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【本編完結】君のために繰り返す~前世から続く物語を終わらせます~  作者: 夜桜詩乃
第一章 召喚、出会いと別れ
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女神とのお茶会

 俺が密かにアイツを殴る事を決意していると、女神がフフッと不意に笑った。

「あっ、すいません」

 俺の視線に気づいた女神は頬を少しだけ赤く染め、口元を片手で隠す。

 その単純な仕草でさえ、美しいと思ってしまうのだから女神とは恐ろしい。

「さて、貴方の潜在能力を引き出す作業は無事に終わりましたし……」

 そこで女神は一旦言葉を切って考え込む。

 これは、用が済んだから元の場所に帰るパターンだろうか?

 ん? てか、俺は左胸を刺されてここに来たよな?

「あれ? もしかして、俺って既に死んでる?」

 コレはアレか。

 前世と今の記憶を持って、新しい人生をスタートしてください! 的なパターンの方か。

「あぁ、それは大丈夫ですよ」

 俺があれこれ考えていると、女神の方からそんな言葉が飛んできた。

「え?」

「貴方は確かに心臓を一突きされてここに来ましたが、あそこは元々肉体を持ちこめない空間です。なので、貴方の肉体は無傷ですよ。まぁ、魂に少しだけ傷がつきましたが……そこは、私が修復しておきました!」

 マジかよ。

 あそこって、そんな空間だったのか?

 てか、魂を簡単に修復できるとか、女神ってスゲー!

「それじゃあ、俺は今からあそこに帰る感じか?」

「それでもいいんですけど……少しだけ、お茶をしてくれませんか? ここに来る人って滅多にいなくて話し相手が欲しかったんです」

 女神が申し訳なさそうにそう言う。

 まぁ、魂を修復してもらったり潜在能力を引き出してもらったりした恩があるし、お茶くらい付き合っても別にいいだろう。

「いいよ」

「ありがとうございます!」

 俺が返事をすると、女神は満面の笑みを浮かべてから指を鳴らした。

 すると、どこからともなく俺の腰くらいまで高さがあるメルヘンチックなウサギが一匹現れる。

 タキシードを来て、シルクハットを被り、右目にモノクルをつけたどこかダンディーな雰囲気を漂わせているウサギは、庭園に設置されている丸テーブルにティーカップを二つ置いてから、丁寧なお辞儀をして消えていった。

「ささ、どうぞ座ってください」

 女神に促されるままに椅子に座ると、俺の正面の椅子に女神が座る。

「あ、コレ紅茶なんですけど、大丈夫ですか……?」

 俺はどちらかというと珈琲派だが、美咲が紅茶好きという理由もあって紅茶も結構好きな方だ。

「大丈夫」

 俺がそう返事をすると、女神はホッとしたように胸を撫で下ろした。

「それでは、お話をしましょう。まぁ、誘っておいてなんですけど、私はこの空間から出ることは出来ないので、面白い話題は特にないんですけど……」

「それじゃあ、俺が聞きたい事を聞いてみてもいいか?」

「私が答えられる範囲でなら、いいですよ」

 流石に、女神というだけあって喋れる範囲も規制されているのだろう。

「今回召喚されたのは、何人だ?」

「それは、貴方自身がわかっているんじゃないですか?」

「……41人であってるのか?」

 俺は、何故だかクラスメイト全員が召喚されたという確信があった。

「はい。今回の儀式で召喚されたのは、貴方を合わせて41人です。まぁ、貴方は別の所に飛ばされてしまっていますけどね」

「みんなは……無事なのか?」

 そう聞くと、女神は微笑んだ。

「それは、貴方が本当に聞きたい事ではないですよね? 貴方は、クラスメイトの事なんて一切心配なんてしていない。ただ一人の身を案じているのではないですか?」

 女神の言葉に俺は息を飲んだ。

 流石女神、何でもお見通しって事か。

「はぁ~……美咲は、無事なのか?」

 俺が聞き返すと女神は頷いた。

「はい。美咲さんは無事に王国へと召喚されました。能力とかは見ますか?」

「そんなことができるのか?」

「本当はダメなんですけど、今回は特別に貴方が望むのであればいいですよ?」

 女神の誘惑とも言えるソレに俺は少し悩んでから首を振った。

「いや、やめておくよ。何だかそれは個人情報を盗み見するみたいで気が引けるしな」

 俺の言葉を聞いた女神はそれが正解だと言わんばかりの笑みを浮かべた後に頷いた。

「それがいいですね。もし、出会うことがあったら直接聞いてみるのがいいでしょう」

「会えるのか?」

「会えますよ。知っていますか? 運命とは自分の力で引き寄せることができるんですよ?」

 そういうのはよく聞くけど、実際どうなんだろうか。

 だが、女神が言うって事は間違いないんだろう。

「なら、会えるように頑張ってみるよ」

 俺はそう言ってから、紅茶に口を付ける。

「ん、美味いな……」

 俺の言葉を聞いた女神はそれはもう見事なドヤ顔をする。

「そうでしょう、そうでしょう! 何しろコレは桜さんから頂いたとても高級な茶葉を使っていますからね!」

 【桜】、その名前を聞いた瞬間に俺の頭を鈍痛が支配する。

「ぐっ!!」

「あっ! す、すみません! 大丈夫ですか……?」

 しばらくすると鈍痛も去った。

「もう、大丈夫みたいだ」

「すみません、私が迂闊な発言をしたばっかりに……」

 女神が申し訳なさそうに頭を下げる。

「いや、大丈夫だ。それよりも、桜って……」

「……すいません、コレは規制に引っかかって言えないみたいです」

 そうか……。

 まぁ、前世の記憶を思い出していけば自力で思い出す事が出来るだろう。

 この時の俺は、そう気長に考えていた。

 だが、割とすぐに桜という人物について知る事になるとは、この時はまだ思っても居なかった。

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