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運命の経済学 Economics of Fate  作者: キズナ
序章<プロローグ> 白紙の進路希望票
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前書き的なものですが、タイトル要素はほとんどありません。ご了承ください。

 この世界はどのように廻っているのか、考えたことがあるだろうか。ある人は『権力』またある人は『金』、またある人は『人脈』が世界を回していると答えるだろ。どの答えも間違っていないだろう。そしてそうした全てを『人間』が動かしているのだ。

 しかし、その人間は実に非効率的に動いている。人は機械ではない、故に心情と言う心理的な作用が働く。これが非効率へと我々を導いているのだ。

 


 「人間とは実に非効率的な生き物だな。実に勿体ない。」

 「いや、お前もその非効率的な人間だけどな。――で、これは一体何なんだ?この進路希望票は。」

 俺、橘大和たちばなやまとは、高校2年生の夏休み前に担任の萩原優紀先生に呼び出しを喰らった。


 「これは非常に効率を重視した結果、まだ進路を考えてなかったので白紙で提出しました。」

 一息の溜息が先生から聞こえた。

 「お前は白紙で出された進路希望票を教師がほっておくわけないと考えなかったのか?それこそ非効率的だ!」

 「私の考えではそういった思考という概念は無視しているのでわかりません‼」

 教員室の机に右肘をつき、手を顔へ当てジト目でこちらを睨んでくる先生に猛獣の気配を感じた。


 「そ、そんなに猛獣みたいに睨まなくてもいいじゃないですか!だから旦那さんにも逃げられるんですよ!」

 先生の額に血管が浮き出てくる様子が見て取れた。元旦那さんとの話は禁句だったっ!ゴツンと頭にゲンコツを入れられた私は「ングッ」と変な声を出してしまった。


 「全く、お前みたいなのが生徒会の人間だと考えるとこの学校大丈夫かと思ってしまうぞ。」

 学校全体の事を心配する先生。

 「何を言っているんですか!私がいるからこの学校は成り立っているのですよ!?」

 そう、私は生徒会役員、副会長を務め、現会長のサポートをしている影の大黒柱なのだ。

 「あー!もうその話は分かったから、お前はこの進路希望票を明後日の終業式までに提出する事!いいな?出来なかったら夏休み初日に親御さんと同伴で学校に来てもらうことになるからな?じっくり考えろよ?」

 はははと笑いながら白紙の進路希望票を突き返してくる。

 私は頭に大きなたんこぶを作ったまま教員室を退出した。扉の前には同い年の幼馴染の原田裕二と一つ下の南条栞がいた。

 


 「一体お前何したんだよ?生徒会副会長様が教員室へ呼び出されるなんて!」

 「大した事はない。私の余りの効率の良さに敬意を示してくれていただけさ。」

 「なるほど、いつも通り何かで怒られたんですね。」

 「そうなのか?でも今回は何が原因なんだ?」

 「大方この時期に呼ばれたと言う事は進路関係じゃないですかね?」

 南条栞、幼馴染にして私の天敵的存在。いつも適格に私の隙を突いてくる。しかし、進路希望票を白紙で出して呼び出されたなんてこいつらにはバレたくない。――特に栞には。いつまででもそのネタで弄ってくるんだ。



 「それで本当は何なんだ?大和。俺には教えてくれてもいいだろ?」

 「いや、今回はお前たちだとしても教えることはできない!」

 私と裕二が押し問答をしていると栞がバッグの中をガサゴソとし出した。

 「お前!それはプライバシーの侵害と言うものだぞ!」

 「うわっ!教科書とか何にも入ってない…。大和君本当に起き弁してるんですね。生徒会副会長がそんなことしてもいいのかなぁ?」

 私のバッグ(ほぼ空)をさらにガサゴソと調べる栞。

 「栞さん?本当にやめて。頼むから本当にやめてぇぇぇぇ。」

 「あっ…。これですね。ビンゴです。」

 栞の手には二つ折りされたA4用紙があった。両膝・両手を地面へ着け土下座のポーズで絶望している私。

 


 「どれどれ…?――お前これ、まじか?」

 「あぁ、まじだよ。それでさっき萩原先生に呼ばれていたんだ。」

 裕二と栞は頬を赤く染め私を見ている。裕二は私に紙を突き出して確認させた。

 「お前と萩原先生ってそんな関係だったのか?」

 裕二の言葉に疑問を感じその紙を手に取った。・



 ◇

 お前がこの用紙を白紙で出すなんて思わなかったが、まだ高校2年生の夏だ。私もその頃教師になるなんて考えてなかったし進路なんて分かるか!って思って白紙で出したこともある。だけどな、お前が高校を卒業して何になりたいかって事をしっかり考えてほしい。期待しているぞ?副会長!



