助けてくれる理由
修正 2022.12.03〜 2023.09 完了
後日誤字など直していくと思います
食事を済ませた後、僕はザックさんの部屋に戻っていた。部屋にある木椅子に座っていると少し眠気が過る。
この世界の食事が思った以上に美味しくて食べ過ぎてしまったせいだと思う。ザックさんの分まで貰ってしまったしな。
それにしても、ザックさんは快く奢ってくれたけど、流石にここまで至れり尽くせりだと申し訳なく思ってしまう。流石にごはん代くらいは自分で払うことにしよう。神様に転移する前にこの世界のお金を貰っておいたからね。ご飯代くらいは払えるはずだ。
「ザックさん流石に申し訳ないのでご飯の代金支払いますよ」
僕はそう言いポケットに手を入れる。確か受け取ってポケットに入れたはずなんだけど……。ない。いくら探しても見つからない。
……まさか、落下するときに落としてしまった?絶対にそうだ。あの風圧でポケットの中身の物が無事なはずがない。
ど、どうしよう。堂々と言っちゃったのにお金がないですなんて恥ずかしすぎる。
「ん、どうしたんだルーク?」
落ち着きがないのが伝わったのか、ザックさんが不思議そうに顔を向けてくる。ああ、もうこれ以上醜態を晒すより正直に言った方がいいな。
「え、いや、その……えーと。すいません。お金落としちゃったみたいで。……すいません」
「ああ、気にするな。あったとしても受け取る気はなかったからな」
ザックさんはそう言いにこやかに笑った。
うう、ちゃんと確認してから公言すればよかった。ああ、もう!揺れ動く感情を抑える為僕は大きく呼吸をする。
すぅ~~~はぁーーー
よし。これからはしっかりと確認をしてからにしよう。悲観的より前向きな考えの方が、いいからね。
心を落ち着かせた後、僕は現状の状況について考える。
今の僕は一文無しの状態だ。このままだと僕は食べるのにも困っていくだろう。どうにかこの状況を打破しないと。
冒険者になって魔物と戦ってみたいという思いがあったけど、今はそれどころではない。まずはどうにかしてお金を稼がないと。何をするにしても金が必要だからね。
子供でも雇ってくれる場所はあるのかな?
「あの、ザックさん。子供でも出来る仕事あったりしますか?僕、一文無でして……」
「あるにはあるが、あまりお勧めはしないな。いい様に使われるだけだからな」
「そうですか……」
ザックさんの言い方からすると、あまり良い待遇ではないようだ。例えば労働環境が酷くて賃金が安いとかかな。
「なあ、ルークは冒険者になる為にこの街に来たんだよな?」
「はい、そうですけど」
「なら、ルークが冒険者として一人で稼げるようになるまでこの部屋に住んでも良いぞ。ベットも一つ空いてる事だしな。もちろん食事付きだ。それに俺はこれでも冒険者としての活動をしてるから色々教えれると思う。どうだ?」
「え?」
えーっと。つまり、ザックさんが僕が稼げるようになるまで支援してくれるってこと?何それ超好待遇じゃないですか。
まさか、油断している時に奴隷として売られるとかはないよね?
