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戯曲 たぬきつね物語  作者: 大橋むつお
8/9

8『若者が去って』


連載戯曲 たぬきつね物語・8『若者が去って』


大橋むつお


※ 本作は自由に上演していただいて構いません、詳細は最後に記しておきます



時   ある日ある時

所   動物の国の森のなか

人物  たぬき  外見は十六才くらいの少年  

    きつね  外見は十六才くらいの少女 

    ライオン 中年の高校の先生

    ねこまた 中年の小粋な女医





ねこまた: 行っちゃった……


ライオン: いいねえ……


ねこまた: 若いってことはね……やり直しがきく。


ライオン: 君のことだよ。


ねこまた: あたし!?


ライオン: 医者はいいよ。治れば感謝されるし、失敗すれば手遅れだって言えばすむ。


ねこまた: なによ、それ?


ライオン: じゃ、この旅立ちに責任が持てるのかい?


ねこまた: 治すのは、あの子たちの力。医者は、その手伝いをするだけ。


ライオン: なるほど。


ねこまた: もとはといえば、あんたの御立派な指導が原因でしょうが!


ライオン: おれの責任か?


ねこまた: そうよ。


ライオン: どこが!?


ねこまた: 「互いの身になって」じゃなく、「きつねとはどうあるべきか、たぬきとはどうあるべきか」そこんとこをきちんと教えなっくっちゃいけないのよ。


ライオン: そんなこと教えたら、マスコミから袋だたきの目にあう。


ねこまた: 組合もだろ?


ライオン: 森の動物教組なんてどうってことないけど、このごろの教師なんて左にならえだからな。


ねこまた: 右へならえじゃないの?


ライオン: 森の広場で集会やると正面が南なんだ。


ねこまた: それが?


ライオン: 勤務時間内に組合活動はできないから、集会とかは夕方になるんだ。で、そこで右にならって並んじゃうと西日がきつくってさ。で、六十年以降は「左にならえ!」って、ことになってる。


ねこまた: うらやましいもんね。今度のことも……


ライオン: うらやましいと思ってんの、おれのこと?


ねこまた: そーよ。世のため人のため子供のためって、適当にやってりゃ、身分は安定、退職金はガッポリ。世間じゃそう思ってるわよ。そこいきゃ、今日びの医者は客商売みたいなもんだから……


ライオン: 教師だってね、ちょっと本気でやれば、やれセクハラだ、暴力教師だって言われるし、モンスターピアレントの相手はしなくちゃならないし……ストレス多いんだぜ。オレも肝臓いためちゃってよ……長生きはできねえなあ……


ねこまた: だめだめ、そんな弱ぶって見せても。あんたのことはお見通し……


ライオン: こっちこそ……あんたの言葉の裏の裏まで……


ねこまた: 古いつきあいだものね……


ライオン: お互い……



     間




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