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戴剣の儀
その日、男は勇者として王から儀式に呼ばれる。
玉座に呼ばれ行われたそれは、ゲームで見ていた光景とは少し違い、盛大に行われるものではなかった。
イメージとしては大衆の目の前で行うような感じだと思っていたが色々あるのだろう。
確かに自分も王様なら世界の危機にそんなパーティーのような儀なんて上げられないだろうなと考えながらその男は王の目の前に立つ。
ある程度王からつまらない校長の話を聞かされるような内容を拝聴し、衛兵から鉄の装備一式と旅の資金を頂いた。
ここに関してはRPGのようなしょっぱい軍資金ではなく、ある程度の生活費用をもらった。
防具もそこそこのものを頂いた。
ゲームだとくれさえしない。買い物でも木の装備だもんなと思いながら受け取った。
更にこの世界でいう一月程安宿だが宿を無料で使わせてくれるというありがたい話もあった。
これで異世界に転移して野垂れ死ぬなんてことはしばらくはない。
最期に王の威厳ある締めと兵士たちの敬礼によって戴剣の儀は終わりを告げた。
これが俺の旅立ち。劔 一海の勇者としての始まりだった。