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運命の経済学 Economics of Fate  作者: キズナ
第1章 自分と他人 善意と偽善
6/38

3 ケーキの駆け引き?

第1章もこの話で終わりです。

この話では最終通牒ゲームを元に話が進みます。

 コンコン


 私の部屋がノックされ母が入ってきた。

 「皆さん、息子がお世話になります。飲み物の追加とケーキ買ってきたから良かったら食べてね。」

 「ありがとうございます。」

 会長が綺麗なお辞儀をし母にお礼を言う。他の人も会長の後に続きお礼を言う。

 「わー!このケーキって駅前のドゥアンシエっていうケーキ屋さんのやつですよね!?この苺がたくさん乗ってるケーキチラシで見たことある!」

 響さんが異常に興奮している。

 「ひーちゃん落ち着いて。大丈夫、食べれるから。」

 栞と高橋先輩が響さんを宥めている。

 「取り乱しました……。」

 今度は縮こまってしまった。



 「じゃあこのケーキを7等分しましょうか。」

 「お兄ちゃん。8等分してよね。」

 横から8等分の指示があり私は8等分しようとした。ん?…

 「っておい!絵美。お前いつからここに?」

 「さっきだよ?お母さんの後ろに居たじゃん。それにー7等分って難しくない?」

 確かに7等分するとなるとかなり難しい。

 「だから私が入って8等分すれば綺麗に切れるでしょ?フフフ。」

 「いや、でもお前な・・・」

 「まぁいいではないか。えーっと絵美君と言うのか。私は生徒会長をしている高山日華夏だ。よろしく。」

 「橘絵美です。中学3年でーす!来年はお兄ちゃん達と同じ高校に入る予定なのでよろしくお願いしまーす。」

 「勉強は順調なの?」

 栞が絵美に話しかける。

 「栞ちゃんに教えてもらったし期末は学年1位だったよ!」

 「流石絵美ちゃんだな。これなら俺達の後輩になるのも時間の問題だな。」

 「祐二兄ちゃんがあの進学校に行ってる時点で奇跡なんだけどね。」

 「おいおい、俺の評価ってそんな低かったのか?」

 祐二とも良好のようだ。

 「私は高橋裕美。お兄さんの先輩で同じ生徒会の役員よ。」

 「裕美お姉さん、よろしくお願いします。ところで、おっぱい大きいですね。何食べたらそんなに大きくなるんですか?」

 マジマジと胸を凝視する絵美。

 「いてっ。何するのよお兄ちゃん!」

 私は流石に止めないといけないと思い頭に軽くチョップを入れる。

 「その辺でやめておけ。セクハラだぞ。」

 「だってうらやましい!」

 「わがままかよ。」

 私たち兄妹の見苦しい会話を聞いた先輩はクスっと笑った。

 「絵美ちゃんはまだこれからが成長期だから気にせず好き嫌いせずご飯一杯食べたら大丈夫よ。」

 高橋先輩から母性のようなものを感じた。これが大人の魅力か!?



 「あ、あの。私高山響って言います。よ、よろしくお願いします。」

 「あ、よろしくです。」

 かなりアッサリしてる――!?

 「わ、私嫌われてる…?」

 ウルウルと目に涙を浮かべ今にも泣き出しそうな響さん。そしてそれをあやす栞。

 「絵美ちゃん、その辺にしときな。」

 「はーい。響さんごめんなさいね!仲良くしてくださいね?」

 「は、はい!よろしくお願いします!!」

 響さんの表情がパァッと明るくなった。



 「じゃあ改めて8等分ですね。」



 私がナイフでケーキを4等分した所で会長から大きな声が上がった。

 「ちょっと待った!」

 突然の大きな声に私はびくっとしてしまい動きが止まった。

 「どうしたんですか?そんな大きな声出されると危ないんですが……。」

 「すまない。丁度いい素材が出来たと思ってな。」

 「いい素材?」

 「あぁ、非常に面白い……ゲームだ!」

 ゲーム。言葉の意味としては遊戯だが、今日のこの流れで行うゲームってなんだろうか。



 「丁度8人居るからな。2人1組になってくれ。橘君は私とペアだ。」

 「え!?会長とですか?」

 「当然だ。君は副会長で私は会長なのだからな。」

 周りの皆も当たり前だろと私の顔を見てくる。仲のいい高橋先輩ですがそんな顔をして私を見ていた。

 「皆酷いですよ。厄介者を押し付けて。」

 「厄介者とは侵害だな。こんな超絶美女とペアを組めるんだぞ?もっと胸を張れ!」

 「はい……。」

 私はやや覇気のない声で応答した。



 「仕方ない。君にはAと言う役割をやるから元気を出せ。他の者はじゃんけんをして勝った者がA、負けた者がBの役割をするんだ。」

 「AとかBとかもう意味わかんない…。」

 私はボソッと愚痴を零した。

 「まぁそんなに落ち込むな。実はAの役割は美味しい役だぞ?」

 会長から甘い言葉が甘い匂いと共に私に纏わり付く。



 「さて、皆じゃんけんは終わったか?」

 「終わりました。」

 「こっちも終わったわ。」

 「終わりました!」

 組合せは次の通りだ。

 A高橋先輩 B祐二

 A栞    B響さん

 A絵美   B高峰

 


 あれ?そういえば高峰って絵美と面識があるのかな?ペア組むぐらいだけど。



 「師匠。偶然が重なってますが、今日は負けませんよ?」

 「絵美君、君にはまだ師匠越えは出来ないのだよ。フフフ。」

 なんか師弟関係前提で話してる……。



 「さて、じゃあここからゲームだ。Aはこの4等分されたケーキを1つずつ手に持ってくれ。」

 会長の指示通り私たちAは4等分されたケーキを皿に載せそれを手に持った。



 「じゃあAの人はBの人に対してどういう分配をするか宣言してくれ。」

 分配を宣言できる権利をAは持っている…だと…!?



