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04:色々とヤバい部活


無造作に置かれた三段ボックスや小物入れが部屋をこれでもか、という程狭く感じさせる。

しかも中に入っているものが異常だ。



ベターな道具、藁人形と五寸釘から一見すると至極平凡な縄まで置いてある。


部屋にはオレと高倉先輩、それと女の子がいた。

部員は最低、三名必要なのだからこの場にいない誰かがいるはずなのだが…。


誰から見ても分かるこの状況。

“廃部寸前”だ。


これでも部活として成立しているのだから顧問もいるらしい。


高倉先輩がパイプ椅子に座った。

椅子がギシッと音をたてて軋む。


「じゃぁこれにサインして。」


「え、オレに拒否権は無いんですか?」


差し出された紙とシャーペンを見て思わず突っ込む。

第一、保護者のサインも必要だ。

高倉先輩が面倒くさそうに言った。


「ここまで来たんだから入るんじゃねぇの?」


出会って数分で言葉が大分、砕けてる。これだから慣れってのは恐い。


オレが渋っているのを見て高倉先輩が一言、付け加えた。


「安心しろって。この時期からの入部の場合はしばらくの間は仮入部なんだから。」


う〜ん…。

まぁ、それならいいか。

恐ろしい部だったら即刻やめてやるし。


何より今は心霊関係の情報が喉から手が出るほど欲しい。

オレは紙を受け取り記入欄にサインした。

字を書く、カリカリという音だけが嫌に響く。


こういう時、自分の字の汚さに涙が出る。

オレが書き終わるのを見計らって高倉先輩が机を叩いて立ち上がった。


「よぉし、今日からぼくを部長と呼べ!」


―そうきたか!


てっきり“お前も今日からこの部の一員だ”とか“よろしくな”って感じの台詞が来ると思っていた。

それ以前にまだ仮入部にもなってない。

親のサインが無いし。


「じゃぁ、まずは部員紹介からだ。」


高倉先ぱ…じゃなくて部長が一人一人、紹介を始めた。

だから、まだ仮入部にもなってないって。



まず、部長が自分の本名を明かした。

高倉 浩介(タカクラコウスケだそうだ。


そして今、部室にいる女の子。

名前は |岸本 美観(キシモト ミカン )。

…どんな名前だ。

まるで岸本という名前の人が作ったみかんじゃないか。


最後に今いない副部長の名前を言う。

この瞬間、部長の顔が嫌そうな顔になるのをオレは見逃さなかった。


名前は 篠村 涼子(シノムラリョウコだそうだ。


ここで紹介が終わった。

やはり廃部寸前だったか。


オレはふと気になったことを聞いた。


「この部の顧問をしている物好き…じゃなくて物分かりのいい先生って誰なんですか?」


危うく本音がでるところだった。

オレにはよくわからない正二十面体をいじりだした部長も手を止め、それをしまった。



「それはな〜…おっと! 噂をすればなんとやら、だな。」


扉の開く音がして部長がオレの背後に視線を向ける。

つられてオレも振り返った。


そこにいた人物を見てオレは動きを完全停止する。

一方、その人物はオレを指差しながら言った。




「あっ! 君は朝、あれが見えてた子だよね?」




――角浜先生だった。


「私の方から勧誘に行こうと思ってたのに…すっごい偶然!」


「!?」


先生はそう言うと、なんとオレを抱きしめた!


幸せなのやら混乱なのやらわからないが顔が赤くなった、と思う。

頬が熱いし。

だって相手は結構、美人の二十代前半なんだぜ?


「新人で遊ばないで下さい…。」


呆れたような声で部長が言うと、先生が離れた。

安堵の息をついたらいいのか、不満の息をついたらいいのか。


にしてもこんな性格だったとは。

オレの中の先生に対するイメージが180度、変わったぞ。


先生は部長を見ると、まるで今いることに気がついたように

「あらあら」と言う。


「受験生がこんなとこにいていいのかしら? …篠村さんと言い、高倉君と言い本当に部室が好きなのね。」


一理あり、どころか先生が全て正しい。


って待てよ。

今、先生は篠村さんと言ったよな?

篠村先輩も受験生なのか。

そしてオレはあることに気付く。


「待って下さい。先生の言い方だと篠村先輩もいつも来ているような口振りですが部活に来てませんよ?」


オレが言うと先生はクスリと笑った。「篠村さんと高倉君は交代で部活に来てるの。理由は…」


先生の目が光った気がした。

オレはゴクリと唾を飲む。

しかしそこで部長の妨害が入ったため結局、聞けず終いだった。


オレが部室の雰囲気に慣れてパイプ椅子に座った時、俯いていた女の子…岸本さんが起き上がった。

そして大きなあくびをした。

名札には 1-2 と記されている。


「部長の首が絞まる夢を見ましたぁ…。」


物凄く眠たそうな目と声で言った。

それを聞いた部長がビクッとする。

確かに不吉だが少しオーバーな反応ではないだろうか。

所詮は夢だしさ。


岸本さんがオレに気付いた。

眠たそうな目をこする。

そして席を立ちオレを指差しながら叫んだ。


「この人、○○ (多分、漫画の名前)の主人公にそっくりだぁ!」


部長と先生の顔が青くなる。

別に漫画の主人公に似ていたら問題があるのだろうか。


「え〜っと…名前、まだ聞いてなかったな。とりあえず部員B (多分、オレのこと)!」


部員の表示にオレは思わずビクッとする。

何故だか恐い顔なのだ。


「逃げろ!」


「えっ、何で…?」


「岸本は言わば腐女子だ!しかも重症だから生で見たがってる!」

それはつまりオレはそういう分類の主人公に似ていて岸本さんのターゲットに…

ハッと岸本さんを見ると既に席から消えていた。


後ろに悪寒を感じる。

オレがその場から離れようとしたが時、既に遅し。

重みが背中にかかり引き倒された。


「ぶっ…部長!あんた責任者だろ!?これを止めろよ!」


「先生、頼んだ。」


「私はあの状態の岸本さんには近付きたくないな〜。」


「脱〜げ、脱〜げ♪」


「ちょっ…ちょっと、見捨てないで下さい!」







岸本が机に伏してスヤスヤと眠っている。

オレは安堵の息を吐き出した。

結局、岸本は部長と先生が引き剥がしてくれた。


「部長、入部しなくてもいいですか?」


「それは駄目だ。ほら、こっちの紙に親のサインをもらって来い。」


部長はピラピラと紙を一枚、見せた。

わざわざ別紙を用意したのか…。


「入部しないとその免許証について教えてやらないぞ?言っておくが校長は多分、答えてくれないだろうしな。」


痛いところを突かれた。

おのれ部長…そして岸本。

おかげでこれからの学校生活が180度、回転しそうだ。


オレは部長の手から紙を奪い取るようにして受け取り、部室を後にした。



「岸本の奴め……。あそこまでの変態は見たことがない。」



だがオレは知らなかった。


部長の方がもっとヤバいことを。

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