いや、ザックさんがそんな事するはずないか。ザックさんが悪人なら僕が気絶している間にどうにかしていただろう。
にしても、なんでここまで面倒を見てくれるんだろう?少し考えてみるが答えは分からない。埒が明かないので僕は直接聞くことにした。
「ザックさん。何で見ず知らずの僕にそこまでしてくれるんですか?」
「……そうだな。息子と同じくらいの年頃の子供だったから、つい面影を感じてしまっているんだと思う」
ザックさんは壊れた装備が置かれている棚を悲しげに見つめている。
ザックさんの視線に釣られ装備をよく見てみると、防具の胸元部分には大きな穴が開いていた。人間が付けれる代物ではない。恐らく魔物と呼ばれる存在にやられたのだろう。
防具にはそれ以外にも数々の傷跡が刻み込まれている。その傷後は、装備者の命が散ったのではないかと思わされるものだった。
ザックさんの言い方からしたらこの装備を着けていたのは息子さんだったのだろう。
「すまないな、少し話過ぎた。それで、どうする?ルーク。断っても一文無しのルークをいきなり街に放り捨てるような真似はしない。当分の間暮らしていけるだけの金は渡すから安心してくれ」
ザックさんの提案を断る理由なんてない。ザックさんの瞳を見ながら僕は返答する。
「ザックさん。僕はザックさんの元で学びたいと思います。よろしくお願いします」
「そうか。改めてよろしくなルーク」
こうして僕はザックさんの元でお世話になることとなった。
「よし、ルーク買い物に行くか!ルークの日常品を買わないでいけないからな」
「この町をまだ見たことがないので楽しみです」
「ああ、そうだったな。ルークは町に入るとき気を失ってたから覚えてないんだよな」
そうなのだ。僕は気が付くとベットに寝かされていたので、まだ町の風景を見たことがないのだ。気持ちの浮き立つのを感じながら僕は外へと繰り出した。
外に出て最初に目に入ったのはレンガ造りの家々が立ち並ぶ光景だった。テレビで見たことがあるヨーロッパの町並みみたいな感じだ。その光景を見てここが日本ではなく異世界に来たのだと改めて実感する。
ザックさんの話によるとこの町はカイラス王国の南西方面にあるヘーベスと呼ばれる町だそうだ。僕が国の名前を知らないことにザックさんは驚いていた。これからは座学も教えて貰う事になりそうだ。
石畳で舗装された道を歩いていると、人間以外の種族とすれ違う。頭から出た二本の耳、体全体を覆う暖かそうな毛、アニメやゲームなどで出てくる獣人という生き物だろうか?
偶に耳が動くのを見て少し触ってみたいと思おう気持ちが過ったが、心の中だけに留めた。
「ザックさんこの町には人間以外の種族がいるんですね。僕が住んでた町は人間しかいなかったので初めて見ました」
「ああ、まあこの国は種族差別が余りないから他の種族が来やすいんだろう。特に獣人族が多いな。ドワーフは酒が旨いサケットと呼ばれる街に多くいるな。近くに鉱山もあるから鍛冶のし甲斐があるんだろう。エルフは自由気ままな性格だから色んな所にいるな。この町にもいたと思うからいつかは見れるだろう」
「そうなんですね。会えることを楽しみにしてます」
「ああ。でも会ったからいって余りジロジロと見るんじゃないぞ。相手に取ってはいい気分じゃないからな」
ザックさんの言葉にハッとさせられる。先ほどまで僕は獣人をジロジロと見ていたのだ。
「すいません。気を付けます」
「ああ。そうしてくれ。揉め事は起こしたくないからな」
それから僕達を町を歩きながら日用品に必要な物を買いそろえて行った。主に衣服や履物などのだ。
僕の服装は日本の物で珍しかったせいか店主に売ってくれとせがまれたが、何とか断った。日本での品は衣服以外ないのだから。
確かにこの世界の物じゃないから見る人が見れば目立つかと思い僕は、店にある脱衣所で買ったばかりの薄地の布服とズボンに着替える。靴もスニーカーから革靴へと履き替えた。衣服は少し質感が悪いけどあまり気にはならないが、靴は硬くて履き慣れるのには時間が掛かりそうだ。
衣服などを買いそろえた後、ザックさんに必要なものはあるかと問われたので僕は歯ブラシはないですかと尋ねたのだけど、なんのことだと言われてしまった。
どうやらこの世界には歯を磨く習慣がないらしい。それではどうするのかと思っていたら、どうやら身体を奇麗にする魔法があるのだとか。魔法って便利すぎるな。簡単な魔法という事なので、宿に帰ってから教えて貰う事にした。
気がつくと一ヶ月が経過していた‥‥遅くなって申し訳ない。大まかなプロット作らないと難しい。