 「じゃあ私が100%で会長が0%…。」

 私が全てを言い切る前に会長が追加の指示を出した。



 「Bの人はAが提示してきた内容でOKかどうか判断してくれ」

 Aはあくまで提案で判断するのはBって事か。

 「橘君。私はもちろんさっきの内容を許可する事は出来ない。皆はどうだった?」



 高橋先輩は50%50%、栞は51%49%、絵美は私と同じ100%0%。兄妹ってこんなにも似るものなのか?



 「なるほど。いい回答だ。なら追加事項だ。Bの応答で許可された場合のみ2人ともその割合を食べる事ができ、Bが拒否した場合どちらも食べる事ができないとしたらどうだ?」



 「え?つまり拒否された時点でAも食べられないっていう心理戦ですか?」

 「心理戦ではないが、実際はそうなるだろうな。」

 「じゃあ会長、私は40%で会長が60%にします!」

 「ほぅ。面白い回答だ。いいだろうその提案は許可しよう。他の者はどうだ?」

 


 高橋先輩と絵美は先程と同じ。栞は50%50%へ修正した。

そしてどの組合せもBがそれを許可した。

 「皆その割合を提案した根拠を教えてもらいたい。」

 


 「私は前の時もそうだったけど、美味しいものは共有したいなって思ったからかな?」

 高橋先輩っぽいな。平和主義。

 「私も同じ感じですね。ひーちゃんはこのケーキ食べたそうにしてるし、そもそも49%って切り分けづらいですし。」

 栞も響さんを思ってこそか。

 「私はこの変態なら0%の方が喜ぶと知っていたからです。」

 何てドストレートなんだ。てか一体どんな師弟関係だよ。私はそんな関係聞いてないよ?



 「最後に橘君。君はなぜ私の割合を大きくしたんだ?」

 「半々でも良かったんですが、ここで60%にする事で何か恩が生まれないかと思ったからでしょうか?」

 「ほう、君は私に恩が売りたかったのだな?してその恩をどのように返してもらいたいんだ?」

 意外な返答だ。何も考えていないぞ。

 


 「すみません、そこまでは考えてなかったです。」

 「そんな胸を見ながら心にもないことを言わないでくれ。どうせこの胸が気になるんだろう? 」

 「ち・が・い・ま・す!!胸なんて見てませんよ。」

 フフッと会長は少し笑った。



 「冗談はさておき、このゲームは本来ならばお金でやる実験ゲームなんだが、今回はケーキで代用した。それがこの結果を生んだのかもしれないな。少し前に言ったが、経済学では自分の利を最大限にする事が正しいとされている。つまり…。」

 


 「つまり?」

 会長がもったいぶっている。

 「Aは少なくとも1%程度相手に提示すればいいって事になる。流石に0だと選択の余地もないからな。」

 「でもBが断ればそれで終わりですよね?」

 「そう、終わりだ。でもそれはAだけじゃなくてBも同じなんだ。つまりBが少しでもケーキを食べたい場合は1%でも提示された数字を許可しない限り食べられないんだ。つまり0以外ならAは必ずケーキを食べられたはずなんだ。これが経済学の考え方だ。」

 「でも結果は全然違いましたね。」

 栞が不思議そうに問いかけた。

 「そこが面白いところなんだ。さっき話をした利己性について考えて欲しい。特に橘君は正にそれだった。私に恩を売ろうとしたんだからな。」

 「じゃあこれも利己性が働いているって事ですね。確かに私もひーちゃんと半々にして仲良くしていたいって思ってましたけど。」

 「そうだ。1組を除いてな。アレは何て言うか相手の喜ぶ姿が分かっているから例外だ。」

 「会長!私はそんなに変態ではないですよ!!」

 高峰が突然出てきた。

 「お前は黙ってろ!ゴミクズやろうが!!」

 絵美の右足が高峰の左頬に的中する。

 なんて笑顔で蹴られてるんだよ…。



 「まぁこんな例外のゴミクズは置いておいて、大分行動経済学について理解してきたみたいだな。さぁゲームは終わりだ。きちんと8等分して食べよう。」

 


 私たちは噂のケーキを食べて部活動を無事終えた。


 一気に色んな事を体験できた濃厚な1日だった。

 


 時間は夕方になり、今日の部活動を終了する事になった。

 「橘君、明日は学校に来るんだぞ?これは会長命令だ。」

 「わかりました。善処します。」

 「大丈夫でーす!私が叩き起こして登校させます!」

 絵美がニコニコと手を上げた。



 「じゃあ橘君、絵美君また明日。」

 ん?絵美君また明日?あれ?部活動メンバーに絵美が入ってる?



 「大和、絵美ちゃんまた明日学校でな!」

 おいおい、祐二まで…。絵美明日学校行っちゃうじゃん。



 「絵美ちゃん学校でね。大和君ちゃんと連れてきてね。」

 栞まで…。これは明日学校へ行く決定だな。強制イベントかよ。



 それぞれ他のメンバーとも挨拶をし私たちは家へ戻った。

 そして夜が更けていく…。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

これにて第1章が終わりました。第2章もまた読んでいただけると幸いです。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回の最新話更新は午後10時を予定しています。

よければブックマーク、感想等お待ちしています。

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