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08:問題物件は意外と身近に

長期間、更新を停止していて申し訳ありません!

前回に書くべきでしたね……。

亀更新ですが、頑張ります


「……と、言うわけで、心霊スポットに行く事になっちまった」


『良かったな〜、こういうの面白いぞ?父さんもここ、よく行ったよ』


 俺は今、家にいる。時刻は既に八時半を回っており、もうすぐ家を出なくてはならない。母さんにでも、引き止めてもらえればよかったのだが――

「あら、楽しんでらっしゃい。肝試し」なんて言いやがった。

 嫌だ、絶対に何かある……。そして親父、うざい。


『いいな〜、父さんも行きたいな〜』


 何年も話す相手がいなかったからか、物凄く話す。とにかく話す。俺が本を読んでても話す。そしてこの羨ましがる。

 だが俺だって、何も準備をしなかった訳じゃない。さっと札を取り出し、親父の額に貼る。

 途端に親父が床に倒れた。親父がうつぶせのまま口を開く。


『何だ、この札……効かないといけない気がする』


「そりゃそうだ、あんたが作った特製の札だからな。効果が無いとあんたが困る」


 親父の部屋を漁っていたら、引き出しの中にしまってあったのをみつけたのだ。生前、親父が作ってしまっていたらしい。 (母談)

 俺は親父を尻目に必要になりそうな物を詰め込んだカバンを背負い、部屋を後にする。

 一応、優奈からお守りを受け取ったが、あてにしてはいない。優奈の事だから興味本位で中身を見ているかもしれない。ってか、合格祈願だし。

 渡す時なんか、


「これ、効果無いからあげる。カバンに付けてたら、紐が千切れて落ちたし。あ〜、嫌だ嫌だ」


……とか。こっちが嫌だよ、バカ姉が。無いよりマシだから、有り難く頂いたがな。

 俺が玄関に行くと、リビングから母さんが声をかけてきた。


「肝試し、楽しんでね。あと変なのは連れてきちゃ駄目よ。あっ、幽霊だけに憑れてきちゃ駄目、かな?」


 そう言って恥ずかしそうに笑う。一つも面白く無い、そして分かりにくい。文面だから良かったものを……。


「……じゃぁ、行ってきます」


 暗いオーラを放ちつつ、俺は立ち上がり扉を開けて外に出た。――寒い、さすがに寒い。

 やっぱり行きたくないが、部長がそうはさせてはくれない。チェーンが錆始めた自転車を取り出して、夜道を走らせる。

 この夜道が怖い怖い、街灯が少なくて道によっては星明かりを手掛かりに、進むしかない。都会なら夜も明るいんだろうな〜……まぁ、もっとも田舎は街灯すらないだろうけど。


 ここから学校に着くまで、俺は何も見ないように俯いて自転車を走らせた。踏切なんか目を瞑っていたが、何とか無事に学校に到着できた。



「遅いぞ、新入部員! 普通は先輩より早く来るものだろ」


 部長が校門の前で、そう言った。まだ八時四十五分、つまり部長が異常に早いだけなのだ。ちなみに俺が一番最後、副部長も岸本も既に来ていた。

 その時、校門にもたれていた副部長が、舌打ちをして口を開く。


「お前は部長という肩書きごときで、何を調子にのっている。まだ理解の少ない奴を無理矢理つれだして……」


 それだけ言うと副部長は口を閉じた。いや、俺の事を考えてくれたなら、嬉しいが来たのは一応は俺の意志であって……ってこの人の狙いは部長への文句か。


 部長が笑顔のままキレて、言い返そうとした時に救世主・角浜先生がやって来て、二人の間に割って入った。――車で。

 風を受け、二人の髪がたなびく。それでも二人共、顔色一つ変えず角浜先生を睨んだ。何だ……こいつら。


「あははっ、二人とも恐い顔しない! じゃぁ、みんな乗って」


 二人に睨まれても陽気に声を出す先生は大物、てか鈍感? そんなんだから、結婚出来ないんだよ。情報源は部長。

 そんなことを考えていたら、先生に睨まれた。何だ、部長達と同じただの読心術か……って俺はアフォか。


 俺が少し呆然としてると、なんと部長と副部長の二人が後部座席に入ろうとしていた。仲が悪いのに何で! というわけで、素早く割り込み右から部長 俺 副部長の順番になった。

 助手席は岸本。……そこは先輩に譲るべきじゃないのか?

