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運命の経済学 Economics of Fate  作者: キズナ
第3章 損失回避とバイアス
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1 部費が足りない!

新章に入りました。この章から解決型のストーリーとなります。

 「さて、この状況は一体どういうことか説明できるものはいるか・・・?」

 立派な椅子に腰掛けた男が真妙な面持ちで話しかける。男は頭をぼりぼりと搔きむしり、クチャクチャとガムを噛んでいる。

 「ここには今の状態を説明できるものはいないというのだな?一体この様は何なんだ。パソコン研究会めっ!」

 男は急に立ち上がりドスドス大きな足音をたて怒りを露にしながら部屋を出ようとした。



 「部長、あちらへ行って何になるのですか?ここは潔く部費増額の申請をしましょう。」

 「お前にはプライドがないのか?俺達はあいつらにはめられたんだぞ?部費の増額なんてものは抗議してからでも十分なんだ!そこをどけ!」

 「部長!すみません僕が無知だったために・・・!でもダメなんです!ここで何か事を起こせばあいつらの思う壺なんです!お願いです、落ち着いてください!」

 2人の男が憤怒している男を必死に説得している。


 「・・・・・・わかった。とりあえず落ち着こう。すまなかったな広瀬、赤木。」

 「部長・・・じゃあなぜこの事態が起こったかお互いの情報を出し合いながら考察していきましょう?」

 男達は3人でまず情報を共有する事にした。


 「まず始まりはなんだ?誰か分からないか?」

 


◇◇

 


 「もう2月だよ・・・。そういえばあのゲームいつ完成だっけ?」

 「たしか、今パソコン研究会の連中にデバックを手伝ってもらってますけどもうちょっとですね。3月末にあるゲームコミュには間に合うと思いますよ。楽しみですね三石部長。」

 「そうか・・・。なら大丈夫だな。あいつらは気に食わないが出来る奴らばかりだからな。俺達の集大成見せてやろうぜ、赤木。」


 冬の寒い日、ゲーム制作部では大きなイベントに向け大作とも言えるオリジナルゲーム制作に勤しんでいた。

 

 コンコン。

 部室のドアをノックする音がした。

 「邪魔するで。よう、三石。お前はのんきでええな。」

 「長船ながふ・・・・・・。何しに来たんだ?デバックは終わったのか?」

 「アホいえ!まだまだ掛かるわ!ワシらの人数じゃ後半月は掛かるで。」

 「半月!?それはダメだ!宣伝もしないといけないから2月中には終わらせないと!」

 「そないな事言っても無理なもんは無理や!」

 「しかし・・・。バグ一覧を早く出してもらわないとこちらも修正が出来ないんだぞ?」

 「わかってるわ。せやから今日はちょいとばかし話をしにきたんや。」

 「話?なんだ?そんな余裕はあんまりないぞ?」

 「まぁ落ち着け。これは提案や。こっちもプログラムぐらい出来る奴はおる。でもこんな人数でバグの発見と修正を重ねても時間の無駄や。お互い共同作業っちゅうのはどうや?」

