始まりは空から
修正中 20221122〜20221201 完了
異世界に転移して最初に目に入ったのは広大な青い空だった。手を伸ばせば届きそうな距離にある青空に違和感を覚えた瞬間、僕の体は重力に引っ張られ落下し始めた。
え、え、え、ちょっと待って。何で空からスタートなの!
恐る恐る下を見ると、街らしきものが見える。確かに人目がつかない街に近い場所に転移して欲しいとお願いしたけどさ……
「流石にこれはないよ神様!」
悲痛な叫びを上げるが、現状が変わることは無い。
このまま行けば確実に落下死するだろう。 混乱する頭でこの状況を打破するために思考を巡らせるが、妙案は思いつかない。
ああ、まだ始まったばかりなのにもう僕の人生は終わってしまうのか。
死を覚悟しているとある違和感に気づく。かなりの速度で落下しているはずなのに、身体に強く吹き付ける風は冷たくなく、呼吸も苦しくない。 雲に手が届きそうな高度なのに普通に喋る事も出来る。
もしかして、神様が与えてくれた力の効果なのかもしれない。確か普通の人よりは身体能力を高くしてくれてるんだっけ……。
それなら、地面に落下しても死ないかもしれない可能性がある。現実的に考えると有り得ないけど、もうそれを信じるしかない。
近くに街があるから生きてたら何とかなるはずだ。 僕は神様を信じながらその瞬間を待った。
それから少しして僕は地面へと落下した。
激しい衝撃を全身に感じた後、強烈な痛みに襲われる。意識が薄れていく中で神様の謝る声が聞こえた気がした。
ーー
目を覚ますと僕は見知らぬ部屋のベットに寝ていた。どうやら僕は死んでなかったみたいだ。
「にしてもここは何処だろう?」
辺りを見渡すため体を起こそうとすると痛みが走る。そのせいで起こしかけていた体をベットに打ち付け、その反動でさらに全身に痛みが走った。
「痛っ~~」
全身の痛みに耐えられず思わず声が漏れる。死んでないのはいいけど全身の筋肉痛になってるかのようで体が動かせない。かろうじて動かせる首で辺りを見渡してみる。
部屋の真ん中に小さなテーブルと椅子があり、部屋の端にある棚には真っ二つに折れた剣と深い傷が入った防具が置かれていた。到底使えそうにない物だけど、何故か奇麗に手入れされている。不思議に思い見つめていると、部屋の扉が開かれた。
扉から入って来たのは強面をした男だった。何処かの用心棒と言わても驚きはしないゴツイ体格をしている。
少し怖いと思ってしまったのは仕方の無い事だと思う。
「お、目覚めたのか。身体は大丈夫なのか?」
「大きな怪我はないんですけど、全身が筋肉痛で体を動かせないです」
「これを飲むと痛みが引くと思うぞ」
男はそう言い何処から取り出したのか、1本の瓶を差し出してきた。その瓶の中には青色の液体が入っている。
これはもしかして……毒?!ってそんなわけないよね。多分これはゲームなどでよく見かける回復薬だと思う。
そう思い聞いてみると、どうやら正解だったみたいでポーションと呼ばれる回復アイテムだった。
「ありがとうございます」
お礼を言い受け取ると、筋肉痛を我慢しながら僕は瓶の蓋を開け恐る恐る口へと入れる。粉薬のような苦さが舌を襲い反射的に戻してしまいそうになるが、何とか堪え飲み込んだ。
飲み込んだ後も苦味が口に残っている。これだけ苦いんだ効果がある筈だ。そう思い体を起こしてみると、先ほどまであった痛みはそこになかった。
「どうだ効果はあったか?」
「はい。もう何処も痛くないです」
「そうか、それは良かった」
強面の男は僕の答えに安堵の息を漏らした。
最初は怖い人思ってたけど、どうやらただの優しい人だったみたいだ。
「助けていただいた上にポーションまで。本当にありがとうございました」
「気にするな俺が勝手にした事だからな。それよりまだ紹介をしてなかったな。俺の名はザックこの街を拠点にしている冒険者だ」
「僕の名前はルークです。えっと……」
そうだった僕はこの世界に来たばかりなんだ。一般的な知識も知らないから何て説明すれば良いか分からない。いっそのこと別の世界から来たんですと言えば楽なのだけど、そんな事を言ったところでおかしな人として認定されるだけだろう。
そう考えた僕は咄嗟に考えた言い訳を述べる。
「田舎の村から冒険者を目指しにやって来たんです」
「装備もなしにか?」
う、たしかにザックさんの言う通りだ。装備なしにこの街に来るのは少しおかしいよね。この街の付近にある森は魔物が出ると神様も言ってたしなぁ。
装備は自分で選んで買いたいからって、装備を貰わなかったのは失敗だったな。後悔しながら今考えた言い訳を口にする。
「あ、えっと魔物に襲われてその、何とか逃げ出せたんですけど、装備は使い物にならなくなったので全て置いて来ちゃって……。何とか街まで歩こうと思ったんですけど、途中で空腹で倒れてしまったんです」
冒険者が装備を置いてくるなんて酷い言い訳だよ。こんな話で信じて貰えるわけないよな。そう思いながらザックさんの顔を伺ってみると、少し悲しそうにしていた。
...…あれ?
