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那由多の剣と魔導士の卵  作者: ナンプラー
序章  血のクリスマス
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幕間 ユーリ・マグノリア最期の独白



 遠のいていた意識を取り戻した時、僕は不思議な光景を見ていた。

 それは、僕と今まで共に戦ってきたあの剣を使う何者かの姿だった。


 使える人間は僕以外にいない。という話をすると大嘘になってしまうが。

 結果的に最大限活かせる人間は僕だったのだ。


 目を疑わずにはいられなかった。

 なにせこれが現実であるなら僕の願いが叶ってしまったということだ。


 今まで数々の世界を渡り歩き、絶望を知り、一縷の望みを希望に僕はギャンブルに出たのだ。

 僕が世界を渡り歩いていたのはそういうことだ。


 誰が戦っているのか気になるがある程度視界がぼやけて分からない。

 分かるのはその煌めきは僕が使う以上に、いやそんな規模じゃない。

 これ程までに眩く輝やかせられるのか疑問に思ってしまう程。

 僕の扱う力の何倍も感じさせる光だ。


 その男は動く。

 あっという間にその男はもう一体の敵を切りつけあの百足に一泡吹かせる。




 ……僕は死ぬ前にいい夢を見てしまっているのかもしれない。




 ここまで素晴らしい素質は初めて見た。

 それも数多の世界を渡り歩いた自分が求め続けても自分の力と同等の人間を見つけるのがやっとだったのだ。

 さっきの攻撃で僕も死ぬほどのダメージを受けてしまったのでそう思うことしかできなかった。


 謎の男は走り去る。


 待ってくれ。


 せめて君は誰なのか。


 教えてくれないか。











 その男が振り向いた瞬間、僕はこんなにも報われた気持ちになるなんて想像もしなかった。



 その肩に構える煌々と輝く剣を持つ男は、



「……一海?」



 今見えるこの瞬間の景色が鮮やかに輝きだす。

 全て悟ってしまった。

 そうか……そうか……



「彼が……そうだったんだね……」



 その視界はまた歪む。


 涙が溢れた。

 ボロボロと零れた。

 今までの辛い人生が走馬灯のように駆け巡った。



「ああ……僕の勘はやっぱり当たっていた。この土壇場で掴んでいた! 彼を助けたいという選択は……間違いじゃなかった!」



 僕は本当は、申し訳なかったのだ。

 いずれこの世界は狙われたかもしれない。

 でも僕が連れてきてその結末を早めてしまったかもしれないと。

 彼の最高の幸せを奪ってしまったかもしれないと。




 心のどこかで後悔していたのだ。




 でも、君が掴んでしまったのなら仕方ない。

 君に託されたなら仕方ない。

 これは僕と君との運命だったのだ。



 この絶望蔓延る旅のなかで、君に託す定めだったのだ。



 すまない一海……君はこれから先、今日よりも残酷な運命が待ち受けるかもしれない。


 でも君のその力はいずれ僕たちの世界を、いや、()()()()()を救うだろう。



 ならば僕に残された使命はあと一つ。



「さあ、もうひと踏ん張りだ」



 一海はその場で倒れる。

 その雄姿を目に焼き付け僕は最後に立ち上がるのだ。



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