 「デバックを分担するって事か?お断りだ!パソ研はバグ発見だけお願いしていただろう?他の奴にプログラムをいじられるのは嫌だ。」

 三石は即決で提案を突き放した。



 「部長、いいんですか?長船先輩のいう事が本当なら間に合いませんよ?ここは乗った方が・・・。」

 「せやで?赤木の言うとおりや。三石、お前何あせってんのや?ちゃんとした作品を作って世の中に認められたいんとちゃうんか?」

 「ぐっ・・・分かった。」

 「なら交渉成立や。よしお前ら、ゲー作のパソコンから元データコピーするんや。」

 「じゃあ今出ているデバック一覧をこっちにもくれ。」

 「せやな。ほなこれや。」

 長船はメモリースティックを差し出し、データを取り込む用に指示した。


 その後パソコン研究部は嵐の後のようにさっと帰ってしまった。



◇◇



 「そうです。あのメモリースティックに入っていたデータ!アレがウイルスに感染していたんですよ。あれで俺らの元データは・・・。」



◇◇



 「ええええええええ、ちょ!え?まって!!!」

 「どうした広瀬!」

 「部長!このデータウイルスに汚染されています!しかも高度なウイルスプログラムが組まれていて直ぐに対応できません!!!」

 「何だと!?そのデータってパソ研が持ってきたやつじゃないのか?」

 「くっ!・・・・・・・・・・・・・・・。」

 広瀬はしばらくウイルスプログラム削除を行っていたが、自分の手に負えないプログラムだったためなすすべなく元データは感染し、破損データとなってしまった。


 「なんてこった・・・。くっ!俺抗議に言ってきます!!!」

 広瀬は部室を飛び出しパソ研へ抗議に行った。


 30分後、ジリリと火災報知機の音が校内に鳴り響く。


 「なんだ!?火事か?」

 三石達は急いで部室を出て非常階段の方へと走った。

 

 「おい、三石!広瀬が!」

 同じクラスの藤田が急いで声を掛けてきた。



ピンポンパンポン

『パソコン研究会部長の長船とゲーム制作部部長の三石!2人とも至急職員室迄来い!』

 ただそれだけアナウンスされ放送は終わった。



 そして再びアナウンスが鳴る。

『先程の音ですが、火災報知機の誤作動でしたので、生徒の皆さんは落ち着いて安心してください。先生方が校内の全教室等を確認しますので確認が終了するまで近くの部屋にて待機してください。』



 そして放送が終わった。


 「三石!お前は職員室へ行け。赤木も一緒に行くんだ。」

 声を掛けてきたのは2年生統括教諭の竹部だ。


 三石と赤木は職員室へ行くとそこには長船と広瀬が居た。



 「おう、来たか。お前達は当事者だからな。少しお前達のゲーム制作の件について話を聞かせてくれ。」

 俺達は先生に洗いざらい事の顛末を話した。

 「それで広瀬と長船の口論になったんだな?」

 「でも先生、証拠がないんやで?完全な言いがかりやん。ワシらは昨日まではこのメモリースティックにデータ書きこんでた言うのに。酷い話やろ?」

 「ちょっと専門的な事はわからんが、先に手を出したのは広瀬でいいんだな?」

 「・・・・・・はい。」

 「じゃあ広瀬は少し家で頭を冷やせ。もちろんお前達2つの部の揉め事だから部にもそれ相応のペナルティは受けてもらうぞ。1週間は部活は休みだ。」

 「了解ですわ。」

 「・・・・・・分かりました。」


 一度部室に帰ろう。


 「部長、すみません。僕が迂闊に変なこと提案したから・・・。」

 「お前はゲーム制作のことを考えてやった事だ罪はないよ。悪いのはパソ研の連中だけだ。」


 結局広瀬は1週間の謹慎処分を受けた。

 俺達両部活も1週間休部の処分を受けた。



 「これで完全に間に合わなくなった・・・。終わった。俺達の夢が・・・。」

 「部長!そういえば部長のご自宅のパソコンにバックアップデータが入ってたんじゃなかったでしたっけ?」

 俺は何かあった時のためにバックアップデータを取っていた。

 「いや、でもあれは11月までしかない・・・。これじゃダメだ・・・。」



◇◇



 「そうでしたね。そして3月のゲームコミュでパソ研が完成させた僕達のオリジナルゲーム『クエストモンブラン』を披露し、特別賞を取ったんですよね。」

 「あぁ、そして制作は全てパソコン研究会でやったと言ったんだ。」

 「俺達が受けた被害は計り知れない。部費の殆どをゲームの素材やソフト購入に費やしたわけだし、新しいゲームを作ろうにも時間もお金も足りない。」

 「やっぱり、部費の増額を申請しましょう。事情を説明すればきっと大丈夫ですよ!」

 「そういえば、この間相談ボックスってのを見つけたんだ。それに投函してみるか?」

 「そうだな。この際なんでもいい。誰でもいいから今の状況を打開する策を教えてもらいたい。」



 俺達は相談ボックスに事の顛末を書いた相談カードを投函した。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回の最新話更新は午後10時を予定しています。

よければブックマーク、感想等お待ちしています。

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