「そうなのか。本当に辛かったんだな。よく頑張ったなルーク」
「えっ……」
今にも泣きそうな顔のザックさんに僕は驚き、声を漏らてしまう。
いやいや、ちょっと待って何でそんなに悲しんでくれるの?結構滅茶苦茶な言い訳だったんだけどな。罪悪感で心が痛い。
「だ、大丈夫ですよ。生きてるんですから」
「ルークは強いな。……すまないな勝手に悲観的になっていた」
「いえ、そこまで僕のこと思ってくれるなんて……嬉しいです」
僕の何気ない返答はザックさんの心を動かしたのか先ほどよりも瞳が潤んでいた。
しんみりとした雰囲気が漂い何を言えば良いのか分からず戸惑っていると、その空気を壊すように僕の腹が音を立てた。
「……」
……恥ずかしすぎる。何でこのタイミングでお腹が鳴るんだよ!確かに何も食べてないけどさ!恥ずかしすぎてザックさんの顔が見れない。今の自分の顔は赤く染まっているのだろう。
恥ずかしさの余り僕が俯いていると、ザックさんの笑い声が響く。
「あっはははははっ……。そうだよな、腹が減ってるよな。よし、ルーク飯を食いに行くぞ!」
「え、助けられた上にご飯もご馳走になるのは……」
「気にするな俺が勝手にしている事だからな」
にこやかに笑うザックさんに促され、僕は部屋を出た。部屋を出ると、木造の廊下が続いており同じような扉がいくつも見える。
ここは宿みたいな場所なのかな?
そう思いなのがらザックさんの後を追い階段を降りると先ほどの部屋にある扉とは違い大きな扉がそこにはあった。
ザックさんが扉を少し開くとその隙間から喧騒が聞こえてくる。この先に何があるだろうか?興味を惹かれながら開かれていく扉を見つめた。
直ぐに答えは見えて来る。
完全に開かれた扉の先には、丸テーブルを中心にして食事を楽しむ人達の光景が広がっていた。木製のジョッキを手に持ち談笑する者達は腰に剣などの武器を携帯し、銀製の防具で身を包んでいる。いかにも冒険者ですと言った格好だ。
よくあるファンタジー世界の冒険者達が集まる酒場見たいな所だね。いや、酒場なのかな?少しお酒臭いし顔を赤くしている人もいるし……うん、ここはどうやら酒場みたいだ。
一人で納得していると、ザックさんがカウンター席に座った。僕もザックさんに隣に座る。
「ルーク少し酒臭いと思うが料理は美味いから我慢してくれ。本来は夜に冒険者達が集まるんだが、どうやら今日は昼間から飲んでくれてるらしい」
「少し臭いですけど、我慢できない臭いじゃないですから大丈夫です。料理を楽しみにしてます」
ザックさんが給仕に注文してから数分経つと、料理が運ばれて来た。
僕の目の前に並ぶのは何かの肉のステーキと緑の葉っぱみたいな野菜が載った皿と、バスケットに入れられた茶色のパンだ。
確かザックさんが注文してた時オークの何と聞こえた気がする。もしかしてこの肉オークの肉なのかな?
オークと言ったら憎たらしい顔付きで大きな図体を持つような魔物だろうと想像する。とても美味しいとは思えないが、ザックさんは料理は美味しいと言ってたから大丈夫なはずだ。
僕は皿の横に置かれたホークとナイフを手に持ち、肉を一口大に切っていく。固くて切れないだろうと思っていた肉は、思ったより柔らかく期待が高まっていく。恐る恐る一切れを口の中に入れた。
口の中に入れた途端、肉汁が広がりお肉が溶けていく。余りの美味しさに僕は夢中になって肉を食べた。
気がつくと、オークの肉を平らげていた。
あ、どうしようパンだけ残ってしまった。僕が悩んでいると、ザックさんが僕の皿に切り分けた肉を置いてくれる。
「え、ザックさん?」
「腹が減っているみたいだからな。俺はまだ早時間だからそこまで食えないんだ。遠慮せず食べてくれ」
「ありがとうございます」
僕は追加された肉をパンと一緒に食べる。
お肉単体でも美味しかったがパンと食べることで新しい味が生まれる。ふんわりと柔らかい焼きたてのパンが、オーク肉の味を更に引き立ててくれる。
美味しい、美味しいのだけど……やっぱりお肉は白ご飯と食べたい。この肉とご飯を一緒に食べると更に美味しいんだろうなと、どうしても思ってしまう。日本で食べてた白米が恋しいな。
この世界にもあるのかな?今度、ザックさんに聞いてみよう。
また後で少し文書を直していくと思います。2022.12.01