女子マネージャーが少し安心した様子で頷くと、『繋ぎ手』は満足そうな様子で微笑む。


「それじゃあ私達はそろそろ失礼するよ。その子、大切にしてあげてね」

「それじゃあまたね、お姉ちゃん」

「うん、またね」


 そして、『繋ぎ手』達が部室から出ていくと、女子マネージャーは手の中にある『クリーンタオル』に視線を落とした。


「……心の汚れまで拭き取れるタオル、か。どこまでの力があるかわからないけど、これに縋るしかないわけだし、まずは頼ってみよう」


 決意を固めたような表情で独り言ち、足元に置いていたバッグの中に『クリーンタオル』を入れると、女子マネージャーは自分の仕事に意識を集中させていった。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