思い
ちょっと飛ばしすぎ感あるから編集してます。編集中
「ーーもう目の前で子供が死ぬのは見たくない。だから放っては置けなかった」
椅子に座って話していたザックさんは苦しげな表情で話し終えた。
「そうだったんですね…」
ザックさんの過去を聞いて僕は平常心を保っては居られなかった。涙が出そうな表情を俯き隠す。
そんな僕を見たからなのかザックさんは悪かったなと謝る。とても小さく消えてしまいそうな声にさらに悲しさがこみあげてくる。重い空気が漂い息苦しさを感じている時、空気を壊す音が鳴り響いた。
ぐぅぅぅぅ~~
な、何でこんな時にお腹なんてなるの!確かに何も食べてなかったから仕方ないかもしれないけど、タイミングが悪すぎるよ。それに恥ずかしい。
「ハハハハーー」
さっきの表情が嘘みたいにザックさんは顔を赤くして大笑いをした。
過呼吸になりそうなくらい笑ってるな…ザックさんが笑ってくれたからよかったけど僕は凄い恥ずかしいんだけどお願いだからもう笑わないでぇぇ!!
僕は複雑な気持ちを抱きつつ熱くなった顔を冷やすように両手で頬を触る。
「腹が減ってるのか。一階に食べるところがあるから行くぞ」
未だに笑いながら話すザックさんに僕は小さく頷いた。
ザックさんの後を追うように一階に降りると剣を腰にさし体には装備を付けている冒険者らしき人達が飲み食いしながら賑わっていた。酒の匂いに表情が歪みそうになるのを我慢しながら席に着く。周りには子供などいるはずもなく「何で子供が」と言う視線を感じる。
どう見てもここは酒場だよね…確かに子供が来る場所じゃないけど仕方ないじゃないか。そんなにじろじろ見ないでよ。自分でも場違いなのは分かってるんだから!
「おい、お前ら見てくるんじゃねえぞ」
ザックさんは席を立ちあがり冒険者たちに一喝する。そうすると酒場でどんちゃん騒ぎをしていた冒険者達が嘘のように静まり返った。それから視線を感じる事はなかった。
ザックさん…凄いカッコいいです。ザックさんはもしかして凄い人なのかな?
僕が驚いていると、ザックさんは腰を下ろし何事も無かったように小太りの男に料理を頼んだ。
「なあ、ルーク。もし行く当てがなかったら俺が泊まっている部屋に住んでもいいぞ」
向かい合うようにテーブル席に座っているザックさんは僕の目を見て話す。
行く当てもないしここは素直に甘えよう。
「お願いします」
僕は深々と頭を下げるが、すぐにザックさんに止められた。そんなやり取りをしていると小太りの男性が料理を運んできた。皿の上には大きな肉の塊が乗っていて香ばしい香りが漂う。
「ここのお店の一推しの料理だぞ」
そう言いながら運ばれてきた肉をザックさんが小皿に切り分けてくれた。
「美味しい」
口に入れた瞬間肉がとろけ、濃い味付けがに口の中に広がった。余りの美味しさに僕は声を上げた。急いで食べる僕をザックさんは心配そうな目で見てきた。
いや、大丈夫ですから飢えていたわけじゃないです。ただの空腹です。多分僕の作り話を信じてるから心配してくれてるのだろうけど…この嘘を一生背負っていかないといけないのかな…もう考えるのやめよう。うん、それが一番だね。
僕は肉を口に入れていった。
「ルークこの後店に行くからついてきてくれ」
「あ、はい」
食べ終わり二階の部屋で休んでいるとザックさんに声を掛けられる。僕は返事を返しザックさんに釣られて外に出る。
そう言えばこの世界にきて外の景色を見た事はなかったな。部屋には窓があったけど見るよう薄ら無かったし、空から落ちる時なんか焦りすぎて景色すらろくに見てなかったしな。
僕は外に出るときれいな景色に声を出してしまう。
「綺麗だ…」
半分に欠けた白い月が目に映り、レンガ造りの家々からは光が漏れ夜の暗闇を明るく照らす。様々な店から聞こえる笑い声は何故か心地よく感じる。
僕は景色に見とれながら歩いていると、大通りに出た。通りに沿うように建てられた屋台から見える見たこともない食べ物に目を引かれながら歩いていく。
何か記憶にあるものと似ている食べ物があるけど、この世界だとわからないからな。それにしてもどこに行くんだろう?
大通りを抜け細道にある小さな店の目でザックさんは立ち止った。
「ルークここだ」
店から漏れる光に目を細めながら中に入ると、若い女性が出迎えてくれる。
「いらっしゃい」
華麗な服を身にまとう女性にザックさんは少し頬を染めていた。
あれ?もしかしてザックさん
にやにやしながら顔の赤いザックさんを見つめていると、僕に気づいたのかはぐらかすように店に売っている服を手に取った。
「ルークこれはどうだ?」
「それは派手すぎますよザックさん」
ザックさんは色の濃い衣服を楽しそうに笑いながら渡してくる。僕は苦笑いをしながら断り、目立たない服を選んでいく。僕の選んだ服を見てザックさんはしょぼくれた顔をしていた。
だってザックさん派手すぎるのしか選ばないんだもん…心の中で愚痴を言いながら店を後にした。
「危なかったんだぜあの時はー」
「俺なんかー」
帰り際至る所に傷が付いて汚れている防具をつけながら酒を飲み交わしている冒険者たちの自慢話が聞こえてくる。
楽しそうだな。せっかっくこの世界に来たんだしも冒険者になって魔物と戦って見たいな。仲間と一緒に狩をするなんて考えるだけでワクワクする。
「ザックさん僕に剣を教えてください」
気がついたらザックさんに声をかけていた。
「冒険者になりたいのか?」
ザックさんは眉間を寄せ真剣な顔つきで問い返す。僕は気持ちを見透かされたことに少し動揺してしまうが、はっきりと返事を返す。
「はい」
「命の危険があるかもしれないんだぞ」
声のトーンが変わり厳しい顔つきで見つめられる。元々強面だが更におっかない表情になったので体が硬直しそうになる。
ザックさんは子供を失っているから僕に危険なことをさせたくないと思っているだろう。だけど!
「僕は冒険したいんです」
体全体に力を入れザックさんに負けじと声を高く張り上げ思いを伝える。るとザックさんは考え込むように俯いた。
やっぱりダメだったのかな…過去に子供を失ってるから許してはくれないかな。
未だに沈黙を続けるザックさんを見ていると不安になる。少し時間が経ち吹っ切れた顔つきをしたザックさんは口を開いた。
「分かった。明日から稽古をつけてやる」
「本当ですか!お願いします」
僕は深々と頭を下げた。叫びそうになったのを我慢するほどの嬉しさが込み上げて来た。
帰り際のザックさん表情は心なしか嬉しそうだった。
部屋に戻るとザックさんから風呂がこの宿にあると聞いたので先ほど買った服を持ち探しに行く。
確かザックさんの説明だと…こっちのはず。奥に進んで行くと「湯」と書かれた垂れ幕がかかっていた。
「ふう〜あったかい」
僕は広々とした風呂につかり体をほぐして疲れを癒す。
風呂と言うよりも温泉に近い広さだよな。
気持ちよく浸かっているとザックさんが入ってくる。ザックさんの鍛えられた体には沢山の傷跡が見え冒険者がどんなに危険なのかを感じさせられた。
3日か2日に一話ずつ上げます。書くの難しいので遅くてすいません。