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月夜譚 【No.1~No.100】

雨の中 【月夜譚No.9】

作者: 夏月七葉

 頬を伝う雨は、存外冷たいものだった。このままでは身体を冷やしてしまうと判っていながら、男はその場に立ち竦んだまま動くことができなかった。

 先刻彼女の口から放たれた言葉が耳から離れず、無為に頭の中をぐるぐると回り続ける。それが酷く気持ち悪いのに、どうしてか吐き気は催さなかった。

 どうしてこんなことになってしまったのか、何時何処で何を間違えたのか、いくら考えても答えは出てこない。きっと何分、何時間、何年考えても答えには辿り着けないのだろう。たとえ答えに行き着いたところで、失ったものはもう戻ってはこない。

 雨粒が皮膚から入り込んで、身の内に水が溜まっていくようだ。そのまま雨水と一体になって、地面に広がる水溜りに溶けてしまえば良いのに。

 男はようやっと首を擡げ、雨降る雲を虚ろに見上げた。


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― 新着の感想 ―
[一言]  男の見上げた空が、きっと晴れ渡ることを……、陽光が、男の目に、色を与えてくれることを祈ります。
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