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07:犬猿の仲って分かり難い比喩


 俺が部室に入ると何故か、重い空気だった。超理屈完全無効人間・部長(俺の脳内イメージ)まで、ムスッとした顔で椅子に座っている。

 昨日と違う所があるとすれば――部長の向かい側の席に、篠村さん…じゃなくて副部長がいるところか。


「――何でお前がいる?」


 篠村さん、じゃなくて副部長が沈黙を破った。その言葉の矛先は恐らく部長。何でって、部長だからじゃないの?


「新入部員が来たんだから、たまにはいいじゃんか」


 部員は手の中で正二十面体を転がし、副部長……じゃなくて篠村さん……あれ、どっちがいいんだ?

 とにかく副部長と目も合わさず言った。それを見て副部長が、イラッとする。


「良くない。何のために、わざわざ部室に来る曜日を分けたんだ」


 息継ぎもせずに言って、カバンから一枚の紙を取り出す。紙は曜日ごとに枠で分けられていて、ウサギとおばけの絵が月〜土まで書いてあった。

 言っては悪いが、恐ろしく下手くそだ。


「今日はウサちゃんだから、私が部室に来ていい日だ」


 ウサちゃん!? 意外と可愛いね、副部長。その絵も手書きなのか?

 ようやく部長が目を副部長に合わせた。二人の間に、火花が散っているように見える。


 その時、俺は背後に寒気を感じた。これは……間違い無い!。

 瞬時に振り返りながら、背後の変態(きしもと)にカバンを叩きつける。俺の手が痺れる程の力を込めたんだ、これなら確実に岸本を……!?


「甘い……綿菓子のごとく甘いよ、リュウくん」


 どっかの漫画にありそうな台詞を吐きながら、岸本が口の端をつり上げる。なんとこの女、自分のカバンを盾にしていやがった。


「昨日の分まで、楽しませてよ〜♪」


 一対の魔の手が迫ってくる。こんなところで、捕まってたまるか!

 俺は素早く副部長の背後に回り込み、勝利宣言をする。


「ふっ、諦めろ変態(きしもと)。いくらお前でも年上かつ、同性の副部長にはかなわないだろう」


「……私を盾にするな」


 副部長が呆れたように、溜め息をつきながら言う。別に良いじゃないか、減るものでもないし。何より俺が幸せだし。

 さすがの岸本も、諦めてパイプ椅子に座った。それを見届けた俺も椅子を引っ張り出して座る。

 元々、部長と副部長が、長机を挟んで斜めに並んで座っている――つまり二人を線で結んだら、対角線が引ける――ので、必然的に俺も岸本から最も離れた場所に座れた。


 とりあえず、部長と副部長は犬猿の仲ってやつだな。少なくとも、副部長が犬で部長が猿だな、ハッハッハ。

 そんなことを考えていたら、部長に睨まれた。読心術でも心得てんのか、この男。

 それよりこの空気! 誰かどうにかしてくれよ。冷めてる、を通り越して、停止してるぞ。もう何でもいい、いっそ岸本でもいいからしゃべってくれ。


「お〜い、元気にしてるか〜? 陰気な子ども達、略してインキッズ!」


 物凄く陽気な台詞と共に、角浜先生が部室に入ってきた。ナイス、先生! 陰気って部分は不服だけど、空気は打ち破った!


「珍しく部室と副部長が二人共、揃ってるのね〜。あっ、そうそう、せっかく部員も増えたから、ちゃんと活動しようと思って資料も持ってきたよ〜♪」


 クルクル回りながら、紙束を長机の上に叩きつける。話の流れも掴んで……活動? 活動って、この部の?

 物凄〜く嫌な予感がする。絶対にまともじゃない。俺、まだお守り用意してないよ?


「今回は噂の森の中の廃墟、場所はプリントで確認してね〜♪ 時間は夜の9時に集合、もちろん全員だよ」

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