03:変わり者の部長
ストーリーを作り直していたら時間がかかってしまいました。
報告としてはカテゴリーを学園からホラーに変えました。
このカードには確かに見覚えがある。
誰かに昨日、誰かに無理矢理渡されて何が書いてあるか見ようともせずにカバンの中につっこんだやつだ。
ただ肝心の“誰か”が思い出せない。
確か学校から出るときにすれ違いざまに渡されて質問をする前にさっさと行ってしまったのだ。
それにしてもこのカードのデザイン、子供っぽいな。
その時、扉のガラスの向こうに人が立っているのに気がついた。
このシルエット…校長だ。
ほんわかした性格で感じのいいおじいちゃん、といった人だ。
ん? 待てよ……
そうだ!
校長にこのカードを渡されたんだ。
そのことを思い出したオレは扉に駆け寄った。
面識は無いがこの際、仕方ない。
オレは扉を開けた。
「……?」
しかし先程までいたと思っていた校長は姿を消していた。
廊下を見回すとシュウがいた。
オレと目が合うと口に手を当てて言う。
「リュ〜ウ〜、何やってんの〜?早く来いよ〜。」
無駄に語尾をのばした喋り方だ。
オレは言葉に従いシュウに向かい走る。
廊下に響く足音が何故かオレに不安を募らせた。
その後の授業は全く身が入らず誰でも答えられる質問すら間違えた。
あとになって気がついた。
何で校長室に行かなかったんだろう。
授業が全て終わり、掃除時間に七回転ぶという偉業を達成したときシュウが何かに感づいたように話しかけてきた。
「お前、彼女できたの?」
危うく八回目の横転を見せ付けるところだった。
オレはほうきを片手にシュウを追いかけ回した。
と、見事に何も無い場所で盛大に転ぶオレ。
さすがにシュウも心配そうに声をかけてきた。
そんなこんなで気がついたら放課後になっていたわけだ。
粗片はどこかへ行ってしまったのでまた幽霊が見えるのは幻覚じゃないかと思い始めた。
仮に幽霊が見えてもそれはオレの力ではなくて今まで“見た”三人が自分の姿を自分から見せてるだけ、とかさ。
とは言っても親父と粗片の言い方からするとオレの方に何かがあるらしい。
「はぁ……。」
机に伏せて息を吐く。
もう今日1日は夢だったってことにならないだろうか。
その時、オレの肩に軽い衝撃が伝わる。
「リュウ、帰ろうよ。」
どうやらシュウが肩を叩いたらしかった。
シュウとオレは帰宅部で部活動には入っていないのだ。
オレは頷きかけてピタッと止まる。
そして首を横に振った。
「オレはちょっと行きたいところがあるから先に帰っておいて。」
そうしてオレは疑問符を浮かべるシュウを後ろ目に重たいカバンを引きずるようにして教室から出た。
廊下に窓から差し込む黄色の光がどうしようもないもどかしさを感じさせる。
オレはカバンを肩にかけ直して廊下を歩き始めた。
足をつける度に音だけが響き、こだまする。
窓からは校庭で体育系の部活動をする音が入ってきた。
オレは面倒くさいからどの部活にも入部していない。
なんだか、切ない。
いつもここを通っているのに何でだろう。
黄色に染まった廊下が終わり薄暗い階段が横に現れる。
ありきたりな七不思議では段数が一段、増えたりするがそんな噂はこの学校には無い。
いつもと同じ段数、だった気がする。再び黄色に染まった廊下を歩いた。
オレはカバンからあのカードを取り出す。
翳してみたら独特の光沢で光が跳ね返り光っているように見える。
と、気がついたらオレの目的の場所が目の前にあった。
扉の上につけられた札には[校長室]と書いてある。
オレはカードをカバンにしまい扉を叩こうと手を伸ばした。
その時、オレの後ろから声が聞こえそれを止める。
「今日、校長は昼からいないよ。」
何か高揚感を抑えたような声にオレは振り向く。
そこには校則をきっちり守った格好で背はオレより少し高い男が立っていた。
名札に書かれた学年は3。
どうやらオレからすると先輩にあたるようだ。
「そうでしたか、ありがとうございます。」
敬語はあまり使わないがどんな人物であれ先輩なのだ。
礼儀をわきまえなくては。
オレは礼を言ったあと、男に背を向け立ち去ろうとした。
が、男の声がまたオレを止める。
「君、心霊関係で悩んでない?」
オレは盛大に、こけた。
カバンが床を滑り離れていく。
恨めしげに床を睨み付けていると笑い声が廊下に響いた。
今度は男を睨み付ける。
すると、男はごめんごめん、と言いオレのカバンを取りに行った。
オレが立ち上がり黒い制服についた白い埃を払っているときに男は戻ってきた。
改めて名札を見て 高倉 という名字だと知った。
差し出されたカバンを受け取り疑問をぶつけた。
「えっと…高倉先輩は一体、何なんですか?」
不躾な質問だがこれが最重要だ。
何でこの男はオレの悩みを知っているんだ?
「心霊探求部の部長。」
何とも微妙な返答だ。
結局はオカルト部じゃないか。
というかそんな部があったことも知らなかった。
さらに言えば三年生ならもう部は引退してるだろ。
まぁ考えても仕方ない。
次の質問をぶつけた。
「オレの悩みを何で知っているんですか?」
心の眼、とかも霊能力があるなら有り得なく無い。
しかし男の回答は予想外のものだった。
「君が持ってた免許証で。」
多分、今歩いていたら転けていたな。
免許証とはきっとあのカードだ。
心拍数がこの瞬間、跳ね上がっただろう。
少し冷静になって考えてみたところ、どうやらこのカードも心霊関係のようだ。
オレにオカルト肯定派になれということか?
ふと、男を見ると無表情だったが間違いない。
オレの様子を見て楽しんでいたようだ。
その証拠に口の端が抑え切れずにピクピクと動いている。
もういいや。
まだ聞きたいことはあるがオレは何だかやる気が失せてしまった。
男を尻目に歩き出そうとする。
と、再び男がオレを止めた。
この人はオレで遊んでいるのか?
わざわざ歩き出そうとした瞬間に限っ止めやがって。
だがオレは次の言葉が一番、予想外だった。
「君さ、入部しない?」