 P.S

 お前が私の期待を超える回答を出せたら夏休み私がお前を海に連れて行ってやるぞ!見たいだろう?私の水着姿。

 ほら妄想したんじゃないか?私の水着姿を!はははっ!海には連れて行ってやるが保護者としてだ。期待するなよ?



 「あの女ァァーーー。」

 一瞬水着姿を妄想してしまった。私はまだまだ完全人間ではないと言う事か。


 「あの先生らしいっちゃらしいけど、どうするんだ?進路希望よ。」

 「ふん!また白紙で出してやるさ。これが一番効率がいいんだ。」

 「おいおい、先生の水着が掛かってるんだ。ちゃんとやってくれよぉ!俺も先生の水着が拝みたいぞ!」

 「私はどっちでもいいけど、大和君がどんな進路を考えるのかちょっと見ものかな。」

 好き放題言う連中だ。でも、こいつらと一緒に居るのは楽しい。夏休みも一緒に居る事になるんだから、少しやってみるか。



 「わかったよ。書けばいいんだろ?やってやるぞ!あっと驚く進路希望を!!」

 私は胸付近で拳を作りガッツポーズを決める。



 「総理大臣とか非現実的な回答はなしだからな!たぶん先生もそれは読めてるだろうかあきらめろ?」

 裕二が釘を差して来る。

 「お前たちは進路何書いたんだ?」

 


 「俺は国立大学(法学部)」

 「私は1年生なのでまだそれはないですよ。でも高校卒業後はIT関係の専門学校へ行こうと思ってます。」

 二人とも意外としっかりしている。特に裕二には驚いた。

 「裕二国立ってそんなに頭良かったっけ?」

 「お前…。本当お前って自分以外見えてないっていうか。俺は学年10位以内には常にいるぞ?お前ほどではないが頭はこの学校ではいい方だ。」

 「お前が、10位!?ここ数年で一番驚いたぞ。本当なんだな?」

 裕二が私の頭を軽く小突いてくる。

 「ホラっ。この前の期末の結果だ。」

 そこには学年320人中8位と表示されていた。小学校の頃は下から数えた方が早いぐらい頭が残念だった裕二がここまで学力を上げていたなんて。



 「大和君はどうなの?この間の期末テスト。」

 「私か?栞は何も分かっていないようだな!私がなぜ生徒会副会長を務められているかを。」

 上半身を後ろへ思いっきり反り、渾身のドヤ顔を決めた。



 「栞は入って数か月だから分からないかもしれないが、この学校は生徒会長を3年生の学年1位、副会長を2年生の1位から選ぶことになっているんだ。」

 「へぇ~。じゃあ大和君は頭いいんですね!昔とは大違いです。小学校の頃は私の方が頭良かったのに。」

 「栞、人は過去じゃないんだ、今が重要なんだよ!今がな!」

 再度ドヤ顔を決め栞を見つめる。



 「裕二君、じゃあ1年生の学年1位は何か役割あったりするの?」

 見事にスル―された。これはこれでショックだが…。栞はなんで1年生学年1位の事をきにするんだ?



 「あ、あぁ。1年生にも役割があるぞ。書記と庶務だ。学年1位は書記でもう一人が庶務だ。誰か友達にそんなに頭がいいやつ居るのか?」

 「え、…うん。そうだよ。伝えておくね。―あっ!もう時間だ昼休み終わっちゃうから私行くね。」

 「気を付けてな。コケるなよ~。」

 私と裕二は栞と別れた。

 


 ~キーンコーンカーンコーン~



 昼休み終了の予鈴が響く。これから掃除をしてから午後の授業が始まる。

 教室には予鈴を聞いても全く動こうとしない連中ばかりいた。私が教室へ入ると、まるで鬼でも見るように一斉に掃除の準備を始めだした。



 「はははっ。この間のアレが効いたみたいだな、大和。」

 「くだらない。私は自分中心で動いているだけで、その時私はそれを妨げられそうになったから対処しただけだ。」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回の最新話更新は午後10時を予定しています。

よければブックマーク、感想等お待ちしています。

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