 さてと、俺の楽しみはこれからだ。混ぜたら危険の二人の間なんて、面白いに決まっている。

 とか考えていたのだが、意外にも二人は一言も話さぬまま、町外れの廃墟についてしまった。つまらない。ていうか……


「何やるの、ここで」


 俺は疑問をぶつけた。よくよく考えたら、一体何をするのか知らない。

 一瞬、岸本と目が合う。すると突如、俯いて視線を逸らした。何故か口に手をあてている。戸惑う俺に部長が話をしてくれた。


「ここまで来たらわかるでしょ? この中を探索するんだよ、二組に分かれて」


 二組に分かれるって……二人ずつ? 先生が来るとしたら二人と三人だが、先生は来そうに無いし。

 とりあえず中に入るなら、と俺は廃墟を外から観察してみた。それほど大きな建物出はないが、荒れた土地にポツンと建っており、周りは雑草が生え放題だ。

 二階建てで、上の階には窓がある。窓は心霊の定番なので、注意深く見たが何も見えなかった。


「特に何も見えませんね、副部長」


 俺は副部長に声をかけた。まだ入部して間もないし、人数も少ないから出来るだけ全員と仲良くしようと思ったから、詳しそうな部長ではなく、副部長を選んだ。副部長が溜め息をついて答えた。


「副部長じゃなくて篠原でいい。霊感の低そうなお前が、余裕で何人も見えるなら、そこは本当にヤバいだろ」


 え〜っと、副部長じゃなくて篠原さん、それは俺を馬鹿にしてるんですか?

 まぁ、ヤバいとこじゃなくて良かった。

 っとぉ、安心するのは早計か。この部長のニヤニヤ顔が何よりの証拠! うゎ〜、嫌だなぁ……。

 部長がニヤニヤ顔のまま話し出した。


「言っとくけど、二階の窓から念の弱い霊が腕を突き出してるんだよ? 何人もな」


 ヒィー


 もう終わった。絶対に憑かれる。

 近所にお寺ってあったっけ。変なのがついてきたら、払って貰わなきゃ。

 いや、それ以前についてこないでくれよ〜。頼むから!


 そんな不適な顔で笑わないで下さい、部長。この人、楽しんでやがる。

 篠村さんは無表情、先生は携帯をつついてる、岸本は論外。

 これは――無理。


「じゃ、二手に分かれようか! 僕と岸本、浅田と……篠村。そっちは二階に行ってきて」


 部長が篠村さんの名前の時、一瞬顔をしかめた。いくら仲が悪いからって、これほどまでは……。

 引っかかりを感じながらも俺はある事実に気がついた。


「二階って……大量の手が出てた?」


 俺の問いに部長はにこやかに頷いた。

――おまけ

 after story ならぬ befor story


リュウに入部申込書を、押し付けた後の話。



「ふぅ……腐女子の読む漫画の主人公って、意外とイケメンじゃないんだな」


「むっ、全国の腐女子に失礼ですね……部長」


 岸本が顔をしかめて言う。自覚があるのが、逆に恐い。いや、こんなものなのか、腐女子って。


「で、先生。新入部員も来たし……恒例のあれ、やるんっすか?」


 僕が聞くと、融通の効きすぎる角浜先生は頷いた。じゃぁ、場所はあの廃墟か。

 悪く思うなよ、浅田。


 ……うぁ、明日は篠村の来る日か。でもこれだけは参加しないとな。

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