再会
短いですが、続きです。
少女が走り去ってしまってから三日が経った。
桜花は自分が傷つけてしまったのかもしれないと落ち込んでいたが、俺と椿さんでどうにか励まして、今ではあの子にあげたいと言って毎日おにぎりを作っている。
俺はあの子ともう一度会うために毎日走るルートを変えたりしているが、一向に見つかる気配がない。
「あの子、大丈夫かな……」
隣に立っていた桜花が俯く。
この子も初めて会った同年代の子とああいう別れ方をしてしまったのをまだ気にしているのだろう。
いや……俺がそういうのを気にしなさすぎるだけか。
「まぁ、元々ここら辺で暮らしてたんだし、大丈夫だろ」
「うん……」
桜花の頭を撫でていると、どこからか視線を感じた。
視線を巡らせてみると、木に身を隠してこちらを見ているあの少女を見つけた。
「見つけた」
「……っ!!」
俺と目が合った途端逃げようとした少女を追って行き、その手首を握る。
握った瞬間、少女の目が恐怖で彩られる。恐らく、俺に殺されるか何かされると思っての表情だろう。
「大丈夫だ」
「……ほ、ほんと……に……?」
「ああ、本当に大丈夫だ」
しばらく掴んでいる俺の右手を凝視していた少女だったが、気が抜けたようにその場に座り込んでしまう。
あれ? 何か、俺普通に捕まりそうな事やってない?
「元の世界だったら、バリバリアウトだったな……」
そんな事を考えて居ると、後ろから桜花がやってくる。
少女も桜花に気づき、気まずそうに顔を逸らす。
「えっと……」
桜花が口を開き、何を言おうか考えているようにしている。
少女も、もう逃げる感じではないようだし俺も掴んでいた腕を離して、近くにあった木に背を預ける。
本当は助けてあげたいのも山々だが、コレは桜花が成長するのに必要な事だろうし俺が何かと手助けしてしまっては折角の機会を潰す事になるだろう。
「あの……ごめんなさいっ!!」
「……ッ!?」
いきなりの謝罪に少女も驚いたように目を見開いた。
正直、俺もいきなり謝罪から入るとは思わなかった。こう、何か挨拶から入るもんだと思っていたんだが……。
そこからの流れはお互いにたどたどしい会話を繰り返すといった感じだった。
会話ともいえないような会話だったが、どうやらそれで通じ合えたらしく途端に仲良くし始めた。まぁ、少女は相変わらずの無表情だが桜花の事を嫌がっているとかそういう感じではないようだ。
その後は、桜花が作ってきたおにぎりを少女と一緒に食べて解散となった。
少女と別れた後は普通に訓練をして、夕暮れに屋敷に帰る。
「ただいま……」
汗がヤバい……早く風呂に入りたい。
そんな事を思いながら歩いていると、椿さんが前から歩いてきた。
「龍剣様がお呼びです」
その顔は真剣で、流石に「風呂入ってからでいいですか?」と言える雰囲気ではなかった。
俺が訓練をしている間に何かあったのかもしれない。
椿さんと一緒に大広間へと行くと、龍剣が上座に座って目を閉じていた。
「来たか……」
「まぁ、呼ばれたからな。何かあったのか?」
「うむ……先ほど、お主が居ない間に魔王から使者が送られてきた」
魔王という言葉に反応して、無意識に拳が握り締められる。
アイツ自身じゃなくても、アイツの関係者がここに来たという事自体に苛立ちを覚える。
「儂らに対して軍門に下るように言ってきおった」
「それを受けたのか?」
「まさか。儂らは龍じゃ。龍とは昔からどこの陣営にもつかず、常に一陣営として活動してきたのじゃ。それを今更どこかに下るなどという事はない」
その言葉にひとまず安心した。
少なくとも、ここが魔王の下について俺を売るという事もなさそうだ。
「使者は悪態を吐いて出て行ったよ。ただ、奴らの事じゃ……何をしてくるかわからん。故に、お主には明日から戦闘訓練に入ってもらう」
「急だな……」
「それほどまでに、事態は深刻という事じゃ」
龍剣の目から真剣だという事はわかっていた。なので、そのまま目を見て頷く。
こちらとしても、早く戦う方法を学べるのはいい事だしな。
「今日はゆっくり休むと良い。明日からは地獄じゃからな」
その言葉に苦笑しながら、俺は大広間から出た。
「とりあえず、風呂かな……」
そのまま、明日の事を考えながら俺は風呂場へと向かった。




